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■2007年04月29日 100円均一COM

 午後3時に起きて子供を公園に連れていき、ジョナサンで晩飯を食うついでにすぐ隣の古本屋「バックナンバー西葛西店」に行ったら、1967〜71年の雑誌「COM」が20数冊まとめて出ていた。どれでも1冊105円。同じ号が4冊あったりして、どういうルートで放出されたのかわけがわかりませんが、見つけちゃたものはしょうがないので、創刊年のものと状態がいいものを中心に10冊保護。COMは友だちの家で30年ぐらい前にまとめて読んだきりだけど、ぐら・こんのページとか、それなりに懐かしい。


■2007年04月29日 SFセミナー2007

 午前7時に目が覚めた関係で、珍しく開場前に到着。「SFセミナー開場を待って並ぶ人の列」を見たのは初めてかも。

 控え室で、曽根さんが少年画報社で最初につくった本だという福島正実著の児童向けSF入門書『未来の世界 SFの世界』(1971年5月刊)を見せてもらう。ポプラ社の筒井康隆『SF教室』とほぼ同時(一ヵ月遅れ)で出た本らしいが、存在さえ知りませんでした。ネットで検索したら古書Deja vuに出物があったけど52,500円ですよ奥さん。

 というわけで、1コマ目は「『奇想天外』の時代」(出演: 曽根忠穂 高橋良平 福本直美 新井勝彦(司会))。曽根さんはのらりくらりタイプなので、ふつうに質問しても面白さの伝わりにくい答えしか返ってこない。新しい話を引き出すなら、高橋良平にインタビューさせるほうが早かったのでは。
「荒俣氏はのちに早川書房に入った竹上昭氏なんかと一緒にホラー小説の同人誌をつくっていて……」みたいな話題が注釈なしに流れていくのもフラストレーションが溜まるところ。PCにつながったプロジェクターで書影が映されていたので、その場でタイプして、「リトル・ウィアード」とか「野村芳夫」とか、画面の下に勝手に脚注を書きたくなる。
 第一期奇想天外がいかにうさんくさい妙ちきりんな雑誌だったかはある程度伝わったと思うけど、ブラッドベリ特集における小鷹信光作成のリストの凄さとか、ジェラルド・カーシュ紹介の功績とか、まともな部分はあっさりスルー。
 第二期奇想天外については、「座談会」と「安田均」という単語が最後まで出ず、肝心の部分は語られずじまいだった印象。福本さんもせっかく壇上に上がっているのにほとんど発言機会がなくてもったいないことでした。隔靴掻痒。

 2コマ目は、「アヴラム・デイヴィッドスンの思い出を語る」Remembering Avram Davidson: Grania Davis Interview(出演:グラニア・デイヴィス、中村融)。
 その昔の翻訳勉強会以来20年ぶりにお目にかかったグラニア・デイヴィスさんは、ほとんどおかわりがなく、元気そのもの。パネルでは、アヴラムとの出会いの話が爆笑。18歳(大学1年)ではじめてニューヨークのアヴラムを訪ね、そのままアパートメントに居着いて結婚したとは……。ミルフォードSF作家会議の生々しい話をもっと詳しく聞きたかったところですが、通訳つきのバイリンガル企画では使える時間が半分になるので、情報量的にあれが精一杯か。それでもイグアナ話には深く食いつくところが中村融(笑)。

 昼食は一回に新しくオープンした喫茶店でランチのキーマカレー。タカアキラの友だちで古典SF研究家のフランス系アメリカ人(シカゴ大学東亜言語文化学科博士課程在籍中)xaky氏と、SFと落語の関係についての話とか。

 食後、ロビーでだらだらしていると、今春、某名門女子高校を卒業してめでたく大学に入学した「20歳までに5000冊」の中の人(通称・5000冊子ちゃん)がやってきたので、紙袋に入っていた卒業アルバムを無理やり強奪し、じっくり眺める。最近の卒業アルバムはこんなことになってるのか。いや、いいものを見せていただきました。しかし東大SF研はほかに新入生がいないらしい。そして会長確定らしい。新月お茶の会のほうは20人ぐらい新入生がいたそうで、SF研は没落の一途か。

