[芸術教育記録報告]

Tamagawa-Berlin Philharmonic Members Education Program 2017 “Exploring within the Arts”

玉川-ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員 教育プログラム2017

〜芸術で探検〜

小佐野圭 大谷千恵 安倍尚樹

Kei Osano, Chiue Ootani, Noki Abe

Ⅰ.はじめに

本企画は平成29年度小原國芳教育学術奨励基金助成事業として2017年11月22日にドイツ連邦共和国大使館の後援もいただいて「玉川とベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員との教育交流2017」を実施した。本企画の主旨は、「本物から学ぶ」という玉川学園の教育方針に繋げるために、世界的な演奏家(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員4名)を招聘し、本学園の生徒と学生との芸術交流を通して芸術の可能性を追求し、芸術の価値観や視野を広げることを明らかにすることにある。

(以下、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団はBerPhilと明記)

アマデウス・ホイットリング氏(ヴァイオリン)は、オーケストラ活動だけでなく、ソロやカルテットでも活躍されており、1998年に玉川学園に初めていらして以来、交流を続けてくださっている。特に、音楽を通した教育活動や社会貢献にも積極的に取り組まれており、BerPhilにおける教育プログラムではリーダー的な役割を担われている。彼を中心としたメンバーによる教育プログラムは、単なる演奏指導や演奏に終わらず、音楽を通して、芸術に触れることの大切さや人間としてのあり方についても言及し、玉川学園がめざしている全人教育、音楽教育、国際教育に合致する実践を展開している。

Ⅱ.プログラム概要

Ⅱ-1.実施方法:以下の3部構成

①芸術学部生と玉川学園4年生との教育プログラム、

②公演の部 Part1:弦楽四重奏の演奏とお話し PartⅡ:パフォーミング•アーツ学科の玉川太鼓&舞踊による公演、

③対話の部 PartⅢ:芸術学部生とBerPhilとの対話  「芸術家とは? -What does it mean to be an artist mean? 」

Ⅱ-2.実施日時:

2017年11月22日(水)10:00-16:00

Ⅱ-3.招聘演奏家4名(BerPhil):

アマデウス・ホィットリング氏(ヴァイオリン)、ライマー・オルロフスキー氏(ヴァイオリン)、マシュー・ハンター氏(ヴィオラ)、ニコラス・ルーミッシュ氏(チェロ)

Ⅲ.スケジュール

Ⅳ.考察

今回の教育プログラムで、BerPhilが取り上げた作品はヨゼフ・ハイドン(1732-1809)とヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1971)そしてフェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)の「弦楽四重奏曲」である。演奏形態は主にヴァイオリン2本、ヴィオラ1本、チェロ1本で構成されている。ハイドンとモーツァルトは

18世紀ウィーン古典の代表的巨匠ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン(1770-1827)の中の2人、メンデルスゾーンはロマン派の作曲家の1人ということになる。つまりBerPhilは古典派とロマン派時代の代表的な作曲家の「弦楽四重奏曲」を取り上げたということである。

因みに、ハイドンの作品番号は「Hobokenホーボーケン」番号で、モーツァルトは「Köcheケッヘル」番号で、ベートーヴェンは「Opus作品番号」で記載される。

オーケストラの規模を縮小して究極なアンサンブルの形にしたものが「弦楽四重奏曲」である。ハイドンは68曲、モーツァルトは 曲、ベートーヴェンは16曲残している。古典派時代にハイドンが弦楽四重奏などの「室内楽 (原語はムジカ・ダ・カメラ)」の基盤を確立したことはいうまでもない。ハイドンの「ロシア四重奏曲Op.33(全6曲)」は、古典派以降、多くの作曲家の弦楽四重奏曲の源流になっていると言われている。弦楽四重奏曲はハイドンの後、モーツァルト(1756-1791)とベートーヴェンがリレーしクラシック史上に残る多く四重奏曲の名作を完成させた。特に弦楽四重奏曲について、ハイドンとモーツァルトは親密な関係を築いている。ハイドンの「ロシア四重奏曲Op.33(全6曲)」はモーツァルトにとって大きな衝撃となり、モーツァルトは「ハイドンセット」と呼ばれている「弦楽四重奏(K.387,K.421,K.428,K.458,K.464,

