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■2007年03月30日 小鷹信光vs若島正@ABC本店

「異色作家短篇の愉しみ、ハードボイルドの真髄」と題するトークショーが青山ブックセンターで開催。

 意外にも(でもないか)本日が初対面ってことで、丁々発止の正面対決というより、それぞれが自分の持ち芸を披露。すれ違いざま、ときおり火花が散った感じ。

 小鷹さんは袋に山ほど資料を持ってきてたんですが、おそるべき整理魔であることが判明。半世紀前につくった私家版アンソロジーとかちゃんととってあるんだもんなあ。 こういう人じゃないとああいう本は書けない。

 小鷹さんの先制攻撃は、エリスンの「どん底列車」話から"Spider Kiss"のカバーのロバート・マッギニスの話に移り、カーター・ブラウンのマッギニス画PBをコンプリートした自慢話を軽く入れつつ、"Rockabilly"のタイトルで初めて出た版を見せて、ハメットの謎について語り、その原型となった短篇を発見した自慢へと続くとか。若島さんも負けじと用意の「グルメ・ハント」ネタで応戦――という具合。おたがいに相手の芸を直接は受けず、攻守交代するところがユニーク。不思議な対談でした。いや、面白かったけど。
 小鷹さんは、自宅で蔵書のカバーをスキャンしたものをCDに焼いて持参、ABC担当者のノートPCをプロジェクタにつないでその場で映写するサービスぶり。そういえば昔は、ペーパーバックのカバーをポジフィルムで撮影してつくったSFアートのスライド上映がSFコンベンションの定番企画だったなあ。

 ところで、若島さんが日本語の翻訳では小説を読まない(原則としてすべて英語で読む)という話は、大森は25年前から知ってるので今さら何とも思わないんですが、初めて聞いた人は一様に驚いたらしい。自分で作品を選んだアンソロジーも他人が訳した部分はその翻訳を読まないし、書評するときも英語テキストを底本にして、訳語だけ訳本を参照するんですね。
「つまりあなたは私が訳した本も、私の翻訳では呼んでないわけだね」と小鷹さんもそこだけは突っ込んでました。客席にいた田口俊樹氏も実はそこに突っ込みたかったらしく、三次会まで付き合った挙げ句、午前二次に若島さんが帰ったあとでさんざん文句を言ってたり(笑)。

 客席は半分以上が関係者という黒い顔ぶれで、二次会hana hanaにはミステリ関係者が集結。総計40人以上で、ほとんど貸し切り状態でした。

《早稲田文学》カバーガールとして(?)有名なシンガー/ライターの川上未映子さんが来てて、どうしたのかと思ったら、若島さんが書評ですばやく『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』を誉めた縁らしい。若島さんもそういうところはめざといよねえ。

 三次会は例によって鳥良。タクシーが全然つかまらず往生しました。年度末&夜桜&東京ミッドタウン開きのトリプルパンチか。


2007年03月18日 初めての科学技術館

 小川町のハミルトン・インで朝ごはんを食べてから、お昼にチェックアウトして都営新宿線で九段下。 帝京大グループ合同卒業式@日本武道館の客でごった返す北の丸公園を突っ切り、初めての科学技術館

 液体窒素を使った科学実験とかやってて、トキオはかぶりつきで見てました。ハカセくんみたいな白衣の眼鏡男子の口上がなかなか素敵。あの台本は自分で考えたんだろうか。

 巨大ピタゴラスイッチみたいな回路の各パーツを操作して子供たちが共同でボールを動かしていくアトラクションがなかなかよくできてると思った。

 日曜日なのにあんまり混んでなくて、適度にひなびた感じがグッド。一階の催事場では衣料品バーゲンやってて、中年女性があふれ、最初はなにごとかと思いました。 しかし疲れた。


2007年03月17日 SF本の雑誌マガジン結婚パーティ

 ウェディングコスプレ姿の新郎新婦は、客に見つからないよう、オープニングまで待機スペースに隔離。時間になると、横手のドアを抜けてガラス壁の向こうにまわり、レッドカーペットを踏んで正面玄関から入場。思いきりぎくしゃくした動きがまるでロボットのようでした。