 夕食は20人ぐらいで「天狗」神田淡路町店。Jコレ組のテーブルでなんとなく合宿企画用の情報収集雑談。初対面の伊藤計劃氏は予想外のキャラだった。 いや、SFおたく的にはむしろふつうなんだけど。博士号保持者が二人もいたので、円城氏に対する塩澤編集長の注文、「『博士の愛した数式』を超える作品を書いてください」についていろいろ考えて、『冷たい方程式を愛した博士たち』という感涙のハードSFを考えたが2秒で流される。

 オープニングの合宿大広間はものすごい人口密度。そして暑い。これ以上混むならオープニングの裏でも企画をやったほうがいいんじゃないかと思った。

合宿企画では、「ハヤカワJコレクションの部屋」「平山夢明さんと夜のひとときを過ごす部屋」「おーい、星新一」の3コマに出席。Jコレの部屋では、「『Self-Reference ENGINE』を20分割したものを配る」というネタがそれなりにウケてめでたしめでたし。円城さんはすでにベテランの落ち着きで質問を次々に処理。新人らしい初々しさに欠けるのが問題と言えば問題か。

 ちなみに、「なにが書いてあるかわからない」と塩澤編集長から突き返された円城短篇「Boy's surface」は(予想通り)志村弘之に異様にウケていた。ちなみにBoy's surfaceとは、射影幾何の3次元空間への埋め込みのひとつで、日本語だとボーイ曲面(たぶん)。ボーイは、それを発見した人の名前なんですが(Werner Boy)、もしそれが男の子だったら……という駄洒落から生まれたボーイ・ミーツ・ガールの初恋物語(と推定)。でも主人公は写像なので感情移入できないらしい(未読なのでよく知らない)。

 平山さんの部屋はいつもの平山さん。初めて見た人にはいろんな意味でインパクトがあったんじゃないかと。星新一の部屋は、主に「大江戸エヌ氏の会」元代表・牧眞司が星新一の思い出を語る部屋。じつは少年・牧眞司が『星新一』に登場しているという衝撃の告白(笑)とか。

 ようやく企画が終わって部屋に戻ると、恒例の東浩紀×トキオ対決企画が開催されていた。東浩紀にからかわれて怒り狂い、叫び声をあげながら部屋を飛び出しては、フロアを一周して戻ってくることを繰り返すトキオ社長。計算対決も行われていた模様。トキオの頭の中では、非常に複雑なアルゴリズムを経て4ケタの足し算が行われているらしい。

 結局、子供たちが寝たのは午前3時過ぎ。大広間の一画では、東浩紀×円城塔対決企画が開催されていた。誰とは言いませんが、おなじ種類の動物を嗅ぎ分ける鋭い嗅覚を持っていると思いました。横から見てると爆笑。しかし東浩紀の口調は相手が6歳児でも博士でもほとんど変わらないのがすごい。

 もっとも一番おもしろかったのは、午前5時ごろ、わたしの何気ないひと言をきっかけに始まった怒濤の暴露話「波状言論の時代」。「ふぞろいの林檎たち」というか「男男7人夏物語」というか、面白すぎるドラマだ。そのままTV化してほしい。というかまず小説にすればいいのに。

 朝方、寝部屋に戻ってちょっと仮眠。クロージング時刻になっても子供はまったく起きず、寝たままタクシーに叩き込んで帰宅。


■2007年04月27日 渡邊文樹祭り@代々木八幡区民会館

 ひさしぶりの渡邊文樹東京公演。今日は「罵詈雑言」「腹腹時計」「御巣鷹山」の豪華3本立て。  平日だというのに昼間からけっこうな集客。「罵詈雑言」のときは50人ぐらいだったのが「腹腹時計」では100人オーバー。最後は立ち見も出るんじゃないかという勢いでしたが、仕事が入ったので2本だけ見て退散。「罵詈雑言」はものすごい迫力だが、英語字幕を読まないと福島弁のセリフがよく聞きとれないのが難。セリフ採録つきのパンフを買ったのであとで読もう。カメラと照明は昔よりずいぶん進歩してます。「腹腹時計」はフィクションのアクション映画。前半は拷問のようだが後半は盛り上がる。