K.465)」を作曲しハイドンに献呈している。その後、この四重奏曲はメンデルスゾーン、シューマンやブラームス、バルトーク、ベルク、ショスタコービチなどに受け継がれている。

さて、今回取り上げたハイドンの弦楽四重奏曲は作品76の6曲の中の曲で「エルーディ四重奏曲(1979年作曲)と言われている。彼の最後の9曲(「五度」「皇帝」「日の出」など)の中の1曲となる。

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲は作品番号がない曲を含めて7曲残している。今回、BerPhilは第4番作品44-2(1837年作)を取り上げた。弦楽四重奏曲の系譜を辿れば、ハイドン、モーツァルト、ベートヴェンの3大巨匠が築いた弦楽四重奏をメンデルスゾーンがロマン派の表現で受け継いだということになる。

さて、「室内楽の歴史」と弦楽四重奏曲の音楽の基盤と成っている「ソナタ」について考察する。

Ⅳ-1.室内楽の歴史

「室内楽」はもともと王侯貴族のための音楽であり、管弦楽、弦楽四重奏曲、ピアノ三重奏曲とか、楽器編成や声部でジャンルが区別することはなく、宮廷という室内空間で演奏されたもの全てが「室内楽」であり、独奏や声楽、さらに管弦楽をも含む幅広いものであった。つまり18世紀中頃以降の室内楽と、それ以前の室内楽という名前は意味が異なっていたということである。バロック時代における室内楽の代表的形態としては、2つのバイオリンと通奏低音からなるトリオ・ソナタがあげられるが、古典派時代になると室内楽の楽器編成も変化していきトリオ・ソナタは廃れ、前述したディヴェルティメント(娯楽音楽)やセレナード(夕べの憩いのための音楽)など世俗音楽が盛んになっていった。室内楽の概念が編成面からとらえられるようになったのは、音楽生活の中心が貴族のカメラから市民的な公開演奏会に移った18世紀末のことである。この頃から、宮廷音楽から脱却し市民階級のための音楽へと変化することとなる。完全に宮廷音楽から市民階級の音楽に移行していくのは、ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)の時代からであろう。

Ⅳ-2.ソナタ

18世紀中頃から19世紀にかけて、西洋音楽は器楽の歴史と共に経過してきたと言っても過言ではない。多くの「器楽作品」が発展した時代と言える。民族音楽や宗教音楽は別にして、古典派とロマン派を「近代音楽」と呼ぶならば、「調性」は「近代音楽」の音組織の基盤となる。その基盤の上に成り立っているのが「ソナタ形式」である。室内楽が時代によって意味が異なることは述べたが、ソナタも同様に異なる。「ソナタ」の語源はイタリア語のSonare(鳴り響く)に由来し、ヨハン・ゼヴァスチャン・バッハ(1685-1750)の活躍した時代初期においては、「ソナタ」は器楽作品に対して言われ、声楽作品の「カンタータ」と対照になった言葉である。まだ小規模でいくつかの対照的な部分から成る1楽章形式をとるものが多かったが,中期以降は全体も大きくなり教会ソナタといった速度、内容の異なる数楽章の形式をとるようになる。ウィーン古典派に代表されるように、18世紀以降、ハイドンやベートーヴェンなどの古典派の「ソナタ」の完成に伴ってソナタ形式は4楽章構成の中で使用されるようになった。

ソナタ形式は「調性」の中で構成されていて、あえて簡潔に言うならば主和音と属和音に代表されるように、「音楽のまとまり」を現すのが基本である。交響曲や弦楽四重奏は「急-緩-舞-急」という4楽章構成で書かれた楽曲で「提示部、展開部、再現部+コーダ」からなる形式のことである。