 メイド服コスプレ案は思いきり固辞されて実現しなかったが、まあM村もthyも盛装がじゅうぶんコスプレになってからよしとしよう。

 会場は新郎側幹事のタカアキラが探してきた万国食房ディナギャン。新婦側幹事はおやびんこと浜田公子@本の雑誌社。当日司会は井出聡司@SFセミナー。目黒考二の来賓挨拶がさすがに年の功でした。小浜徹也司会の新郎新婦クイズは日下三蔵が全問正解で優勝。

 ふだんめったに一緒にならない人々が同席した割りに、SFグループと本の雑誌グループはなかなか混じり合わず、知らない人たちに紹介を求めた常識人は柳下毅一郎だけという体たらく。その点、SF者たちと思いきりなじんでいたおやびんはえらい。

 二次会は神保町パセラのダーツバー。すでにSF者ばかり(おやびん除く)。

 一次会後に新郎新婦から配られたひさしぶりの結婚ファンジン、細井威男編集の「SF本の雑誌マガジン」に対し、SF者は「イラストがない」とか「写真ぐらい使え」とか文句ばっかり言ってましたが、こういう文化になじみのないミステリ系、本の雑誌系の人は感動していた模様(→その後、本の雑誌5月号の自在眼鏡欄で紹介)。しかし表紙でいきなり「目黒考二」を「目黒孝二」と誤植している事実を大森に指摘された編集人の人は、二次会場の床に這いつくばり、○| ̄|_ポーズに。ま、よくある間違いですよ。

 ちなみにファンジンをつくる意欲が猛然と湧いているそうなので、結婚ファンジンをつくってほしい人はいまのうちに細井威男を予約しよう。結婚相手はあとから決めても可。

 三次会は、新婦が和民、新郎がアニカラという分裂開催。SF眼鏡男子ハーレムでおやびんを接待しつつ、早川書房の人事の歴史を振り返るコーナーとか。早川書房の新入社員に早川の社史を教えてあげるコーナーとも言う。

 子連れだったので、小川町のハミルトン・イン御茶ノ水に宿泊。


2007年03月16日 試写5本立て計画

 石原慎太郎脚本・製作総指揮「俺は、君のためにこそ死ににいく」@東映試写室。
 ものすごいタイトルの慎太郎映画ですが、実際は岸惠子映画。多部未華子の母親役がそんなに浮かないのが恐ろしい。モデルになった熊本の食堂のおばちゃん(特攻隊員の母と呼ばれた人)の写真がエンドクレジットに流れるんですが、あまりの落差にめまいがします。
 東映の映画なのに引きの絵ばっかりで、死んでいく特攻隊員さえほとんどアップがなく、窪塚くんも大丈夫かと思うぐらい精彩がない。いろいろ気にして言い訳を入れすぎた結果、妙に地味な映画になっちゃった感じ。特撮はそれなりにがんばってますが、イーストウッドが「硫黄島からの手紙」とくったあとではいかにも分が悪い。 盆踊りのイメージショットは「愛の流刑地」かと思った。 しかしネタとしては中途半端だったなあ。

 夢枕獏原作・堤幸彦監督「大帝の剣」@ひきつづき東映試写室。阿部寛の源九郎は(全然イメージ違うけど)すばらしい。 江守徹のナレーションはくどすぎる。 TV特番としてはそれなりに楽しい。しかし慎太郎映画は主題歌B'zでこっちはGLAYですか。

 さらに続けて松竹試写室で「ゲゲゲの鬼太郎」。妖怪の造型はいいんだけど、話があまりにしょぼいというか、ヒーロー戦隊ものの任意の一話みたいなのはどうか。なぜ狐? 田中麗奈の猫娘はよかった。

 4本目はソニー試写室で「スパイダーマン3」フッテージ試写……のはずが、機材の不具合で中止。後日、出直して見ましたが、サンドマンとの対決はなかなか。しかしクライマックスに入る直前で切れていた。ケチ。

 最後はメル・ギブソン監督の新作「アポカリプト 」。無名の役者ばっかり、全編マヤ語という映画ですが、これがめちゃめちゃ面白い。評判通りの傑作。 無尽蔵の予算で好き放題につくった「エメラルド・フォレスト」たみたいなものすごい活劇。アドレナリン出まくりなので、体に活を入れたいときに有用。