■2007年04月26日 ホラー大賞、偶数回ジンクス崩壊

 第14回日本ホラー小説大賞は、偶数回だというのに受賞作なし。第2回から続いた「偶数回に大賞が出る」という法則が崩れ去りました。

 飯野文彦『バッド・チューニング』は傑作だと思ったんだけどなあ。まあ、さすがに大賞は無理として、長編賞はあげてほしかった。このうえは是非とも落選作として大々的に宣伝・出版して、平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』に続くこのミス1位を目指してほしい。いや、めちゃくちゃ面白い小説なので、ちゃんと出せばほんとに1位とれると思うんだけど。
 短編賞受賞の曾根狷介「鼻」は、よくできたニューロティックなホラーの秀作です。あとちょっと迫力があれば、大賞もありだったんだろうけど……。 惜しい。

 大賞が出なかったので受賞パーティもなし。ホラー大賞もますます前途多難か。恒川光太郎の山本周五郎賞に期待? いやでも、やっぱり直木賞とらないと。

 あ、第20回山本周五郎賞の候補も発表。伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』(新潮社) 恩田陸『中庭の出来事』(新潮社)、恒川光太郎 『雷の季節の終わりに』(角川書店)、楡周平『陪審法廷』(講談社)、森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川書店)。これが最後のチャンスになるかもしれない(そろそろ直木賞をとりそうなので)伊坂、恩田が軸でしょうか。選考会は日本推理作家協会賞の翌日、5月15日。連休明けの編集者は忙しい。


■2007年04月25日 ブックファースト渋谷店10月中旬閉店!

 新文化オンライン「ニュースフラッシュ」から引用。
ブックファースト渋谷店(東京)、10月中旬に閉店へ 「入居中のビルの建替えにより」と理由を発表。同時に、来年11月、東京・新宿駅西口で現在建設中の「モード学園コクーンタワー」地下1〜2階と地上1階に「新宿店(仮称)」を1090坪で、渋谷店の閉店と同じ今年10月に渋谷第一勧銀ビル地下1〜2階に「渋谷文化村通り店(仮称)」を200坪で出店することも発表した。さらに、来春に東京・秋葉原、来秋に兵庫・西宮に出店することも明らかにした。
あのビルから出なきゃいけないらしいという噂は前々から何度か聞いてましたが、ついに……。 客としても筆者としてもものすごくお世話になった店なので、とてもとても残念です。とくに3階の文芸書売り場は、日本中さがしても他にないくらいユニークというか(とくにSF読者にとっては)居心地のいい空間だったのに……。
 10月の出店先が渋谷第一勧銀ビル地下ってことは、旭屋書店渋谷店のあとに入るんだろうけど、規模が全然違うので、はたしてどうなるか。
 閉店までまだ5カ月あるので、精を出して通いたい。


■2007年04月21日 MYSCON 8昼の部

 昼の部の会場、ベルサール九段にははじめて行ったが、ずいぶん立派なハコで驚いた。しかし会場費を聞いてさらに驚く。それじゃ赤字に決まってるじゃん! ていうか、だったらもっと人を集める努力をしないと。って、まあ私が心配することではありませんが……。

 初めてにしては大きなトラブルもなく、スムーズな進行だったんですが、SF系イベントのホール企画はいかに細かいノウハウが蓄積されているかを実感。ふつうにやってることも、なかなか初めてだと気づかないもんですね。 出演者の前に名前の札がないとか、「10分前」告知が出ないとか、呼ばれた時間に集合場所に行くとスタッフが誰もいないとか、細かい不具合はいろいろ。まあ、これからノウハウが蓄積されていくでしょう。

