彼も会社にいる人だぁ。彼は愛知県にある国立N大の修士課程を修了したあと、某S社に入社。半年もしないうちに出身大学に派遣され、2年半ぶりに戻ってきた29歳独身男性(97年現在)。
ファッション そんな彼の趣味はファッションである。社内報にも書いていたので間違いない。彼の夢は、せっかく今はこうして東京(都)に住んでいるのだから、原宿青山代官山で洋服を買うことなのだ。そんな彼のファッショナブルさを証明するのが、首元に光るゴールドのネックレス。ファーストネームは入手出来なかったため、セカンドネームの頭文字のアルファベットのTの文字が燦然と輝く。これはただのネックレスではない。以前、初めてのスキーの時にこのネックレスを身に付けていかなかったがために、骨折してしまったのだった。その時から彼は、そのネックレスをファッションのためだけでなく、お守りとしても身につけ続けることになったのだ。
携帯電話 そんな彼が派遣先から東京都に戻ってきた時のことである。たまたまSさんが耳鼻科の待合室で彼に会ったのだった。彼の言うことには、最近耳の聞こえが悪いらしい。彼の引っ越したばかりの住いには、まだ電話が引かれてなかった。なので、電話をかけたいときには携帯電話を使ったのだ(ここでおもむろに鞄から携帯電話を取りだして、話している相手に見せる)。名古屋に電話をかけたのだった。ところが電話の声がとっても聞こえにくいのだった。彼は心配した。以前、メニエール病と診断されたこともある。もしや何か自分の体に・・・。
残念ながら、医者は無残にも「何処も悪いところはない」と言い放ったらしい。