2007年03月16日 草野満代問題

 ご存じの人もいるかもしれませんが、日経BPnetの直木賞予想で『ひとがた流し』をボロカスにけなした際、大森は、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い式に、 「しかも(あとがきに)草野満代に取材したとか書いてあるからなあ」と発言したんですよ。
 そしたら過日、光文社のパーティで北村薫さんが向こうからつかつかとこちらに歩み寄ってくる。
「ひとつだけどうしてもわからないんで教えていただきたいんですが、草野満代さんに取材したと書くのはどうしてダメなんですか?」
 ああすみませんすみませんいやそのヒロインのイメージが限定されるというか草野満代だと微妙にキャラがかぶるしゴニョゴニョと弁明。なんでも北村さんは、取材したとき草野満代のことをまったく知らなくて、なんのイメージも持ってなかったらしい。で、ヒロインには別にモデルがちゃんといるので、純粋に取材協力者として謝辞を捧げただけなのになぜ文句を言われるのか、そこだけどうしてもわからなかったんだとか。
 いろいろ話を聞いて、私の『ひとがた流し』理解が根本的にまちがってたことはよくわかりましたが、まあねえ、なかなかそういう風には読めないんじゃないかと。というか、正しく(著者の意図するとおりに)読めていない小説のほうが多いことを実感。


2007年03月15日 フランク・ミラー「300」

「ドーン・オブ・ザ・デッド」のザック・スナイダー監督で映画化。サロンパス・ルーブルの披露試写で視聴。名前だけじゃなくサロンパスのショーケースまであるのか。
 原作はテルモピレの戦いをレオニダス王率いるスパルタ軍300人の側から描いた話なんですが、映画は(ファラミアとゴクリ?が出てくることもあって)めちゃくちゃ指輪度が高い。「ロード・オブ・ザ・硫黄島」?
 原作の絵柄再現度は「シン・シティ」並み。王妃サイドの話を追加して緩急をつけてます。ペルシャ軍が次々にくりだす秘密兵器との戦いが見せ場。音楽はなんか川井憲次みたいだと思った。絵もほとんどアニメ。蛮族をひたすら殺しまくり血煙が途絶えない。ムダに大げさですが、いやあ、すごいもん観たなあという感じ。
 原作は小プロから5月下旬発売。映画は夏かな。


2007年03月15日 あらゆる場所にイーガンが

 今日届いたダ・ヴィンチの単行本『本気で小説を書きたい人のためのガイドブック』。カバーが松尾たいこでびっくり。というのはともかく、内容はダ・ヴィンチ本誌の特集の総集編。
 ほぼ唯一の書き下ろしコンテンツとして、江南亜美子さんていう人が「海外翻訳小説に学ぼう。」という章を書いてるんですが、テキストの選択がすごい。
 マグレガー『奇跡も語る者がいなければ』、イシグロ『わたしを離さないで』、クローデル『リンさんの小さな子』、ペレーヴィン『恐怖の兜』、アジェンデ『パウラ』、ベンダー『萌えるスカートの少女』、エリクソン『リープ・イヤー』と来て、最後がイーガン『ひとりっ子』。
 これでもうちょっと文章に芸があれば完璧なのに。ちなみにこの人、別のところでは『マルドゥック・ヴェロシティ』をテキストに使ってます。その筋の人でしょうか。


2007年03月13日 「イリュージョンVS」改め「プレステージ」

 クリストファー・プリーストの『奇術師』をクリストファー・ノーランが映画化したやつ。邦題は今日から正式に「プレステージ」になったらしい。めでたしめでたし?
 GAGAの社内試写を見てきたんですが、ちゃんとハリウッド流種明かしサスペンスになってました。原作の現代編をばっさりカットし、そのかわりにドラマ的な外枠をはめて、対決もののように話を進めながら、最後にマジックの謎解きを持ってくる構成。原作読んでると、「それじゃバレバレじゃん!」と思うんだけど、いきなり見る人にはこのぐらいやらなきゃダメなのか。これだけ脚色してるのに、原作の味わいはけっこう再現されてて、そこは立派。デイヴィッド・ボウイのニコラ・テスラだけでも一見の価値あり。古沢さんはますますボウイ訳者度UP(笑)。