 桜庭インタビューでは、『赤朽葉家の伝説』が日本推理作家協会賞の候補になっていることを言及し忘れる失態。そこから東野圭吾ネタに振れば笑える話が引き出せたのに(東野さんからいきなり電話が来て仰天したらしい)。もっとも今日の白眉は『赤朽葉家』削除部分独演会だったので、それ以外のすべてのネタはどうせ一瞬で忘れられる運命だったに違いない。ちなみに協会賞長編部門の他の候補は、辻村深月『ぼくのメジャースプーン』、樋口有介『ピース』、森谷明子『七姫幻想』、柳広司『トーキョー・プリズン』。うーん、かなり読めない。評論その他の部門は、小鷹信光『私のハードボイルド』と巽昌章『論理の蜘蛛の巣の中で』の争いか。選考会は5月14日です。

 海堂インタビューは、ミステリチャンネルのMYSTERYゲストルーム枠で、10分程度に編集したものが5月に放送される予定。 イベント自体の紹介VTRは「MYSTERYブックナビ」5月号でたぶん流れるんじゃないかと。

 終了後は、桜庭一樹組(編集者+女子書店員)と新宿でご飯。そのあとMYSCON夜の部の鳳明館森川別館に立ち寄り、ライトノベル・ミステリの注目作評と、論創海外ミステリとか長崎出版GEMコレクションとかの翻訳ミステリ評を傾聴。なにを読めばいいかはだいたい把握したが、新刊以外は読むヒマがないのが問題。とりあえず、
久住四季『トリックスターズ』シリーズ(電撃文庫)は読まなきゃ。


■2007年04月20日 牧眞司×豊崎由美対談

 どれだけ読めば世界文学ワンダーナイト@ジュンク堂池袋本店。『世界文学ワンダーランド』(本の雑誌社)と、『どれだけ読めば、気がすむの?』(アスペクト)の刊行記念。

 二人が初対面なので、小心者のトヨザキ社長から潤滑剤として呼ばれたんですが、牧×トヨザキは控え室で顔を合わせた瞬間から意気投合。私はときどき茶々を入れてただけなので、別にいなくてもよかった気が。にもかかわらず意外にもギャラが出て大儲かり。こんな楽な仕事はないね。

 トークは牧眞司節が炸裂して、なかなか盛り上がったんじゃないでしょうか。最強文学脳内決戦の話とか。

 二次会は土風炉。合流した円城氏と交えて文學界の話とかブックファーストの話とか。


■2007年04月19日 東京ミッドタウン〜ミステリチャンネル〜早川書房

 20世紀FOX配給の20世紀FOX映画なのになぜか宣伝はギャガで、ムービー・アイが宣伝協力。ミッドタウン・タワーの34階にオープンした新しい試写室で最初に見る映画が「ボラット」かよ!
 ま、試写室だけの内覧会が開かれただけのことはある景観ですね。東京タワーが正面に見える側のガラスはすでにえらく汚れていたが……。
 映画は思ったより普通のつくりで、フェイクドキュメントじゃなく、割合まともなロードムービーになってました。ボラットがマネージャーと全裸でくんずほぐれつの格闘をやらかす場面は圧巻。

 東京ミッドタウンはHOTSPOTが入ってるんだけど遅すぎて使い物にならない。接続ユーザーが多すぎるせいか? 小腹が減ったのでガレリアのフードコートに行ったけど、午後4時でもほぼ満席。すごいねえ。しかもフードコートなのに客単価は1000円以上(推測)。バブル再来?
 ちなみにガレリアは、河原町三条の京はやしやがテナントで入ってて驚いた。

 5時からは神田錦町のミステリチャンネルで「MYSTERYブックナビ」収録。終了後、多町までぶらぶら歩いて早川書房。ハヤカワSFシリーズJコレクションから5月25日刊行予定の長編『Self-Reference ENGINE』の著者、円城塔氏が第104回文學界新人賞をめでたく受賞したので、勝手にその祝勝会というか、とりあえずメシでも食いましょうという話なのである。

 円城氏の受賞作「オブ・ザ・ベースボール」は、『ライ麦畑でつかまえて』を冗談SF化したアメリカンな不条理コント青春小説。『Self-Reference ENGINE』の1章を5倍に希釈したような感じ。
 同時受賞の「舞い落ちる村」も幻想小説系の短篇らしい。これを書いた谷崎由依氏も、名前はよく知ってるというか、〈KAWADE MYSTERY〉の短篇集でジャック・リッチーやロバート・トゥーイの短篇を訳してる人で、京都大学大学院文学研究科修士課程修了の若島門下生。前回、前々回の文學界新人賞受賞作からはずいぶんな変わりようで、いったいどうしたんでしょうか。しかしめでたい。受賞作はともに、5/7売りの文學界6月号に掲載予定。

