パチパチの
ニューヨーク便り
 


MISS SAIGON    98.11.20

ミス・サイゴンを見た。なんか意味ないって感じ。

アメリカ人の友達が前に「ブロードウエイのミュージカルはほとんど全部意味ないよ」、って言ったけど、ミス・サイゴンについてはほんとにそう。もう、ベトナム人は女は売春婦で、男はずるいか自分勝手で権力欲のどっちか。アメリカ人はみんないい人。

ベトナム人役のショーガール達がくにゃくにゃ踊ってるの見るのも、いやでいやでたまんない。これがエンターテイメントとして成立してるんだから腹が立つ。あのベトナム人の女の人はなんで死んじゃうわけ? あのアメリカ人の男はどうゆう了見?

そもそもあの男は、こどもがいなきゃベトナムにはもどってこなかったわけでしょ。そんな男のことで死ぬなんてひどすぎる。歌も踊りもうまいけど、そんなのあたりまでしょ、この辺じゃ。半額券でみても40ドルもした。いらいら。

次の日、アメリカ人の知り合いにこの話をした。彼は、24歳位で、日本に住んだことがあって日本語が話せる。おまけに彼女が中国人というアジア通(?)。彼は、ミス・サイゴンの舞台を見てもいないのに、私が「ミス・サイゴンは偏見とアジア人に対するステレオ・タイプに満ちている。」というと、「そんなことはない」っていうんだよね。いわく、ミスサイゴンを見た彼の周りの人たちは誰もそんなこといってないからだって。笑うでしょ。

さらに私が、「偏見に満ちた内容だってことでアメリカのアジア系の団体もミス・サイゴンに抗議したんだよ。新聞や雑誌で読んだ。」というと、彼は、「ベトナム人役に白人が起用されたこと以外に、アジア系アメリカ人がミス・サイゴンに抗議したなんて話は聞いたこともない。あんたのでっち上げでしょ」と言った。

劇についての感想なら、人それぞれだけど、アジア系アメリカ人がミス・サイゴンに抗議したって話を「でっち上げ」とは何だ、とむちゃくちゃ頭にきてたら、自分の部屋に日本からもってきた村上由実子「アジア系アメリカ人」(中公新書)という本があるのを思い出した。ミス・サイゴンのことについて何か書いてあるかも、って思って見てみると、アメリカのアジア系団体によるミス・サイゴンに対する抗議についての記述があった(91ー92ページ)。

その夜、他のアメリカ人の友達(僕に「ブロードウエイのミュージカルはほとんど全部意味ないよ」と言った人)から電話が来たので、「ミス・サイゴン見た?」って聞いてみた。すると意外なことに「見た見た。二回見た。すごく好き。泣いちゃった。」と言う。「えー、誰に感情移入するわけ?」って聞くと、「あの自殺しちゃうベトナム人の女の人。」と言う。僕が「アメリカのアジア系の団体はミス・サイゴンに抗議してたんだよ」って言うと、「そうなの?知らなかった。」と言う。

次の日、さらに別のアメリカ人の友達に聞いてみると、やはり抗議行動については知らないかったそうだ。そっか、そういう抗議行動があったのを知らない人って結構いるんだ、と思った。

でも「知らなかった」、っていうのはいいけど、「でっち上げ」と言うのは許せない、と思って、「アジア系アメリカ人}からのコピーに該当個所のアンダーラインも引いて、でっち上げ呼ばわりした知り合いのメールボックスに入れといた。

でも、これがブロードウエイのすべてじゃないと思う。もっと他にあるはず。音楽、踊り、舞台装置、衣装のすべてが夢のような作品が見たいなー。ということで、これからは遅れ馳せながらミュージカルを見るつもりです。


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