パチパチの
ニューヨーク便り
 


HEDWIG AND THE ANGRY INCHES    98.11.25

"Hedwig and the Angry Inches"というオフ・ブロードウエイの劇を見に行きました。場所は、ウエスト・ビレッジにあるJane Street Theater (113 JANE STREET)。この劇場は、Revierview Hotelというハドソン川に面したホテルの中にあります。このホテルは、もともと船員を相手に100年くらい前に開業したそうで、今もホテルとして営業してるらしい。ホテルのBall Roomを改造して作った劇場は、なんだかアングラぽい雰囲気があって始まる前からどきどき。

舞台には幕がなくて、ロック・バンドの楽器が、すぐ演奏できるように用意されてます。皮ジャンやTシャツを着た、ハード・ロッカーって感じの男たちが舞台にあがり、楽器を手にとって演奏を始める。しばらくすると、ホットパンツにフリンジのついたカーボーイ・ブーツを履き、マントを羽織ったHedwigが登場して踊りながら歌い始める。で、その後、Hedwigが自分の人生を歌を交えて語るという構成になってます。以下はそのあらすじです。

Hedwigは,東ベルリンで生まれ。お父さんはアメリカ兵で、どっかに行ってしまい、お母さんと二人暮らし。26歳のある日、Hedwigは、アメリカから来た男性に「女の子みたいだ」とすごく気に入られる。その人はHedwigの家に遊びにきて、Hedwigをアメリカに連れていってくれるというのだが、そのためには結婚しなければならない。Hedwigのお母さんが、「私のパスポートを使って、かつらをかぶって行けばいいわ」と言うんだけど、おじさんは、「身体検査があるから、性転換しなきゃだめだ」という。そこでHedwigは性転換して、二人でアメリカに行くんだけど、結局離婚する。

それからHedwigはいろいろな職業を転々とした後、カンサスでロックバンドを結成する。そのバンドがthe Angree Inchesなわけ。Hedwigは,ツアーで、ユーゴスラビア(だったと思う)に行ったとき、そこで一人のドラアグ・クイーンに「一緒に連れていって欲しい」と頼まれる。Hedwigは、そのドラアグ・クイーンが二度とかつらをかぶらないことを条件に結婚する。(ここで観客に、ステージにいるひげをはやして皮ジャンを来たAngry Inchesのメンバーの一人が、その元ドラアグ・クイーンだと分かる。)そういういきさつがあるので二人は仲が悪い。

そのうちHedwigのところにトミーという16歳の男の子が転がり込んでくる。Hedwigとトミーはねんごろになるんだけど、そのうちトミーはスターになる。舞台では、Hedwig達がいる部屋の窓を開けると、川の向こうで彼が大コンサートをしてる様子が見えるという設定になっている。(実際には、舞台袖にある扉をあけるとトミーの声とコンサートの歓声が聞こえてくるだけで、客席からは何もみえない)。

Hedwigはトミーが、自分の事を何か言ってくれるかも、と期待して、ときどき窓を開けるんだけど、彼は何も言わないので、しまいに怒り出す。ところがトミーは最後の最後にHedwigのことを語りだす。これを聞いたHedwigは、歌いながら服を脱いでいき、倒れる。しばらくして立ち上がったときは、上半身裸で、かつらもとっていて、デビット・ボウイというかグラム・ロックのお化粧した男性ボーカリストみたいな姿になっている。そしてこんどはトミーとして、Hedwigに捧げる歌を歌う。いつの間にか舞台を降りていたHedwigの夫で元ドラアグ・クイーンのthe Angry Inchesのひげのメンバーが、今度はドレス姿で現われる。(この人は実は女の人)

分かった?なんかパフォーマンスを文章で説明するのってむずかしい。

"Hedwig and the Angree Inches"は人気があって、二回観にいったんだけどどっちもほとんど満員だった。お客さんは老若男女いろいろ。お客さんの反応も、男が女のかっこしてるのが面白いってレベルじゃなくて、パフォーマンスとして楽しんで見てる、って感じ。

主役、脚本はJohn Cameron MItchellという人で、パンフレットに載ってる写真はとってもハンサム。ブロードウエイにも出た事があるし、テレビにもレギュラー出演してた、とも書いてありました。一緒に観にいったアメリカ人の友達によると、この人は、ニューヨークのドラアグのイベント、ウイッグストックを題材にしたドキュメンタリー映画「ウイッグストック」の中で、ジョニー・ミッチェルのドラアグをしてたそうです。この友達は、「普通、ドラアグっていうとダイアナ・ロスとかなのに、すっぴんでフォークっぽい歌を歌うジョニー・ミッチェルをやるなんてすごい」、って感心してた。

Hedwigは、Obie AwardとOuter Critics Circle Award for Outstanding Off-Broadway Musiacalを受賞しています。ちなみにHedwigのweb siteもある。(www.hedwig.com)いつまであるのかは分からないけど、見てみてね。

帰りには、この劇場のそばにあるフローランというレストランで食事をしました。ここはぜんぜん高級な感じじゃないんだけど、かっこいい店として有名(らしい)。ウエイターやウエイトレスもおしゃれ・・・というか不思議な雰囲気の人が多いし。この付近はミート・マーケットとかミート・パッケージ・ディスクリクトと言われてます。

Hedwigは、「ソーホーに倣ってミーパと呼ぼうかしらね」なんていって観客に受けてた。夜はひとけがないんだけど、おしゃれなエリアってことになってる。フローランのとなりもヘルという「ラウンジ」だし。

 


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