 エンジャ(字幕ではアンジャー)のほうの瞬間移動トリックは、原作以上に情け容赦がないものになってたような。シルクハットを使った説明は映画的にはわりと優秀。ジョナサン・ノーランの脚本は(ハリウッド映画としては)知的レベルが高いほうかも。キャラクターに関しては、原作よりも(常識的に)納得しやすくなってる部分も。

 しかし原作ファンが大喜びするような映画でもないな。 今のところ6月9日公開予定。


2007年03月05日 しょこたんVS日下三蔵

 某所で教えてもらって今ごろ発見。爆笑です。 「一般の歌手」とか。


2007年02月26日 「おまえは早川で3000部しか売れない海外SFでも訳してろ」

 きのう「ふうん」と読み流していた日記が今日ははてなの注目エントリーに。いや、3000部しか売れないSFを早川で訳すのは無理です(笑)。企画が通らないから。国書刊行会ならギリギリなんとか。

この方の論法、 〈SF考証がどうこうとかSFマインドがどうこうとか不思議な単語を持ち出して「ガンダムSF論争」とかでロボットアニメとかと決別したはずなのに、SFというジャンルが過去の遺物となってからは、そういう過去の清算もしないままに、星雲賞とかで売れた作品を無理矢理SFと決め付けてつまみ食いしてみたりする姿勢の卑しさを。放漫経営で会社を潰しかけて、追い出した息子に援助をねだる老社長みたい。その売れた作品が生み出される影にある無数の駄作を賄ってきた、そのジャンル固有の事情とかは一切無視して成果だけを掠め取るつもりですか?〉
 っていうのは、SFアニメ論争にトラウマを持つアニメファンの間でけっこう共有されてて、10年ちょい前、新世紀エヴァンゲリオンを誉めたときは、NIFTYのアニメ系フォーラムの女性に「そっちからアニメを捨てたくせに、SFおたくがいまさら父親面して(アニメに)すり寄ってこないでよ」とえらい勢いで怒られたことがある(『現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』  頁参照。)。
 その過去はオレの過去じゃないから! とかいっても外部には通用しないので、過去の清算のためにSF作家クラブ会長名で村山談話(「ガンダムはSFじゃないと言ったのは不幸な過ちでした。すみません」とか)を発表したらどうか、というのが笠井さんの提案(→6月13日の日記参照) 。
 こういう経緯があるおかげで、『ライトノベル☆めった斬り!』のときも、「SF者のくせに!!」と一部から猛反発を食ったわけですが。
 しかし「書店で見かけた本の帯」ってどれだろう。気になる。


2007年02月25日 岸本佐知子×豊崎由美@ABC

 場内は満員の大盛況。年季の入った掛け合いに爆笑の嵐。 最後はサプライズ誕生パーティの演出つき。
 いろんな人が来てましたが、山崎まどかさんとは初対面。若島さんとのトークイベントには行けなかったので。その話と『ブック・イン・ピンク』の話はしたけど、『ハイスクールUSA』の話をするのをすっかり忘れていた。間抜け。


2007年02月04日 初めての入水

 高知県立文学館で倉橋由美子展を見てから、ひろめ市場でお昼を食べてたら、追手前小学校の餅つき大会を終えたゑり忠の一家とばったり。まっこと高知のまちはせまいぜよ。
 食事のあとは日曜市を冷やかし、タクシーで玉水町まで戻って、最近開店したスーパーマルナカを見学。鏡川沿いをぶらぶら歩き、河原でさんざん石を投げて遊んだあと、ブロック伝いに川を渡ろうとしたトキオは、最後のところでブロックを踏み外し水深一メートルの川に転落。首まで水に浸かって、泣きながら抱き上げられ、全身ずぶ濡れ状態で帰宅。なかなか男の子っぽいエピソードだ。夏ならよかったんだけどねえ。まあ今日はあんまり寒くなくてさいわい。


2007年02月03日 人体の不思議展@高知

 バースデー割引で子連れ帰省したら、県立美術館で「人体の不思議展」をやってたので、はるばる高須まで家族で出かける。しかしトキオはポスターを見るなり怖い怖いとびびりまくって目をつぶり、一切なにも見ず。

