『現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』


6月17日発売。定価 2,415円(税込)
→予約受付中: amazon | bk1 | 7&Y



 見境なくいろんな仕事を引き受けてきたおかげで、ここ十年ばかり、なにが本業なのかさっぱりわからない状態が続いてますが、自分ではあくまでSFがホームグラウンドだと思っている。というか、個人的には、高校生の頃からずっと、「SF読者であること」が第一のアイデンティティなのである。
 かつて渡辺貞夫は、「オレがメシを食ってる。それがジャズだ」という名言を吐いた(うろ覚えの孫引きですみません)。僕の場合、さすがに食事中はSFのことを忘れがちですが、あとはアニメを見てもミステリを読んでも文学賞を語っても子供を育てても、根っこのところではどうしてもSFファンの見方・読み方・語り方・育て方になってしまう。その意味では、根っから"SFの人"だし、本業は"SF業"かもしれない。
 したがって本書は、「SFの人がSFの本のことを書いたSFの本」ということになる。とはいえ、「餅は餅屋」を実践できているかどうかははなはだ疑問。読者としても書評家としても翻訳者としてもSFのど真ん中を引き受けるつもりは毛頭なく、ジャンルの端っこのほうで好き勝手なことを言う気楽なポジションを選んできたし、SF専門誌の時評とは違うひねくれた憎まれ口を心がけてきたつもりなので、くれぐれも本書の見解がSF読者の一般的な見解だとは思わないでください。
 本の中身としては、《小説奇想天外》連載の翻訳SF時評コラム「海外SF問題相談室」と、《本の雑誌》連載の「新刊めったくたガイド」SF時評が二本柱。毎日新聞その他の媒体に掲載された書評や年間回顧を加えて年代順に整理し、適当に加筆・修正しました。《小説奇想天外》編集長の曽根さんはじめ、初出媒体の担当編集者・記者各氏にこの場を借りてあらためて感謝する。(「おわりに」より抜粋)」


◆目次


 はじめに

第1部 海外SF問題相談室[1987〜1991]

【1】10分でわかる翻訳SF出版史1975―1989
【付表1】年度別翻訳SF書籍ベスト 1975〜1989
【2】正義と真実のサイバーパンク!
【3】まだまだ続くサイバーパンク祭り
【4】巷のサイバーパンク言説メッタ斬り!
【5】SFの歴史はSF雑誌の歴史である
【6】練馬でSFについて考えてみた
【7】SFマガジン一年分を採点する
【付表2】1988年SFマガジン訳載海外SF短編考課表
【付録1】SF'88――1988年度SF出版総括
【8】海外SFをつくる人々――ニッポンの翻訳SF編集者大研究
【9】商業サイバーパンクは生き延びられるか?
【付表3】海外SF関係者生年表
【10】女と男の世の中――SFMポスト・フェミニズムSF特集の真実
【付録2】SF'89――1989年度SF出版総括
【11】翻訳SF出版の未来は明るいか?


第二部 「新刊めったくたガイド」SF時評

【1990年】『ウェットウェア』のスピードに酔う/『完全な真空』は奇想SFのオールタイムベストだ!/山田正紀はやっぱりすごいぞ!/『文学部唯野教授』に抱腹絶倒!/『アド・バード』は椎名版『地球の長い午後』である/根本敬の猛毒本『怪人無礼講ララバイ』に爆沈/ハインラインの遺作をゆるゆると読む/現代SF最前線の傑作! 『完璧な涙』を今すぐ買え/『知性化戦争』千八百枚を息もつかずに一気読み!/本邦初紹介ルイス・シャイナーのスマートな現代SF/『ビジネスマン』で意地悪ディッシュを満喫/『サード・コンタクト』の新人、小林一夫に注目!/1990年度SF出版総括

【1991年】スターリングのラディカルな近未来SF/マニアだけにお薦めする、ジンデルのハチャメチャ怪作/K・W・ジーター幻の処女長編、ついに登場/もう誉め言葉がない! 草上仁の快進撃/『グラス・ハンマー』の叙述スタイルにしびれる/今年のSFベスト1、早くも決定!/超弩級、中井紀夫《タルカス伝》がとにかく凄い!/ベア、ベイリー、シェパード、重量級が揃い踏み/スチームパンク決定版、『ディファレンス・エンジン』/水鏡子『乱れ殺法SF控』にSFマニアの魂の叫びを聞け/SFはヒューマニズムの道具じゃない!/オモシロ要素がてんこ盛り! 夢枕獏『混沌の城』は本格SFの傑作だ/1991年度SF出版総括

【1992年】毎日新聞読書面SF時評[1991年11月〜1992年3月]/1992年度SF出版総括――冬の時代≠フ到来

【1993年】1993年度注目作書評ア・カ・カルト/1993年度SF出版総括――「頑張れ、SF!」

【1994年】魔術的リアリズムで綴るビッスンの痛快ロードノベル/メリル『SFベスト・オブ・ザ・ベスト』復刊に感涙/物語の暴走機関車《タルカス伝》、怒濤の大団円/妊婦が探偵? 松尾由美の異色SFミステリ/科学と文学のハイブリッドって……?/国産ホラーの隠し玉!? 今月のMVPは小野不由美だあっ/ニュータイプの和製モダンホラー、恩田陸『球形の季節』/ティーンズ文庫数千冊の頂点、小野不由美《十二国記》を今すぐ読め!/超本格バカSF、イアン・ワトスン『星の書』に随喜の涙/至福の読書体験、ジョン・ヴァーリイ『スチール・ビーチ』/『ゼノサイド』vs『エイダ』、年間ベスト1の傑作が大激突!!/女性活字中毒者必読の傑作ファンタジー、『九年目の魔法』/1994年度SF出版総括

【1995年】前代未聞空前絶後の異常な少年小説、『鉄塔 武蔵野線』にブッ飛ぶ!/ギブスン久々の長編は洒落た{電脳活劇{サイバーサスペンス}}/超弩級、SF魂が燃え上がる傑作『ハイペリオン』、ついに登場!!/京極夏彦『魍魎の匣』は今年の日本SFベスト1だっ!/イアン・マクドナルドのケルティック・ファンタジーを断固支持/大風呂敷ナンバーワンのバカSF、『時間的無限大』/新本格モダンホラーSF!?『七百年の薔薇』に注目/麻耶雄嵩は変すぎる! 「あ」っと驚く『痾』に唖然/『ハイペリオンの没落』は現代SF最大最強の奇蹟的大傑作である/『ラッカー奇想博覧会』の暴走に酔う/『ソリトンの悪魔』は新本格SF第一号だっ!!/現代日本SF作家全員を網羅する? 『The S-F Writers』登場/魂はクルマに宿る――神林長平『魂の駆動体』/1995年度SF出版総括

 おわりに

【付表3】21年分のSFを一望する、翻訳SF出版年表1975〜1995

 巻末索引




top | link | bbs | articles | other days