【10月25日】


 本日退院しました。意外と早かった。
 急な入院でご迷惑をかけた各方面の皆様には心からお詫びします。
 はるばるお見舞いに来てくださったみなさん、花や果物を届けてくださったみなさん、留守宅のかたづけに来てくれたみなさん、メールやメッセージやmixiコメント等を寄せてくださったみなさん、どうもありがとうございました。
 ってことで、ぼちぼちリハビリ。とりあえず溜まった本をなんとかしなきゃ。

『回天編』は本日配本。一部書店にはもう並んでいるようです。amazonでも注文受付開始。


【10月23日】


 入院3週めに突入。禁煙生活も3週め。病院で見る「響鬼」も今日で3回め。片岡礼子には驚きました。

 薬剤溶出ステント(DES)手術は、10月18日に無事終了。インストールされたのは、Johnson &Johnsonの子会社Cordis 社のシロリムス溶出冠動脈ステント、その名もCYPHER(R)。これで大森も冠動脈にCypherを装備するりっぱなcyborgになりました。cypherpunk?

 前回の造影検査時に比べると冠動脈の閉塞箇所はかなり状態がよくなったらしく、担当医のあいだでステントを入れるかどうかの判断について議論になり、ガラスの向こう側でしばし話し合いが持たれたようですが、結局、入れたほうが安心という結論に。
 カテーテル手術のあいだ、ずっとモニタを観察してたんですが、1メートルぐらいある管が動脈の中をにょろにょろ動いていくのはかなり妙な感覚(入口の鼠蹊部にはもちろん麻酔されてます)。ステントを広げて留置するとき、ちゃんと(?)胸に痛みが走る。血管が痛いっていうのはこういう感覚か。

 準備体制を整えてからの手術なので、術後の回復も早く、1日でほぼ元通り。あとはリハビリの続きと検査と読書の日々。
 北方謙三『水滸伝』全19巻を読破しました。いやあ、最後の4冊ぐらいは怒濤の展開です。年末年始とかのまとめ読みを推奨。
 ほかに読んだのは、恩田陸『ネクロポリス』、ソウヤー『ハイブリッド―新種―』、桐野夏生『アンボス・ムンドス』、三羽省吾『厭世フレーバー』、アンブローズ『偶然のラビリンス』、柾悟郎『さまよえる天使』、鳥飼否宇『痙攣的』とか。
 あと、産経新聞に秋元康が連載してた「象の背中」のプルーフ(余命3ヵ月と宣告された中年パパの話)と、おなじ話を百倍うまく書いた重松清の「その日のまえに」。死にかけたあとの入院中に読むと身につまされていいかなと思ったけどそうでもなかった。
 急性心筋梗塞の致死率は20パーセントの高率らしいけど、突然死なので小説のネタにはなりにくい。いやまあ『血液魚雷』とかはあるけどさ。『航路』のグレッグ・メノッティ(週3回ワークアウトしてる人)も心筋梗塞か。
 姫野カオルコの『ハルカ・エイティ』はまだ途中。

 手術明け、太田出版KTO氏が『現代SF1500冊 回天編 1996〜2005』の見本を持って来訪。いやあ、寝てるあいだに出来ちゃうもんですね。前巻にくらべてさすがにずっしり重い。
bk1では予約受付がスタートしてます。10月26日発売見込。
 ほぼ同時期に店頭に並ぶアヴラム・デイヴィッドスン『どんがらがん』とラファティ『宇宙舟歌』も見本が到着。どっちもカバーと中身にほとんど関係がない感じだけど(とくにラファティ)、装幀そのものは非常にいい。評価については『回天編』を立ち読みしてください。しかしこの2冊と一緒に出すのは間違いだったかも。一ヵ月ずらすほうがよかったかなあ。