 高須はよほど寒いのか、美術館の外の池にびっしり氷が張ってて、子どもはみんなそれを割って遊びまくり。トキオもキリカもすっかり氷割りに夢中になって大満足。

 わたしは輪切りプラスティネーション標本とかにいっぱいさわれるんだと思って楽しみにしてたのに、さわっていいのは全身標本が一体だけだった。ちぇ。

 帰りに帯屋町に寄って島内書店に行ったら、バイトで入ってる20歳ぐらいの女の子が、小学校で同級生だった子の娘さんだと聞いて驚く。言われてみると顔が母親そっくり。
「お母さんの若い頃に生き写しだねえ」と声をかける年に自分がなったかと思うと感慨深い。

 ついでに金高堂書店本店も覗き、文芸書担当の人に挨拶。外文の棚も手書きPOPが立ち、けっこう充実してます。

 ところで、あとで聞いた話では、帯屋町のはずれの小さな古本屋、西沢書店は、この1月で閉店したらしい。まあ、私が中学生の頃から今にもつぶれそうな店だったので、2007年まであの店舗で商売を続けられたのが奇跡かも。


2007年01月23日 「蟲師」試写

 すっかり時代劇だった。むしろ大友克洋版「股旅」みたい。オダギリジョーのギンコは意外となじんでますが、全体としては心地よく眠たい映画。 蒼井優が出るところだけぱっちり目が覚めた。すばらしい。
 原作にもアニメ版にもあんまり興味が持てなくて途中までしか読んで/見てないので、ラストがよくわかりませんでした。「蟲師」を知らない人には全体的に意味不明かも。


2007年01月22日 「BABEL」転じて「愛ルケ」

「BABEL」の試写を見るかとはるばるロポンギルズに出撃。菊池凛子ゴールデングローヴ賞で話題の映画なんで一応、30分前に行ったんですが、またしても門前払い。GAGAはあれですか、試写から追い返される客の数を人気のバロメーターにしようという作戦?  なんか試写状に金色もしくはピンク色のシールが貼ってある人は入れてもらえるらしいんだけど、もちろんそんなものはなく。
 鷲巣義明と一緒にすごすご引き返しかけると向こうから柳下毅一郎が(笑)。
「ダメダメ。今ごろ来ても遅いよ」
「30分前なのに!」
「試写状にシール貼ってあると入れるそうだけどね」
 試写状をとりだす柳下毅一郎。もちろん貼ってない。
「ほらね。平民は去れってことですよ」
 しかしこのまま帰るのも業腹なのでロードショーを見ることに。わたしはメッタ斬り!対談に備えて「愛ルケ」を選択。すでに開映時間を10分過ぎているが、チケット売ってくれました。
 冒頭のベッドシーンが欠けては見る価値がないという柳下毅一郎は「硫黄島からの手紙」を選択(ちなみに鷲巣義明は「時かけ」を見たらしい)。
 問題の「愛ルケ」は、原作の天然ボケ風味を残しつつ、原作よりかなりIQの高い仕上がり。浮世離れしたセリフの数々を様式美の世界に落とし込み、裁判シーンからのカットバックで処理する脚色はなかなか優秀。演出にはけっこう悪意がこもってると思ったが、ギリギリふつうに見ておかしくないラインは守ってるのか。検事役のハセキョーがあまりにもすごすぎて、あれだけでも見る価値はあるね。ほとんど退屈しなかったし。
 ただし残念ながら、神宮の花火に合わせて菊治ががんばるシーンはありません。


2007年01月21日 立川でコニー・ウィリスを読む

 2時間睡眠で起き出し、子連れで立川。弟とその息子と立川のJR改札口で合流してから、オリオン書房ノルテ店までぶらぶら歩く。どこかへ連れていくまでもなく、子供たちは児童書売場でえんえん遊んでました。迷惑ですみません。

 本題のオリオン書房トークイベントは、柳下毅一郎をゲストに呼んだ「コニー・ウィリスの世界と奇想コレクションのこれから」。客が10人ぐらいしかいなかったらどうしようと思っていたところ、最終的にはほぼ満席。40人ぐらい? はるばるご来場くださったみなさんに感謝。日曜日なのにわざわざ来てくれた各社編集者のみなさんもありがとうございました。

