第3 議定書案への日弁連の提言

 

1 2010年までに20%を削減することを明示すべきである。

既述のとおり、1990年度に策定された日本の「地球温暖化防止行動計画」にもとづいてこれまでに実行されてきた施策では、2000年時点で1990年レベルにもどすことも事実上不可能な現状である。

しかし、ヨーロッパでは同じ先進国であるドイツは2005年までに1990年レベルの10%を削減し、2010年までに15〜20%削減するとの目標を揚げ、EU全体では2010年に15%という数字を示した。

日本は、現時点では、前記のとおり2000年までに1990年レベルに安定させるとの目標すら達成できないような現状であるが、これは未だ本気で削減する気になっていないことに根本の原因がある。

日本ではこれまでにSOx やNOx の総量規制において、当初は到底不可能だと思われていた目標を達成したという実績がある。

また、産業部門において、二度のオイルショックを契機とした省エネ対策によって、約10年間に22%という消費エネルギー削減実績をあげた。

既に述べたIPCCの報告書にいう21世紀末に排出量の60%を削減するという最終目標からすれば、AOSISが提案するように2005年時点までに20%を削減することが望ましいが、あと7年しかない現時点では、その実行性に無理があるように思われる。

後述のとおり、各部門における削減対策を確実に推し進めることによって、2010年に20%を削減することは十分可能である。

 

2 国家プランの詳細化と1年ごとの報告の義務化

ベルリンマンデートでは、付属書I国の約束の強化として、条約第4条第2項a,bに従って、自国のとる対策や措置を詳細化することとしている。

条約第4条第2項bにもとづき、日本は1994年9月に「気候変動枠組条約に基づく日本国報告書」を条約事務局に提出した。

条約事務局の審査は被審査国の行っている対策努力の当否を審査するものではなく、国別報告書の透明性や正確さを審査するものであるはされているが、その審査結果では、ア 我が国の地球温暖化対策がエネルギーの安定的確保等の多目的を併せ持つ政策となっていること イ 政策がコンセンサスアプローチで進められていること などを我が国の特徴として記述した上、過去20年間における産業部門エネルギー利用効率の改善を高く評価している。また、温室効果ガス目録に関する情報については、全般的には必要な情報を満たしているが、いくつかの点について不備があり、今後の改善が期待される旨言及している。さらに、政策・措置については、各省庁の施策が個々に実施されているよに見受けられるほか、改善が今後に期待される事項として、個々の政策・措置について定量的な効果が把握されていないこと、温室効果ガスの排出量の予測を行うために用いられた情報が十分に公開されていないことなどが指摘されている。

今後の国家プランには上記の日本の報告書のような欠陥を克服し、且つ今回議定書に揚げられている数量を達成するための定量的効果が詳細に記載される必要がある。

そして、条約では「定期的」に報告となっているが、効果的な点検を可能にするには、少なくとも毎年その提出が義務づけられるべきである。

 

3 審査機関の設置

これまでの国際条約、特に環境に関するものについては、仮に基準や措置が定められていても、その遵守を確保するための執行、取締り、制裁の規定のないことが多かった。履行確保の方法としては、報告、査察調査、情報公開、NGOの関与、説得、資金援助、技術援助、資格剥奪、貿易制裁などが考えられる。

今回の議定書で定量的数値目標が設定され、その達成年度が定められた場合には、これまでとは違って、議定書締結国、特に先進国における目標達成状況を点検する機関を設置する必要がある。

この機関は、下記の権限が与えられるべきである。

  ア 国家プランの精査とそれについての意見、勧告

  イ 履行状況のレヴューと指導、勧告、履行命令

  ウ 制裁措置の決定

  エ 立入り調査を含む調査権

 

4.NGOの役割の強化

NGOは締約国の国家プランに対し、カウンターレポートを審査機関に提出することができる権利を明記すべきである。

さらに、NGOには、前記審査機関に対する、調査申立権や措置請求権が与えられるなど、明確な参加権が与えられるべきである。