パチパチの
ニューヨーク便り
 


SWAN LAKE    98.11.21

"SWAN LAKE"を見てきました。

もともとロンドンで上演されていたんだけど、ブロードウエイに進出してきたバレエです。白鳥が全部男の「白鳥の湖」なの。音楽はチャイコフスキーのものを使ってますが、ストーリーや振り付けは新しく作られてます。なんかプロデューサーのインタビューとか読むと、「ゲイだけでなく、ストレートの人も共感できる愛の物語なのです。」とか言ってたので、大真面目なもののように思っていたんだけど、実はかなりキャンプなものなのでした。というか、ちゃんとしたバレエ・ダンサーと舞台装置と衣装でやってるんだけど、センスがゲイバーの出し物みたいなのよ。(これは悪口じゃないよ。)「あなた、どっから見てもゲイよ。」って感じ。うれしいけど。

全体の話は、ファッション、風俗等から察するに、50年代から現在までの間のいつかみたいな時代設定になっている。簡単にいうと「現代」なの。たとえば、主人公の王子のお母さんである女王のファッションは、大き目のハンドバックがエリザベス女王(2世)ぽい。

それでは、ストーリーを紹介します。

女王の宮廷

ヨーロッパのどっかにある架空の国が舞台。王子様は、お母さんの女王と一緒に公式行事に追われる毎日。お父さんはいないみたい。この辺になんとなくイギリスぽいものを感じる。(イギリス王室って、エディンバラ公はいてもなんか父親不在っぽいもんね。)で、王子は自分に近づいてきた、バービー人形みたいな女の子と交際を初めて、女王ともどもロイヤル・ボックスで一緒にバレエを観たりするんだけど、品がないので、女王はこの女の子が気に入らず、別れさせられる。

場末のバー

ふてくされた王子様は部屋で飲んだくれているところを女王に見つかり、怒られる。王子は、お城を抜け出し、場末のバーに行く。(そのバーの名前はSWANK)。バーの中では、いろいろな時代のスタイルのディスコ・キング、ディスコ・クイーン達が踊りまくっている。踊りは、ソウル・トレインみたいだったりするんだけど、音楽はやっぱりチャイコフスキーなの。王子様は、そこで、別れさせられた女の子を見つけるんだけど、女王の秘書に因果を含められている彼女はつれない返事。結局、王子様はバーの男達にぼこぼこにされて、店を出る。

夜の公園

そして、王子様はとぼとぼ夜の公園にやってくるんだけど、そこで、白鳥達が踊る幻覚(?)を見る。白鳥達はみんな男で、上半身裸。ブトーみたいな白塗りじゃないんだけど、ちょっと白粉をはたいたような感じになってる。下には白い羽がいっぱいついた半ズボンみたいのを履いてる。おでこには黒い逆三角形が描いてあって、多分「くちばし」のつもりなんだと思う。最初は白鳥達におびえていた王子様は、次第に白鳥達に魅せられ、白鳥のリーダーみたいなのとパドゥ・トゥを踊る。白鳥達はいなくなるが王子様は幸せな気持になり、白鳥にえさをやりに来たおばさんにキスをして公園を立ち去る。

王室の舞踏会

王室の舞踏会っていうより、ハリウッドのパーティーって感じ。バレリーナ達のドレスは、サックス・フィフス・アベニューのショーウインドウに飾ってあるような今風のものだし。そこへ、黒の革のパンツを履いて鞭をもった男が乱入。(この人は、白鳥のリーダーと同じダンサーなんだけど、これは別の人物を演じてるのか、それとも、人間の姿になった白鳥のリーダーなのかよくわからなかった。)革の男はつぎつぎと女たちを口説き、プレイボーイぶりを発揮。ついには女王にまで近づく。女王もまんざらでもないようす。それをみた王子はいらいら。王子様と革パンツの男は喧嘩になる。ところがそのうち二人はなんだかお互いに気があるみたいな感じになってくる。でも、王子様の態度がはっきりしないので、革の男は女王の方を口説きにいってしまう。そんな王子をみんなは取り囲んでわらいものにする。王子は革の男と女王を引き離そうとして、女王にひっぱたかれる。怒った王子は女王に拳銃を向ける。すると、革の男が拳銃を奪って反対に王子に向かって発砲。ところが王子の別れたガール・フレンド(なぜか舞踏会に来ている)が王子をかばって死んでしまう。

病室

王子は病院に入っている。女王が見舞いにくるけど、やっぱり王子にはつきはなした態度をとってしまう。

王子の寝室

王子が寝ていると、ベットの下から、白鳥達が現われ、王子を悩ませる。白鳥のリーダーは、王子をかばう。だけど他の白鳥達にじゃまされて離ればれになる。白鳥達が去り、王子がベットの上でぐったりしている。女王がやってきて、王子を揺り動かすが、王子を目を覚まさない。女王は王子が死んだことに気づき、泣きながら王子を抱きしめる。しかし、女王の頭上には、白鳥に抱きかかえられた王子の姿が・・・。

前半はぐっときたんだけど、二幕目の途中ー王子が病院にいれらるところからは、ちょっとどうかと思った。とにかくストーリーがよく分からない。台詞はないから言葉の問題ではないと思う。(ニューヨークのゲイのフリー・ペーパーに載たレビューにも筋によく分からないところがあるって書いてあった。

特に、王子がゲイなのかそうじゃないのか、はっきりしない。(二人が踊ってるときの感情表現は明らかにゲイなんだけど。)王子のガール・フレンドの存在も話を混乱させてる。このガール・フレンドの登場は、ヘテロの人も感情移入できるように採られた「措置」なのかなー。

それに、王子は、女王を殺そうとして病院にいれられるし、白鳥は王子の幻覚みたいだし、結局、ホモほ病気ってことなの?。とにかく、死んじゃってあの世で結ばれるなんて嫌だよね。踊りや衣装や装置のキャンプな感じは好きなんだけど。特に女性ダンサーのための振り付けと衣装はゲイ好みだと思う。ただ、あの白鳥のコスチュームはちょっと・・・。(でも、衣装の人も、「えー、白鳥?白鳥ねえ。」と困ったにちがいない。)

会場の雰囲気は、ストレートとゲイが自然にミックスしててとってもよかった。ゲイのお客さんのファッションも、チェルシー的というか、過剰に男ぶったゲイだけにアピールするファッションじゃなくて(それはそれで好きだけど)、お洒落なジャケットやセーターを着てて、もうちょっと知的な感じだった。アンダー・グラウンドじゃないゲイの姿がある、って感じ。まあ、「劇場に来てるんだから、常識でしょ」、とか、「ニューヨークだからそんなのありふれた光景だ」って意見もあるでしょうけど。

東京でも、ストレートの人もいっぱい来るようなゲイねたのお芝居とか映画に行くときは、2丁目的な体育会系ファッション(いわゆるニチョカジ)じゃなく、もうすこしさりげないおしゃれして、すてきなゲイの存在(?)を彼らにアピールするのがいいかも。あー、タックスノットのお客さんには、そういう感じの人が多いような気もする。じゃ、これからは、これを「3丁目スタイル」と呼ぼう。3丁目には伊勢丹もあるしね。


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