 トークのほうは、寝不足のせいでときどき意識が飛び、ややとっちらかった感じでしたが、最初からびっちりウィリスの話でかためるつもりはなかったので、その点は予定どおり。ウィリスの朗読とか、iTuneで売ってる「女王様でも」ラジオドラマとかをラジカセで流したり。

 来場者は関係者が半分、知らない人が半分。中には、『わが愛しき娘たちよ』を2500円で買いましたという女性とか、大学でSF研をつくりたいのに3人しかあつまりませんどうしたらいいでしょうと相談する19歳男子とかもいました。

 打ち上げは、白川さんが予約してくれた、近所のお洒落なダイニングバー。どやどやと押しかけたので、デートの締めくくり用に席を予約していたらしきカップルにはご迷惑さま――と思ったけど、なんかこっちのことはまったく目に入ってない感じだったからまあいいか。 キリカは打ち上げに行く前から沈没、トキオは途中から爆睡。日曜の夜で電車ががら空きだったので帰りは楽勝。


2007年01月20日 このミス大賞贈賞パーティ

 帝国ホテルのせまい会場で、賞状なしの賞金目録贈呈byスポンサー各社。去年の受賞作がめちゃめちゃ売れてるわりにパーティは小規模で、出席はほんとに関係者のみ。そしてスポンサー各社の関係者がいなくなると、二次会はいきなりアジアン・キッチンですよ。なのに、一次会は料理が余ってましたからね、二次会は注文を控えてくださいとアナウンスするI倉局長(笑)。ここまで予算管理を徹底しないと新人賞は成功しません。

 去年出した3冊合計で50万部になるとかいう大ベストセラー作家の海堂尊氏が10年ぶりに麻雀をしたいというので(茶木則雄談)、富の再分配のため卓を囲むことに。メンツは茶木さんと大森とハセベバクシンオー氏。たっぷり稼いで帰る予定が、海堂さん、いきなりワレメの親で倍満ツモ。その後もメンピンツモドラ11の3倍満チップ6枚オールとかのムタイな手をあがりつづけ、午前6時に終わってみればお金持ちのひとり勝ち。いちばん負けたのはいちばん儲かってない(推定)ハセベ氏でした。

 カネちゅうのはさびしがり屋でなあ、集まりたがるもんなんや、と。 もちろん、やりとりしてたのはカネじゃなくて名誉ですが。


2007年01月15日 「暴走する書店」論

 産経の「【コラム・妙】暴走するスタバ、書店、商社…制作現場への介入、許すな」を呼んで茫然。
 筆者の岡田敏一氏は、米スタバがレコード会社に注文を出し、制作現場に介入している(?)と書いたあと、

 最近、よく似た状況は日本でもある。書店員が選ぶ「本屋大賞」なるものが力を持ち、出版社は目利きの店員や書店の顔色をうかがう。映画界でも出資する商社や銀行などが影響力を強めている。

 ネット社会の影響で出版や音楽業界が苦境にあるのは分かるが、制作現場への介入は許すべきではない。大げさかもしれないが、これは表現の自由を放棄する愚挙だと思う。これを許せば、当たり障りのない個性ゼロの売れ筋ばかりが世にあふれ、気が付けば業界全体が荒れ野原と化す。

 レコード会社や出版社は成績の良い小売店にペコペコする必要はない。誰にもこびない型破りな個性や異能の発掘・育成に力を注いでほしい。金は後からついて来る! はずだから…。

 もうね、アホかと。流通が制作現場に介入する話を書きたいなら、大手取次とか米アマゾンとかダイソーとか大手書店チェーンの話を書くのが普通でしょ。「本屋大賞」が力を持つと制作現場にどんな影響があるのか。書店員が嫌う本が出しにくくなるんですかね。本屋大賞狙いの本ばかり出すようになる? そもそも「当たり障りのない個性ゼロの売れ筋ばかりが世にあふれ」る現状をなんとかしようと始まった本屋大賞が、その元凶みたいに言われたんじゃ、実行委員会も立つ瀬があるまい。


