【6月1日(土)】

 2時に起きて荷造りして東京駅。16時07分発のひかり指定券を券売機で買って乗車。楽勝に空いている。のでInternet@ASCIIの原稿を仕上げることにしよう。しばし待つよろし。
 と思ったら新横浜からサラリーマンの団体が。やれやれ。

 あ、そういえば、ネットナビの原稿と、アスキーWWWガイド(『インターネット・クール』の原稿5本分けさ寝る前に送りました。書いたのはごった日記とてんぷら☆さんらいずと柳下殺人ページと「99人の最終電車」と文芸ホームページほら貝。最初の三つについてはけっこうめちゃくちゃなことを書いたので(ほとんどWebマスターの人物評かも(笑))、心当たりの人はお楽しみに。残り5本は東京にもどってくるまでに片づくだろうか。謎。

 ……ってやっぱりかたづくわけがなかったのである。いまこれを書いているのは6月4日(月曜日)の午後10時。9時9分京都発の新幹線のぞみ号の車中なんですが、これから二時間で原稿を書く気力はないしな。ううむ。今晩寝てから考えよう。
 というわけで日記のつづき。

 仕事をほっぽりだして遊びに出かけた大森望35歳は、6月1日午後6時45分ごろ京都駅に降り立った。地下鉄で北大路まで出てタクシーで一乗寺の我孫子武丸邸へ。我孫子さん、千織さんとだらだらしゃべっているうちに麻耶雄嵩、綾辻行人、小野不由美の各氏登場。法月さんはなぜか行方不明で連絡がつかないので、六人でぞろぞろ食事に出かける。
 途中、恵文社に立ち寄りMTG状況を確認。レジ前に日本語版とアイスエイジのスターター、ブースター全種が並べてある。ガラス製のカウンター(おはじきみたいなやつね)とか、英語版のギフトセットとかも置いてある。アメコミコーナーにはMTGのコミックが並んでるし、マジックの濃い店である(綾辻さんは、なぜこんなところで手品用のカードセットが売られているのか不審に思っていたらしい(笑))。Fallen Empireは買ったことないのでとりあえず三つぐらい買ってみる(がハズレだった)。
 食事は一乗寺近辺の寿司屋。そこそこの値段でけっこううまい(勘定は高額納税者の綾辻さまが払って下さったので、トータルでいくら食ったのかは不明)。麻耶くんはどんどん食べる。「白のバラのひと」の件ですっかり時の人である。話題独占っていうか。しかし我孫子さんは「日記にいっさい書きません」の誓いをしていたのでとてもかわいそう。さぞや腹ふくるるワザであろう。陰ながら同情するな。

 食後は小野さんち。麻耶・綾辻をギャラリーに我孫子さんと対戦。二回プレイしたあと(一勝一負)、ほぼルールを飲み込んだ麻耶くんが我孫子さんと戦い、ついで麻耶・綾辻対決。麻耶くんはけっこう引きがいい。二勝。
 MTGで遊んでいる途中に法月綸太郎登場。クリーチャーをミステリ作家に変更したMTGの構想が検討される。奈落の王=島田荘司とか(笑) 黒マナ二個入れて暗黒儀式を二回使い「島田荘司」をロサンジェルスから召喚、味方のザコキャラを犠牲にしつつ相手に7ダメージ……ってこわいかも。やっぱり出版社をタップするんだろうな。創元は平地で講談社は沼。光文社が山ですか。創元で組むと小型クリーチャー高速出現デッキが……ってやっぱりあぶない(笑)

 明日もあることだしね、ということで5時ごろお開き。しかし寝ようとしたのに眠れず、東野圭吾の新刊『どちらかが彼女を殺した』を読む。が、なんと結末にいたっても犯人の名前が明かされない。いや、どっちが犯人なのかは指摘されるんだけど、名前が伏せられてるんですね。眠い目をこすりつつ読んでたせいもあってとっさに犯人がわからない。これはいかんとあわててページをめくりなおし、「決定的な手がかり」を発見してひと安心。ネタ的にはかなり苦しい気がするけど、よくまあこんなことをやったなあ。犯人を教えろという電話がじゃんじゃんかかってくるのでは。


【6月2日(日)】

 けっきょく9時過ぎに寝て、死んだように眠りこけ、我孫子さんに起こされたときはすでに午後1時40分。西澤さんの講演は2時からなのにっ。その前にも起こそうとしたんだけど全然起きなかったらしい。反省。