 この受賞によって、Jコレの『Self-Reference ENGINE』が文學界新人賞受賞後第一作ということになったけですが、S澤編集長がこの小説につけたキャッチコピーによれば、
「進化しすぎた人工知性体が自然と一体化したとき、僕と彼女の時空をめぐる冒険は始まった。イーガンの論理とヴォネガットの筆致をあわせもつ驚異のデビュー作。Jコレクション創刊5周年記念作品」
だそうです。なんじゃそれは(その後、「イーガンの論理」が「レムの論理」に訂正された模様)。しかも神林長平、飛浩隆推薦。これ、小松左京落選作なんだけど、つくづく落ちてよかったということになるかも。Jコレ作家初の三島賞受賞を(とりあえず)めざしてほしい(芥川賞を狙うには相当に大きな路線変更が必要です)。

 しかし5月発売にもかかわらず、『Self-Reference ENGINE』はなんといまだに入稿されておらず、最後の直しの真っ最中。円城氏はS澤編集長と膝詰めで改稿の相談をしているので、私はそのあいだ早川書房編集部で油を売り、妙齢の女性編集者2人を拉致して近所の台湾料理屋で食事。たらふく食ったあとにやってきた円城氏から、文學界新人賞選考委員との会食の模様を根掘り葉掘り訊ねる。なんか、選考委員それぞれが「私とSF」について語り出してたいへんだったそうです。考えたら川上弘美はSF出身だしね。

 円城氏はインタビューが来月のSFマガジンに掲載予定。SFセミナー合宿のJコレ企画にも登場します。


■2007年04月17日 黙祷

 ローカス誌のニュースで、マイクル・ビショップの息子、ジェイミー・ビショップが、ヴァージニア工科大の銃乱射事件に巻き込まれて亡くなったことを知る(→故人のウェブサイト)。うまく説明できないが、個人的にはカート・ヴォネガットの死去よりショッキングだった。冥福をお祈りします。


■2007年04月11日 小説原作映画いろいろ

「しゃべれども しゃべれども」@アスミック試写室。
 子役の森永悠希の枝雀版「饅頭こわい」が爆笑。すばらしい。 八千草薫が竹箒で表を掃きながら、門前の小僧式に覚えた「饅頭こわい」を口の中でさらうシーンもよかった。 国分太一の「火焔太鼓」(志ん生バージョン)は……まあ二つ目ですから。
 原作の味わいはうまく再現されてるし、映画の出来は全体に悪くないんですが、客の笑い声を入れすぎ。一門会はともかく、いくら今の東京の寄席でも、あそこまでは笑わないんじゃ。

・「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」/「アヒルと鴨のコインロッカー」@東芝エンタテイメント試写室
 本谷有希子と伊坂幸太郎の二本立て(自主興行)。
「腑抜けども」は永作博美がすばらしい。最初のゴロゴロゴロと転がるシーンから観客を鷲掴み。こんな才能があったとは。サトエリも悪くないんですが、今回は相手が悪かった。

「アヒルと鴨」は上々の仕上がりながら、がんばりすぎて息が抜けないのが難。しかし原作の精神は忠実に映像化されていると言うべきか。

・「転校生―さよなら あなた―」
 ミス・フェニックス・グランプリの新人、連佛美沙子が主演の新作。大林宣彦自身による「転校生」リメイクで、角川文庫に入った山中恒『おれがあいつであいつがおれで』が原作としてクレジットされてますが、途中から全然違う話になって茫然自失。大林版「時かけ」と細田版「時かけ」くらい違う。それにしても、こ、これはいったい……。不条理映画? ある意味、必見の話題作かも。
 もうひとつ驚いたのは主題歌「さよならの歌」の寺尾紗穂。寺尾次郎さんのお嬢さんだそうで、全然知りませんでした。