【10月14日】


 入院生活もすでに一週間。体感的には一週間前よりはるかに健康ですが、まだ歩くなと言われてるので何もできない(今日から、室内で歩くことは可能になるはず)。土曜日の発症時は、カテーテル入れて検査したものの血栓溶解で治ったので、来週火曜日に改めて薬剤溶出性ステント手術の予定。退院はさらにその先。まだまだ長い。
 ひたすらだらだら過ごして来たんだけど、しかしまるまる一ヵ月仕事をぜんぶ休んでしまうとたちまち入院費も払えなくなるんで、ぼちぼち原稿書かなきゃ……と思いつつ、煙草もコーヒーもないとエンジンがかかりません。という体質を改善するために入院してるってことか。
 体感的にはまったく健康なのに部屋を出られないので超退屈。ひたすら読書中。北方謙三『水滸伝』全十九巻とか。いや、さすがに全巻読破はしないと思うが。あとは未読消化を含めて、辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』上中下『子どもたちは夜と遊ぶ 』上下貫井徳郎『悪党たちは千里を走る』加納朋子『てるてるあした』古橋秀之『ある日、爆弾がおちてきて』伊坂幸太郎『魔王』歌野晶午『そして名探偵は生まれた』山本幸久『はなうた日和』……などなど。

 煙草はそんなに吸いたくならないんだけど、メシがねえ。オレは低血圧なので減塩の必要はそんなにないんじゃないかと思うんだけど出されたものを食うしかない塩分7グラムの食事。天やのかきあげ丼とかケンタのフライドチキンがもりもり食いたい。

 ちなみに『現代SF1500冊 回天編 1996〜2005』は、著者が入院しているあいだに無事校了となり、10月26日発売予定だそうです。ぱちぱちぱち。


【10月10日】


 2ヵ月のご無沙汰でした。とりあえず緊急のお知らせ。
 今年の京都SFフェスティバルのレポートを見た方は先刻ご承知でしょうが、せっかく今まで京フェス皆勤だったのに、今回は急病により欠席。
 なにがあったのかというと、心筋梗塞。うちは親が二人とも心臓やってるし、喘息のクスリと煙草もあるし、強烈な胸の痛みはこの1年間で2回ぐらい経験してたんで、正直やばいとは思ってたんですよ。まあしかし、まだ大丈夫だろうとだましだまし運転していたところ、ついにエンスト。
 京フェスの日の早朝、胸部を激痛に襲われ、脂汗をだらだら流しながら這うようにしてタクシーに乗って近所の病院へ行くと、心筋梗塞の疑いが強いと言われて、救急車で臨海病院に搬送。ちぇ、こんなことなら最初から救急車呼んで臨海病院へ行くんだった。
 まあ、心臓にも深刻なダメージはなかったようなので不幸中の幸い。冠動脈はぼろぼろな状態らしいけど、まあこれから気長に直すしか。とりあえずの処置だけでも一ヵ月入院の見込み。 44歳で心筋梗塞とは情けないが、まあしょうがないか。

 しかし臨海病院では、「ER」ののんびりした回ぐらいだった。リドカインとかヘパリンとかガンガン入ってるし。
 応急処置終了後は、有無を言わさずICUのベッドに寝かされたんだけど、いきなり局部の剃毛に尿道カテーテルですよ、みなさん。 しかも、美人看護師が蒸しタオルで体を隅々まで拭いてくれるサービス付き。煙草が吸えないのを除けば極楽かも。 あ、メシはまずいです。とても。ベッドから起きちゃいけないのも3日続くと飽きてくる。まあ明日からは立って歩く訓練(いや、いまでも歩けるけど)に入る模様。
 退院できるのは一ヵ月先らしいが、外出も禁止かどうかはまだ不明。仕事は、すでに受けているもの以外はすべてお断りする方向で。それ以外の原稿が書けるかどうかは、一般病棟に移ってみないとわからない。たぶん大丈夫だと思うけどなあ。文藝賞、谷崎賞、ホラー大賞のパーティはパス。問題は対談とTVですが。17日になったらはっきりすると思いますのであらためて連絡しますです。

●発作で入院する前日には、『現代SF1500冊 回天編 1996〜2005』の索引原稿を入稿。再校チェックもだいたい終えて、10月末発売のメドが立ったところでした。分量は前巻の4割増し、500ページを超えちゃったんで、さすがに値段据え置きにはならなかったんですが、なんとか100円アップのみでとどめました。部数が減ってることを考えるとよくがんばったと思います。
 この巻で扱った本は約1000冊。『ディアスポラ』『啓示空間』はもちろん、『どんがらがん』『宇宙舟歌』の書評まで入ってます。おまけに2005年度SFベストテンつき。発売される頃はまだたぶん病院なので、お見舞いだと思って買ってやって下さい。


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