 千織さんに送ってもらって2時に出発、2時半、立命館の学生会館に到着。有栖川さんがすでに客席に来ている。他の京大出身作家陣は当然まだたどりついていない(笑)
 西澤さんの講演は、スタッフ側が用意した質問状を読み上げ、それに西澤さんが答えるというパターン。回答に対してさらにつっこむということがないのでやや物足りないけれど、「完全無欠の名探偵」登場秘話(他人のプライバシーに土足で踏み込むことに対する探偵の苦悩という法月綸太郎的問題――というか後期クイーン的問題――を回避するための方策だったのだという。なるほど)とか、首切りが陳腐だという新本格バッシングの話を綾辻さんから聞いて、それなら首切り小説を書いてやろうと『解体諸因』が生まれた話とか、けっこう面白かった。
 講演のあとはステージ上で西澤さんのサイン会。綾辻、麻耶、法月が登場し、会場後方とかロビーとかにサインの列ができる。綾辻さまは相変わらず楚々とした美人系のファンに囲まれているが、麻耶くんのまわりに集まる若者はみんな濃い(笑) 白のバラの人は麻耶くんキープ状態。さすがである。しかも白バラのネタは関ミス連方面でもパブリックドメインな情報らしくて、すでにだれでも知っている模様。
 麻耶くんの横を通りかかって彼女の姿を目にとめ、「あなたが白いバラのひとですか。いやもう有名ですよ。世界中に広まってますね。では」
 といって去ってゆく鬼畜・綾辻。京都在住の人妻評論家・増田順子女史は、
「麻耶くん、写真なんか出したらこんなことになるんじゃないかと思ってたのよねえ」
 とかぶつぶつゆっている。
 その後、女子トイレでは爆笑の恫喝事件というか、熾烈な女の戦いが展開されたりしたらしいが、この話はあんまり面白すぎて書けません。いずれ「法月綸太郎の事件簿」に発表されるでしょう。

 サイン会終了後、近くの喫茶店に集合。初対面の西澤さんにあいさつして高知ローカルな話を聞く。西澤夫人は土佐校出身で、家にあった卒業名簿をひっくり返し、年齢と卒業大学と就職先の情報をもとに大森の本名を特定していたとか(笑)
 
 一時間くらいお茶したあと、京大勢といったんオークションのつづく会場へひきかえし、その後起きた事件についてはこれまたひみつ。いやあ、京都まで来た甲斐がありました。

 6時にロイヤルホテル地下の中華料理店で会食。スポンサーは講談社の宇山さんと佐々木さん(西澤さん担当)、あとは西澤、有栖川、綾辻、我孫子、法月、麻耶、増田、大森に、祥伝社の保坂さんで合計11人が円卓を囲む。料理はけっこうよかったけど量が多すぎ。減量作戦崩壊の危機かっ。いやまあいいんですけど。
 話題は例によって清涼院流水先生関連とか白バラ関連とか。西澤さんは熱心にいろいろ読んでいて、率直な質問をつきつけるので面白い。

 食事の途中で保坂さんが東京に帰り、残り十人で一階のバーに流れる。一時間少々で看板になり、増田さん、有栖川さんが帰宅、宇山さんがホテルに引き上げる。残り7人になったところで、綾辻案が可決され「ちょっとカラオケでも」。河原町三条の「モグラのうた」でJOYSOUND1時間少々。麻耶雄嵩のアニソン午前一時閉店で追い出され、佐々木さん、西澤さんと別れて、残った京大勢5人で北白川バッティングセンターへ。我孫子さんが千織さんを呼び出して、けっきょく朝六時までセガカラで歌いつづける(綾辻さまは途中リタイア)。ちなみに北バツの支払いは我孫子さん持ち。持つべきものは高額納税者の友である。
 
 千織さんのクルマで麻耶雄嵩の新居に寄り、27本の白バラを我孫子さんのQV-10で撮影。よしよし。とか思ってるうちにシャンゼリオンのビデオ上映がはじまり、つづいてテレビで「思いっきり探偵団」の再放送がスタートしたりして気がついたら午前8時(笑)
 いやそれにしても麻耶くんちのクラシックコレクションの量には驚きました。生協のスチールラック2本分がクラシックのCDに埋めつくされ、下の棚はアニメのLDボックスがずらり。中間が存在しないんだもんなあ。両極端が一致している。アニメネタのクラシックミステリとか書いてほしいものである。


【6月3日(月)】

 起きたら夕方。綾辻さんから「起きたらコーヒーでも」電話が入ってたそうなので我孫子夫妻とてくてく出かけて近所のわりとしゃれた喫茶店でいっしょにお茶を飲む。
 ふたたび我孫子邸にもどり、マジック・ザ・ギャザリング対戦を少々。とかしてるうちに八時半になり、げげ、のぞみの最終って9時ごろじゃなかったっけ?
 と焦りつつ我孫子さんにミニで北大路まで送ってもらって地下鉄で京都駅。ゆうゆう9時前に到着、なおかつのぞみ最終は21:34とかでぜんぜん安心でした。というわけで最終一本前ののぞみに乗り、12時過ぎに西葛西到着。帰りの新幹線で書きかけてたインターネット@アスキーの翻訳ソフト特集のコメント後半部分だけロイヤルホストで仕上げて寝る。ナシゴレンプレートはまあまあでした。