・「ルネッサンス」
 って、これは小説原作じゃなくてオリジナル。アヌシー国際アニメーション映画祭2006長篇部門グランプリのSFノワール。白黒版スキャナー・ダークリーというか、 全編モノクロで撮った攻殻機動隊+レイモンド・チャンドラーみたいな感じ。
 映像はいいんだけど、SF映画としてはあまりにも話が……。いくらなんでもこのラストはないでしょう。そうせならほんとにチャンドラー原作でやればよかったのに。
 日常的にアニメを見たりSFを読んだりしない人が感心しそうな映画だが、そういうものとしては話が複雑すぎるかもしれない。


■2007年04月11日 吉川英治賞@帝国ホテル(水曜)

 新人賞は佐藤多佳子、本賞は宮部みゆき。かろうじて宮部さんのほうが年上。去年じゃなくてよかった(笑)。

 本の雑誌の文学賞特集(各賞パーティ予算の話がめちゃめちゃ面白い)の影響で、まじめにパーティ食べものチェック。しかし、メールの問い合わせに気軽に返事したら、その文面がほとんどそのまま原稿に使われてしまうというのはどうか>本の雑誌・浜本発行人。データはデータとして使ってほしい。

 二次会は佐藤さんの会に1時間半滞在してから、クルーズクルーズの宮部会に。行ったらちょうど、渡辺淳一先生がものすごいスピーチをやってる最中でした。「あとはきみも男と女のことを書きなさい。なんなら私が教えてあげよう」と受賞者の肩に手を回しぎゅっと抱き寄せる。先生、世間ではそれはセ(ry。さすがだと思いました。

 宮部三次会はカラオケ@バグース・クオリア。宮部さんの歌を聞くのもひさしぶり。というかカラオケ自体がひさしぶりだ。森絵都さんの歌を初めて聞く。ブルハのファンだとは。


■2007年04月07日 ファン交〜三省堂

 SFファン交流会はライトノベル原作のアニメの話。途中で抜けて、春日の駅まで歩く途中で見つけた石井いり豆店で豆を買い、貪りながら歩く。カレー豆がとくにうまい。
 4時からは神田・三省堂で豊崎×岸本トークショー。満員です。岸本佐知子がどこまで豊崎由美のガードを崩せるか……と思ったが、だいたいは持ちネタ披露。すでに円熟の境地か。新企画は、ホワイトボードを使った魔窟ちゃん大図解。


■2007年04月06日 オーラソーマ体験

 届いたダ・ヴィンチ最新号をぱっと開けたら、島本理生さんがいきなり眼鏡っ娘になっててびっくり。主婦の友社の『オーラソーマ・ボトル・メッセージ』っていうセラピー本の宣伝企画で、著者と対談してるんですが、そこで語られているの意味がまったくわからず茫然。唯一よくわかった発言がこれ、「実は昨年、結婚したばかりなんですが、仕事で忙しいと、つい家庭を後回しにしてしまうことがあって……。」
 結婚したからメガネにしたんでしょうか。そこが知りたい。


■2007年04月05日 神田川サマバケ部〜本屋大賞

 高田馬場ビッグボックスで古本市を覗いてたら、古川日出男・鴻巣友希子と神田川を歩くツアー、サマバケ部(『サマーバケーションEP』参照)の人々がいつの間にか集合。おお、そういえば、ジュンク堂トークショウの前にそんな企画が実施されるという話を風の噂に聞いたような……(ちょっと白々しい)。聞けば、新江戸川公園まで歩くというので、飛び入り参加する。なにしろ、先週送ったこの本の書評の末尾で、「とりあえず、暑くなる前に、下落合から飯田橋ぐらいまで歩きたい」と書いたばかりなのである。

 ツアーご一行は、このあとジュンク堂で予定されているトークセッションの参加者(のうち一部の希望者)。15人前後でビッグボックス魔からスタートし、ぞろぞろ歩く。古川氏はけっこう早足。学生時代は西早稲田に住んでいたこともあるという。ときおり立ち止まって解説。昨日の大雨で神田川はけっこうな水量。白い鷺ばかりか、鵜も2羽。でかい鯉も泳いでました。『サマーバケーションEP』で一級河川だと知ったときは驚いたんだけど、明治通りの先まで行くと川幅が広くなり、これならと納得。

