常石セブ造船問題の背景

 

・ 世界最大の造船国日本だが、日本国内での解体事業はほとんどなし

  日本は現在世界最大の造船国であり、世界の4割強の船を建造している。第二位の韓国が20%台であることを考えると、その規模の大きさはきわだっている。
  しかし、その一方で、日本は船を自分たちのところでほとんど解体していない。船の建造が日本、韓国、アメリカ合衆国といった先進工業国等であるとは対照的に、船の解体は、現在、中国、インド、パキスタン等といったアジアの一人当たり所得がまだ高くない開発途上国が中心である。
  日本は、現在中古となった船舶の大部分を途上国に売り付け、その解体とその後の処理にかかる費用を途上国に負担させている。
  その理由は、解体作業の場所の確保の問題、人件費の問題などあげられられているが、解体作業に関連する環境対策のコストの問題も無視できないと思われる。

船の造船、解体についてのグラフ

・ 廃棄物についての最近の考え方と廃船処理の問題

  有価物であっても、いったん使用した後その使用権限が他人へと移っていくものについては、リサイクルを含む廃棄物法制の中で、廃棄物同様に考えるべきだとする最近の国際的潮流(その典型はドイツの循環経済法である)からすれば、中古船舶についても、広い意味での廃棄物法制の中でとらえられるべきである。
  また、近時強調されている物の製造者の廃棄物処理についての責任(日弁連では、廃棄物を減らすように設計する責任から、リサイクルしやすいようにする責任、廃棄物の引取義務等多様な形で製造者=事業者が廃棄物処理について責任を負うべきことを提言している)(前述のドイツの循環経済法も同様の理念にたち条文でもそれをうたっている)からすれば、船舶製造業者の廃船についての責任も、考えられるべきである。
  さらに、バーゼル条約(有害廃棄物の越境移動についての条約)とその後の条約締結国会議での決議によって、有害廃棄物の先進工業国から途上国への越境移動は禁止されている。
  これからすれば、船の建造者である日本の造船会社も、廃船処理について一定の責任を負うべきではないかと考えられる。