筆者はソナタは「演劇」に極めて似ていると考えている。演劇を1つのドラマに例えるならば、ドラマは時間の経過の中で、感情の移り変わりを表現する。そしてドラマの中には「対比」の原理がある。例えば「悲しみ」から「喜び」へ、「不安」から「静寂」から「クライマックス」へと、「否定」から「肯定」へと変化していくのである。

ソナタも「対比」の原理で作られていく。形式は3つのシーン「提示部、展開部、再現部」で構成される。提示部の中に第一主題があり、対比する性格の主題、副次(第二)主題がある。つまり、2つの対比の上にソナタは成り立っているということである。展開部の成熟が近代音楽をより一層均衡した音楽に仕上げたものになった。遠山一行氏は「展開というのは、主題のもっているいろいろな音楽的要素ー旋律の中に含まれる音程関係や和声、リズムなどーを利用して音楽を変容・発展させてゆくことで、そこでは、専門的な言葉で言うと主題労作(thematissche Arbeit)が重要な手段となる。それは、音楽をただの旋律のつながりだけでなく。もっと構築性、発展性、論理性のある造形物とするのに役立つだろう」と述べている(遠山一行)

ソナタは曲全体の中で、個(モチーフ)というものを大事にして、その個からどのような展開あるいは発想が生まれてくるか、発想の違い、辿る道は様々、時にせかされ、時に緩やかに歩みつつ、相違した個々の発想をどのように全体としてまとめられるかということが醍醐味だと思う。

演奏とは作曲家が書いた設計図(楽譜)を、どのような景色で描くか、そのイメージの広がりは果てしなく無限である。

Ⅴ-1. Part I:芸術学部と小学4年生との教育プログラム

プログラム構成:  (1) 子ども達による歓迎の歌 「野ばら」シューベルト(ドイツ語) (2) BerPhilからの自己紹介と楽器紹介      ウォーミングアップ:    ハイドン 弦楽四重奏曲 第63番 変ロ長調 「日の出」より (3) 活動「芸術で探検」      モーツァルト 弦楽四重奏曲      KV 156 in G major: Presto- Adagio- Menuettoより (4) 鑑賞&交流   BerPhilが作品からインスピレーションを得て、もう一度演奏 (5) 感謝の歌

モーツァルト/弦楽四重奏曲K156

Presto ト長調 3/8 ソナタ形式

Adagio ホ短調 4/4 二部形式

Tempo di Menuetto ト長調 3/4

この教育プログラム(芸術探検)で、BerPhilがモーツァルト/弦楽四重奏曲K156を演奏し、瞬時に小学4年生が、その音楽あるいは音を聴きとって自分が感じたことを描く作業である。まさに副題にもある「芸術探検」を意味するところの音楽と絵画の創作現場だ。ドローイングは出た音を瞬間的に描く作業もあれば、演奏者や作曲者がこんな思いで演奏しているのではないか、こんな思いで作曲したのではないかという作者の意図を探りながら描くこともあるであろう。すでに出た音を過去の事象として捉えてドローイングする生徒もいれば、これから、こんな音が期待できる、あるいは予想できるという未来の予想図として、描く生徒もいる。生徒が即興で描く創造性は計り知れないし、BerPhilが子供たちがどんな色でどんな線でどんな形の絵を描くのか、実に新鮮さとエキサイトな興味をもって子供たちと会話をしていたことが印象的だった。また、将来の子供たちへの、心の心象を大切にしているBerPhilの姿に感動した。

「芸術学部と小4年生の部」における教育チャレンジ(題名?)