2007年01月14日 北上次郎の老人力

 たいていのことにはもう驚かないが、本の雑誌2月号のめったくたガイドには茫然。今月は事実上2冊しか紹介してないんですが、その1冊が、山本甲士『墨攻』。ふつうに書評したあとで、
「……どうやら映画化されるようだ。もっとも、映画化の前にコミックがあり、そのコミックの映画化らしい。(中略)ところがよく見るとそのコミックには酒見賢一の原作があるというのだ。ちょっと待てよとあわてて調べると酒見賢一『墨攻』が新潮文庫から出ている。そうか、じゃあそっちを読めばよかった。私、それを未読なのである。(後略)」
 映画「墨攻」のポスターや予告編で酒見賢一の扱いがあまりにも小さいと、昨年来、私は悲憤慷慨しているわけですが、まさかこんな書評が出ようとは。「墨攻」は仮にも直木賞候補作なのに。
 20年後にはおれもこういう書評が書ける境地に達しているだろうか。


2007年01月12日 元日から仕事

 あけましておめでとうございます。
 の挨拶もそこそこに栃木から単身東京にもどってひたすら仕事。1月4日から出社してるので5日に原稿くださいとかいう人の言うことを聞いてると正月はありません。さらに、日経BPnet版「文学賞メッタ斬り!」用に芥川賞直木賞の候補作を読み、ホラー大賞の箱をかたづけるので青息吐息。年賀状はとうとうパス。隔年制作を目標にしたい。

 年末年始の最大の驚きは、本の雑誌M村とSF者林哲矢の結婚情報。しかもそれを知ったのが婚姻届提出2日後(12/27)というていたらく。

 ふたりの出会いは大森望主催の西葛西宴会だったにもかかわらず(自分の日記を検索してみると、たぶん2003年8月4日の花火宴会が初対面)、大森氏には一言の挨拶もなく、池林房の忘年会でなんの前置きもなくいきなりこの事実を知らされた大森氏は驚愕のあまり言葉もなかったという。後刻、
「林が引っ越した時点で怪しいと思うべきだった。まさかそんな秘密があったなんて……。人を疑うことを知らない純真な性格が裏目に出た。M村のウェディングドレス姿を見ることだけが楽しみだったのに、もう入籍したとは許せない。いまは裏切られた気持ちで一杯です」
 と言葉少なに語った。
 とはいえ本人たちの意向にかかわらず、3月には結婚祝いパーティが開かれる見込み。関係者各位はふるってご参加下さい。結婚記念ファンジン「SF本の雑誌マガジン」創刊号も堂々刊行の予定(細井威男編集長)。
 おめでとうございました。けっ!!

 さて、もうひとつ告知。

 2007年1月21日(日) 午後4時(3時30分開場)から、立川のオリオン書房ノルテ店ラウンジで、『コニー・ウィリスの世界と奇想コレクションのこれから』と題するトークイベントをやります。ゲストは柳下毅一郎。

 一応、『最後のウィネベーゴ』刊行記念というか、オリオン書房ノルテ店で開催中のウィリス・フェア協賛企画なので、前半に、ウィリス自身による「女王様でも」の朗読とか、ラジオドラマ風オーディオブックとかを流しつつ、ウィリスの未訳作品とかの話をして、後半は、スラデックとかマグラアとかイーガンとか、奇想コレクション続刊予定ラインナップの話をしようかと。あと、もちろん粉砕骨折とか、ブライアン・W・オールディス『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』とか、若島異色作家アンソロジーとかの話も。
 定員をオーバーすることはまずないと思うので当日いきなり来ていただいても入れると思いますが、なるべくならオリオン書房もしくは大森または柳下に申し込んでください。
 このイベントに来ると、おめでたい電撃結婚カップルを祝福できるかも(笑)。

 そうそう、めでたいといえば、おかげさまで『最後のウィネベーゴ』は新年早々、増刷が決まりました。ぱちぱちぱち。GAINAXの忘年会でウィリス・ファンの池澤春奈嬢に一冊贈呈した御利益か。たくさん積んでくださった書店の皆様、お買い上げ下さった皆様、ありがとうございました。
 前回、中身に触れる余裕がなかったので、収録作について簡単に。