【6月4日(火)】

 5時、三笠会館で鈴木光司氏とキネ旬の対談。お題は「12モンキーズ」だけど、鈴木さんはギリアム作品ほかに全然見てないし、この映画にもそんなに思い入れはないみたいで、対談はけっこう不発。ううむ、だいじょうぶだろうか。映画と関係ない話のほうが面白かったような気がする。オレも遊び疲れでけっこうへろへろだったし。まあいいや。
 まだ疲れてたみたいで、仕事もそこそこに、11時ごろに寝てしまう。


【6月5日(水)】

 明和書店に寄ったら、『INTERNETからくちHOMEPAGE CHECK1000』の二冊めが出ていた。一冊めは、柳下毅一郎が「オレのリンクを無断で使うな!」とかぶつぶつ怒ってた本で、うちのSF関連リンクにも使用された痕跡があったような気がしたけどまあそれはいい。他人様のリンクには自分でもお世話になってるんだからさ。
 しかし今回はうちのページが「小説」という分類のところに載ってて、コメントがあんまり面白かったので思わず買ってしまった。全文引用しよう。


文学不振の理由
 こうやって見てるとなぜ日本の現代文学がダメかよく分かるよなこの大森氏じゃないけどどっかのなんとか女史は〈掲載不許可〉ってあったから、気取ってんじゃねーよ、ってことではずさしてもらった。でもなんだかみんなエラソーに先生してるな。

◆ぶつぶつコメント

 かつて筒井康隆は私小説をけちょんけちょんにけなしそのけなし方は小気味よい程であったが、筒井とおなじSFの流れを汲む作家のホームページで攻撃されていたタイプのメンタリティーに出会わなくちゃならんのだから情けない。この程度の筆力しか無い奴らがホントに作家と名乗れるのかよ。悪夢だぜい!

                  (kenta)


 ちなみに句読点の打ち方が通常の日本語とややかけ離れているのは原文のままです。
 私小説的なメンタリティってのは、身辺雑記的に日記を垂れ流す精神構造を指してるんでしょうね。筒井康隆の私小説批判が文学的に有効なものかどうかはともかく――あれってSFを超虚構小説として称揚する議論の副産物として出てきたやつだっけ? それとも『やつあたり文化論』の百目鬼恭三郎叩きのほうかな?――理屈としてはわからなくはない。SF作家ならだらだら日常を書かずにSFを書けっ、って議論ですか。ううむ、火浦功批判としては有効かも(笑) 根本的な問題は、オレが作家じゃないし作家と名乗ったこともない、という点にある。このkenta氏はなぜ大森が作家だと思ったのだろうか。いやまあWWW上に情報を公開している以上、それがどのように利用されても批判されてもしかたないと思ってるんだけどさ。しかし文学不振の理由とわ(爆笑)。
「こうやって見てるとなぜ日本の現代文学がダメかよく分かるよな」って、どうすれば大森望のSFページを読んでそれがわかるのか、ぜひご教授いただきたいものである。いや、一罰百戒主義者だったり、0.01を聴いて10000を知るタイプの人かもしれないけど、オレの日記(かどうか知らないけど)をちゃちゃっと読んで「文学不振の理由」がわかってしまうほどの天才なら、こういう原稿を書くのは才能の浪費でしょうね。
「エラソーに先生してる」ところもできれば具体的にご指摘いただきたいところだけど、まあそこまで期待するのは高望みというものだろうから、貴重なネタをご提供いただいたことに感謝するしだいである。
 あ、それとhttp://www.ltokyo.com/ohmori/のタイトルは「大森望」じゃありません。日本語だと「大森望のSFページ」、英語タイトルはNozomi Ohmori's LO-FI sci-fi paGeですので以後よろしく。って以後はないか。

 ……と書いたあとでさいとうよしこに読ませたら、
「これってなんか点取り占いみたいだね」だって(笑) あ、ちなみに書き忘れましたが各ページに五段階評価の採点があって、うちのページは☆☆の2点っす。我孫子飯店もおなひとが執筆・評価してて3点。ぽての写真のおかげで1点多いらしい(笑) あ、コメント中では「ぼて」になってましたけど、「ぽて」ですからね。
 さらにちなみにさいとうよしこの分析によれば、
「このkentaって人、柳下さんがグレちゃったみたいな人なんじゃない? 五浪とかして特殊ビデオ店の店員してるとか。あ、でもこの文章けっこう好きかも」
 だそうである。まあたしかに特殊な才能ではあるような気がするな。

 西澤保彦『人格転移の殺人』の解説に着手。半分くらい書いてからMAG TIMEに行ってスラムダンクのコミックス最新巻と週刊の最終回を読む。あれだけひっぱったわりにそっけなさすぎの最終回だな。スピリッツ移籍って噂はほんとなんでしょうか。
『そばっかす』が入荷したのでさっそく読む。気がついたら10巻読み終わっていた。なんかこの一ヶ月大量の柔道マンガを読んだ気がするなあ。でもやっぱり「帯ギュ」が好きなおれ(笑)。

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