玉川学園K12(行事担当 安倍 尚樹)

今年の教育プログラムに至る過程のなかで、初期の段階では、音を「聴かせていただく」ことから、「表現すること」「音楽を学ぶこと」をレッスンしていただくことが中心だった。

しかし、より相互に学ぶプログラムを目指し、2度目はあえて曲名をふせて、子供たちに演奏を聴かせ、クラス単位での美術表現を試みた。交流の中で子どもたちの発想や表現した色、線、形について、BerPhilは直接言葉を交わし、子どもの意図を汲み取る姿勢が印象的だった。3回目の交流では、ムーブメント(授業で行っている、音楽を感じての身体表現)のチームと、絵画表現とのチームに分けて、一1つの学年の児童(約120人名)に、交流のチャンスを企画した。

そして2017 年、今回の交流では、芸術学部の大学生を企画運営に参加させる教育プログラムとなった。上記のような約20年にわたる経緯と教育的意義を学生に共有してもらうために、芸術学部各学科の教授教員から推薦していただいた学生との面会を頻繁に行った。通常の音楽授業に参加して児童理解を深めてもらい、当日は児童と演奏者をつなぐ役目に少しでも参画してほしいとの願いからである。学生のスケジュールと、小学部の音楽授業のすり合わせは容易ではなかったが、個々の学生にそれぞれの特性を発揮してもらうためには、大切なプロセスであった。

いよいよ10月、BerPhilが演奏する曲が確定し、4年生の授業で、教育プログラムに向けての指導がはじまった。今回子供たちにつかませたい「学び」は「音楽の形式」である。文章や物語に「起承転結」があるように、音楽にも当然流れがある。それが「楽章」であり、「フレーズ」の展開である。近現代になって、他の芸術作品と同じように、それらの「区分」や「境目」という価値自体が変容していくが、小学生の子どもたちが作文を書く時には、基礎として「はじめ」「なか」「おわり」を学ぶし、私たち大人がプレゼンテーションをするときにもこの構造は意識している。今回演奏していただく作品はモーツアルトの初期の弦楽四重奏で3楽章形式である。子どもたちにはこの曲のことは秘密にしてある。3楽章形式で子どもに馴染みのある作品をピックアップし、事前授業の指導計画を練り上げた。

いわゆるクラシック音楽に代表されるヨーロッパ発信の西洋の楽譜は時間の経過とともに、紙面の左から右へと記録する。一方、アジアに位置する我が日本の伝統的な楽譜は日本語の文章のように縦に進む。このような記譜法の違いから、普段歌っている歌を中心に、楽譜のしくみや、楽章について事前に学んだ。ただし、あくまで当日の「本物の演奏」との「出会い」を大切にさせることに注力し、知識過剰にならないようにする。一方美術の時間には、小学部主任の青野教諭の指導のもと1メートル×10メートルの金の用紙に、「音を聴いて」「色や線で描く」為の授業とシミュレーショ ンが繰り返されていた。長い金地の用紙を広げて、双方向から書き進める。しかも、自分のスペースを確保しながらも、時に他者の線と交わり、影響しながら、ヨーロッパの楽譜同様に時間内にスペースに筆を走らせる。しかも保護者の参観のもと、全員にこの貴重なプログラムを味合わせたい。

当日の小学部ホールでは、演奏者の簡単な紹介の後、いよいよ描く段になり、子ども達の集中力はさらに高まった。若きモーツアルトの明るいプレストのテーマが奏でられた瞬間、さまざまな色の絵筆が、金色の用紙に走り出した。子ども達の目がかがやきはじめたこの瞬間に、心地よい興奮と少しの安堵の気持ちが入り混じったことを記憶している。3楽章まで約7分の演奏が終わると、BerPhilとともに、子ども達が表した線や表現をインタヴューしていく。「君の描いた力強い線はこんなかんじだっかな?」とヴィオラ奏者のマシュー氏がワンフレーズ弾いてくれる。子ども達の表情がさらに輝く。