「女王様でも」Even the Queen (IASFM 1992/4)
 ウィリス十八番の軽い社会風刺コメディ。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、アシモフ誌読者賞、SFクロニクル賞受賞。これぞ正真正銘のピリオド・ピース。(SFマガジン1994年12月号初出を改稿)
「タイムアウト」Time Out (IASFM 1989/7)
 前代未聞の方法で行われたタイムトラベル実験の意外な顛末を描く、前代未聞の昼メロ風異色時間SF。イグナトゥス賞(スペイン)受賞。本邦初訳。
スパイス・ポグロム Spice Pogrom (IASFM 1986/10 )
 ラグランジュ5に浮かぶ日本製スペース・コロニー〈Sony〉を舞台にしたスクリューボール・コメディ。アシモフ誌読者賞受賞。本邦初訳。
「最後のウィネベーゴ」 The Last of the Winnebagos (IASFM 1988/7)
 アメリカ最後の一台となった大型キャンピングカーに滅びゆくものへの想いを託し、読後に深い余韻を残すシリアス系の代表作。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、アシモフ誌読者賞、SFクロニクル読者賞、SFマガジン読者賞受賞。

 詳しい情報は、そのうちコニー・ウィリス日本語サイトを更新して掲載します。なるべくトークイベントまでに。

 ふと思い立ち、SF/ミステリ関係者生年表・暫定版をひさびさにちょっと更新しました。


2007年03月30日 小鷹信光vs若島正@ABC本店

「異色作家短篇の愉しみ、ハードボイルドの真髄」と題するトークショーが青山ブックセンターで開催。

 意外にも(でもないか)本日が初対面ってことで、丁々発止の正面対決というより、それぞれが自分の持ち芸を披露。すれ違いざま、ときおり火花が散った感じ。

 小鷹さんは袋に山ほど資料を持ってきてたんですが、おそるべき整理魔であることが判明。半世紀前につくった私家版アンソロジーとかちゃんととってあるんだもんなあ。 こういう人じゃないとああいう本は書けない。

 小鷹さんの先制攻撃は、エリスンの「どん底列車」話から"Spider Kiss"のカバーのロバート・マッギニスの話に移り、カーター・ブラウンのマッギニス画PBをコンプリートした自慢話を軽く入れつつ、"Rockabilly"のタイトルで初めて出た版を見せて、ハメットの謎について語り、その原型となった短篇を発見した自慢へと続くとか。  若島さんも用意の「グルメ・ハント」ネタで応戦――という具合。おたがいに相手の芸を直接は受けず、攻守交代するところがユニーク。不思議な対談でした。いや、面白かったけど。
 小鷹さんは、自宅で蔵書のカバーをスキャンしたものをCDに焼いて持参、ABC担当者のノートPCをプロジェクタにつないでその場で映写するサービスぶり。そういえば昔は、ペーパーバックのカバーをポジフィルムで撮影してつくったSFアートのスライド上映がSFコンベンションの定番企画だったなあ。

 ところで、若島さんが日本語の翻訳では小説を読まない(原則としてすべて英語で読む)という話は、大森は25年前から知ってるので今さら何とも思わないんですが、初めて聞いた人は一様に驚いたらしい。自分で作品を選んだアンソロジーも他人が訳した部分はその翻訳を読まないし、書評するときも英語テキストを底本にして、訳語だけ訳本を参照するんですね。
「つまりあなたは私が訳した本も、私の翻訳では呼んでないわけだね」と小鷹さんもそこだけは突っ込んでました。客席にいた田口俊樹氏も実はそこに突っ込みたかったらしく、三次会まで付き合った挙げ句、午前二次に若島さんが帰ったあとでさんざん文句を言ってたり(笑)。

 客席は半分以上が関係者という黒い顔ぶれで、二次会hana hanaにはミステリ関係者が集結。総計40人以上で、ほとんど貸し切り状態でした。

《早稲田文学》カバーガールとして(?)有名なシンガー/ライターの川上未映子さんが来てて、どうしたのかと思ったら、若島さんが書評ですばやく『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』を誉めた縁らしい。若島さんもそういうところはめざといよねえ。

 三次会は例によって鳥良。タクシーが全然つかまらず往生しました。年度末&夜桜のWパンチか。



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