 桜はきれいだし、気候はいいし、執着地点まで歩きたかったが、本屋大賞の会場で渡すゲラの見直しが終わってないので、面影橋で離脱。ま、サマバケ的には、急に参加するやつとか、急にいなくなるやつが必要なので(と思ったら、フルカワヒデオ日記にもそう書かれていた)。

 早稲田通りまで出て、10年ぶりに文英堂を覗いたら、30年前からいる(たぶん)おばちゃんがすわってた。銀背の函付き『SFの夜』を300円で買って(家に帰って函から出したら、なんと福島正実のサイン入り謹呈本だった。為書きの相手は、すでに故人となったSFのえらい人。超掘り出し物でした)、てくてく早稲田まで歩き、マックでゲラを直してから、タクシーで明治記念館。本屋大賞はものすごい混雑。万城目学氏に挨拶。下宿は百万遍の学相のそばだったそうです。受賞者の佐藤多佳子さんとも初対面。奇想コレクションの愛読者なんだとか。

 森見登美彦と有川浩が初対面の挨拶を交わす現場を間近に目撃。微妙な空気が流れてました。私にとっては同郷の人と同窓の人だが、とっさに共通の話題が見出しにくかったもよう。そりゃそうか。

 松田哲夫氏がいたので、「本屋大賞の候補作って、松田さんのてのひらの上で踊ってるようなラインナップですよね」と憎まれ口を叩いてたら、松田さんが壇上の挨拶でいきなりその話を(表現を変えて)引用したので驚く。

 二次会は佐藤多佳子さんの会にも万城目ご一行にも森見会にもまじらず、男は黙ってジョン万次郎。若者の就職相談に乗ったり、就職活動現場を目撃したりする。



■04月03日 長すぎる解説

 早川書房《プラチナ・ファンタジィ》シリーズの四六判ハードカバー化第一弾として、クリストファー・プリーストの改変歴史SF、『双生児』が4月下旬刊行予定。その解説を頼まれ、「ページが空いてるので何枚でも」と言われてどんどん書いてたら40枚ぐらいになり、やっぱり30枚と言われてどんどん削る。短篇も含めた作品リストを入れようと思ったのに入りませんでした。参照urlも入れられなかったので、かわりにここで。

プリースト本人のサイト
Reading in a War An informal bibliography for The Separation
The scars of war
The Interrogation an interview with Christopher Priest(infinityplusのインタビュー)
テキストが検索できる英国版原書
Christopher Priest: An Unreliable Narrator(LOCUSのインタビュー)
 しかし解説書くのにamazon.ukの中見!検索がこんなに役立つとは。

 長すぎる解説と言えば、1週間前には、創元SF文庫版『銀河英雄伝説2』にも長文解説を書いた。こっちはほとんど中国版の話。簡体字で書かれた中文サイトの中身を解読するのにほとんどの労力が費やされた。参考URLリストは載ってますが、めんどくさいひと用にリンク集。

【引用・参考ウェブページurl】

「人民網>>書畫>>新書發布 2006年07月20日 《銀河英雄傳説》一夢夢十年」
「北京趣聞博客 (ぺきんこねたぶろぐ)2007/02/09 なつかしの『銀英伝』、中国で堂々出版」
「世界鑑測 田中信彦の『上海時報』2006年8月23日 人民日報も認める『銀英伝』。中国で「愛される理由」は」
星河「《銀河英雄伝説》――写実的“伝説”」2006年09月21日
「Webミステリーズ! Science Fiction 『銀河英雄伝説』創元SF文庫版に寄せて」(田中芳樹)
「銀河英雄伝説 ON THE WEB インタビュー第1回」(1996年、第4期OVA制作時インタビューより抜粋)
「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』銀河英雄伝説

 さらにその10日前にふつうの長さの解説を書いた小笠原慧『サバイバー・ミッション』(文春文庫)はまだ本が出ていない。



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