日本の古典芸能「雅楽」や「歌舞伎」でも「序・破・急」の構成をもとしにしている、この「3」というバランスは、モーツアルトの場合にもやがて4楽章構成に発展していく。子供達の作文構成も「起承転結」へと学びをすすめる。私たちが目指す交流は、単に恵まれた機会を享受し堪能するにとどまらず、より子ども達が主体的に一緒に学び合う、インタラクティブな活動である。そのような意味でも、BerPhilも子供たちとの語らいをもっと求めている ように感じた。第2部において、芸術を学ぶ大学生が直接対話する機会を得たことは本当に意義深いことであり、これまでの経緯を生かしながら今回の企画をまとめあげた大谷准教授のご尽力には頭が下がる思いである。次回の教育プログラムにむけて、また新たな一歩を踏み出している

Ⅴ-2. Part Ⅱ:公演の部

第1部:BerPhilによる弦楽四重奏の演奏とお話し

プログラム構成:

○ハイドン/弦楽四重奏曲変ロ長調 Op.76-4/Hob.Ⅲ:78《日の出》

アレグロ コン スピリット 変ロ長調  4/4 ソナタ形式

アダージョ 変ホ長調 3/4  3部形式

メヌエット アレグロ 変ロ長調 3/4 メヌエット

アレグロ ノン トロッポ 変ロ長調  2/2 3部形式

○メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲第4番ホ短調 作品44-2

アレグロ・アッサイ・アッパショナート 4/4拍子 ホ短調 ソナタ形式

スケルツォ: アレグロ・ディ・モルト 3/4拍子 ホ長調 ソナタ形式

アンダンテ 4/4拍子 ト長調 ソナタ形式

プレスト・アジタート 3/4拍子 ホ短調 ソナタ形式

Ⅴ-3.Part Ⅱ:公演の部

第2部:玉川大学芸術学部の舞踊・玉川太鼓の公演

芸術学部学生による和太鼓「明音」の演奏と舞踊「じょんがら」

Ⅴ-4. Part Ⅲ:対話の部

「芸術家とは?」-- What does it mean to be an artist? --

引き続きMARBLEで、「芸術家とは ̶ What does it mean to be an artist?」という

問いをタイトルにした「対話の部」が行われました。これは玉川学園の児童、生徒、学生、そして教職員を対象としたプログラムで、ベルリン・フィルのメンバーと質疑を通して対話するプログラムです。世界トップレベルの演奏家に直接質問できるまたとない機会ということもあり、特に芸術学部の学生から多くの質問が寄せられました。「アーティストとして社会貢献するためには、学生のうちにどんなことをしておけばいいでしょうか?」という質問に「若いときは、仲間からも多くのことを学びました。現在はユース・オーケストラの指導や難民支援にも参加しています。そうしたさまざまな経験を通して、今も自分に何ができるのかということを考えていますね(レーミッシュ氏)」と話してくれました。また、「音楽とはご自身にとってどんなものでしょうか?」という質問には「言葉にするのはなかなか難しいですね。その人の経験や生き方も表われるので、色々なことを意味しています(ホイトリング氏)」「ただの音ではなく、文化であり芸術。音楽を通じて、言語や文化が違う人とも友だちになれるんです(オルロフスキー氏)」「音楽はエネルギーのようなもので、それを観客との間で行き来させることができます(ハンター氏)」「自分のために弾くときはセラピーみたいなもので、自分との対話の時間になっています。また、私はチェロを通して自分の中にあるものを解放するんです(レーミッシュ氏)」と一人ひとり答えてくれました。「音楽家になることを諦めなかった理由と、そうした気持ちを克服する方法はありますか?」という質問には「時には休憩も必要です。いろんなことをして、そこから触発されることもありますから(ホイトリング氏)」「何回も諦めかけましたが、自分の中の情熱が勝っていました(オルロフスキー氏)」と自分たちの経験からのアドバイスもしていました。(ネットより引用)

Ⅵ.成果と課題

(1)玉川大学・玉川学園の魅力を発信

事後アンケートの結果、今回のような玉川の取り組みを「高く評価する」は91%、「評価する」は8%と、98%が評価した(別紙「事後アンケート集計結果」参照)。コメントにも「玉川の教育方針が感じられる良いプログラムでした」「子どもたちが本物の演奏に触れられる機会を学校がつくっているということは素晴らしいと思いました」「小原國芳先生の意志を繋げ、玉川学園の発展を嬉しく思いました」という内容が多数見られ、「本物から学ぶ」ことを大切にしている玉川教育を発信することができたと言える。また、「全学園が協力しての企画も玉川でなくてはできないこと」というコメントから、K-12と大学との教育連携を発信することもできたと言える。「スライドによる紹介もこれまでのことがよくわかってとても良かったです」というコメントもいくつかあり、公演の部の切り替え時に映像を通して、これまでの成果も具体的に内外に示すこともできたと言える。更に、「初めて玉川学園を訪れましたが、立派なキャンパス、環境、立地の良さに驚きました。一般の枠も設けて下さったことに学園の懐の広さを感じました。また、御校の高い教育内容にとても感心致しました。子どもと一緒にオープンキャンパスなどに訪れてみたいなと思いました。」というコメントもあり、今回のようなイベントを一部公開することで、新しい受験生獲得に繋がることも示唆された。

(2)芸術と教育の可能性を学ぶ機会

公演の部についての評価も90%が「大変良かった」、9%が「良かった」と評価し、99%が評価した。「ベルリンフィルを聴きながら絵を描くというプログラムはすごいです」「世界で活躍する方を実際に肌で感じることができるとても貴重な体験で、心動かされる何かがありました。活躍する場は違えど、日々努力し、反省し、また行動することは教師にも通ずるところだと思います」「まさに百聞は一見にしかずといった感じであった。話を聞くのと実際に聴くのでは全く違うもので、是非周りの人たちにも本物の音楽に触れてもらいたい。」と言った学生のコメントに代表されるように、音楽や芸術が、子ども達の自由な表現や創造力を引き出せることを学ぶことができたと言える。

(3) 学ぶ意欲と愛校心の向上

ベルリン・フィルのメンバー達との直接交流は、学ぶ意欲と愛校心を高めることができたことは、「子どもにも大変恵まれた環境であることを話しました」「玉川の教育方針が感じられる良いプログラムでした。大変感謝しております。」という保護者のコメントや「自らの課題と向き合いそれを改善してチカラを身につけていきたいと思いました」といった学生のコメントからも読み取れる。また、TAMAGOスタッフをはじめ、切り替え映像、ポスター/チラシのデザイン、題字を学生が担当するなど、学部を超えて学生達が連携する機会を提供することで、学生間の繋がりもつくることができた。学生達の達成感は「ボランティアができてかつ公演の部にも参加することができて素晴らしい機会でした」といったコメントなどにも表れている。

今後への反映

早い段階の広報と発信方法の工夫 今回のようなイベントを通して、早い段階での広報やこれまでの実績や成果をわかりやすい形で示していくことが効果的であることが示唆されたので、今後のイベントでも玉川教育、玉川の国際教育を発信していけるよう、早い段階での広報と発信方法、事後のフォローアップなどを工夫していきたい。

TAMAGOスタッフの活用

日常業務のある教職員では動員人数に限界があるが、学生達が国際交流・教育を学ぶ場と位置付けたTAMAGOスタッフの活用は教職員・学生双方にとって良いシステムと言える。今年度は、90名近くの学生が登録しているが、学部の偏りが見られる。したがって、新入生にターゲットを絞って、早い段階でTAMAGOスタッフに登録してもらえるように工夫していくと良い。

K-12と大学の連携 今回のイベントを通して、内外にK-12と大学が連携している一貫教育を示すことができたので、今後も児童・生徒・学生にとって有意義なイベントなどでは、各部ができる範囲の協力をすることで、児童・生徒・学生の利益に反映していけるように連携していきたい。

会場運営の改善 「スタッフの方々もとても親切に応待して下さりました」というコメントもあったが、大勢のスタッフが会場にいたが、段取りやアナウンスが不十分で、一般客が困惑する場面があったことが事後アンケートや事務局へのメイルで明らかになった。したがって、当日の受付、誘導、会場の扉の開閉タイミングなどの詳細を共有し、効率よく観客を入れるノウハウを改善していく必要がある。次回以降、会場運営は、具体的な人員の配置、扉の開閉のタイミングの徹底、観客用の座席一覧の張り出しをするなど、改善していきたい。

K-12の参加形態の工夫 「多くの生徒が見られるようになると良い」「高等部の娘はこのようなイベントも知らず、見たかったと言っておりました。生徒達にもベルリンフィルのステキな音色と、大学生の誇らしい活動を見せてほしいです。」といったコメントが保護者から多く寄せられた。次回以降は早い段階で希望する生徒の参加について検討・調整できると良い。

活動成果の公表(予定)

*学外への公表のほか、学内の報告書等についても予定があれば記入してください。

(記録等は学術研究所までお届けください。)

(1) CIC記事「ベルリン・フィルとの教育交流、その告知ポスター制作を、芸術学部と教育学部の学生   が担当しました」玉川の教育, 2017年11月6日掲載    (2) CIC記事「 (3)「全人」2月号 p.4-8 (4) 公式サイトの更新 (5) フォトブック”Tamagawa-Berlin Philharmonic Members Education Program 2017” (2017年12月)

謝辞

最後にこの教育プログラムの多大な支援を下さった松本博文氏(国際教育センター長)、ジョナサン・リー氏(副センター長)、小山正氏(芸術学部長)、渡瀬恵一氏(K12部長)、藤枝由美子氏(国際教育推進委員),後藤 健氏(教育部長k-4担当)、片野 徹氏(事務次長)、他、多くの教職員には心より感謝申し上げたい。また、このプログラムを遂行するにあたり、初期段階から終了後の振り返りまで、細やかなご配慮を下さった国際教育センター大谷千恵副センター長には本当に頭が下がる。玉川—ベリリンフィルとの芸術を通して、音楽と美術との融合性や、対話では、人間的な触れ合いができた。親交を温められる良い機会になったことは大変意義深く、今後も芸術分野では友好的な親交を深めるべく使命としたい。

時刻スケジュール時間
9:00ホテル出発
10:00頃玉川到着、玉川関係者との挨拶調整
10:30 -11:15Part I: 芸術学部生と小学4年生の教育プログラム     芸術学部と玉川学園4年生の部     会場:低学年校舎 演奏曲:モーツァルト メンデルスゾーンより45分 (Max 50分)
11:20-11:30移動10分
11:30-12:40ランチおよび関係構築    会場:TAMAGOラウンジ70分
12:40-移動&楽屋入り
(開場:12:30) 13:00-14:20Part II: 公演の部     会場:University Concert Hall 2016 Marble 挨拶&BerPhilの紹介 第1部:弦楽四重奏の演奏とお話し      J. ハイドン 弦楽四重奏曲第63番 変ロ長調 作品76-4《日の出》 F.メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第4番 ホ短調 作品44-2      第2部:玉川大学芸術学部の舞踊・玉川太鼓の公演 <切り替え&過去の映像> (5分) 玉川太鼓と舞踊の公演(20分) 閉会の挨拶(2分)80分
14:20-14:40出演者との記念撮影&交流など20分
14:40-15:00休憩20分
15:00-15:40Part III:対話の部 「芸術家とは? -What does it mean to be an artist mean? 」  会場:University Concert Hall 2016 Marble 芸術家とは? What does it mean to be an artist? 対象:玉川大学および玉川学園の児童・生徒・学生・教員40分
16:00BerPhil離園BerPhil離園
17:00頃ホテル到着ホテル到着
18:30-21:00頃反省会反省会