「二丁目からウロコ」より


イントロダクション

1995年9月

 

  この本を一冊を読めば新宿二丁目のことは全て分かる!なんてことは、まぁ当然だけど、あり得ない。
 新宿二丁目はそんなに単純な街じゃない。大げさに言えば、十人が二丁目に関われば十通りの二丁目像ができあがるということだ。
 この本に書かれているのは、二丁目ととっても良い関係を持てて、二丁目から人生における大切なものをたくさん貰えた人間が見た二丁目像だ。
 だから、二丁目に行ったことのある人の中には、自分の思っている二丁目とずいぶん違うなと感じる場合もあると思う。

 要するに、二丁目はその人の見方次第でずいぶん違った姿を現す街なのだ。それは、ある意味で、鏡の役目も果してくれる。だからみんな一度は二丁目にやってきて自分なりの二丁目を見てほしい。(特にゲイとかレズビアンの人たちには!)それが僕の一番言いたいことだ。
 だけど、今世間に流れている二丁目のイメージはそんなに肯定的なものではない。それも二丁目をよく知らない人たちの頭の中で作り上げられたイメージがほとんどだ。
 こんなイメージに縛られた先入観を持たされてしまえば、この街を本当に必要としている人だって来てみようという気さえ起らない。

 それに、なんとかたどり着いたとしても、そういう先入観から自由でない状態でこの街を見ると、植え付けられたイメージ通りにしか見えない可能性も大きい。
 僕がこの本を書こうと思ったのは、世間に流れているイメージに縛られてこの街を毛嫌いしている人に、へぇそんな部分もあるんだと、ちょっと視点を変えて見直して貰えるようにしたかったからだし、何度か遊びに来ているものの二丁目に対する嫌悪感がぬぐえない人に、あぁそうか、そんな風に考えればここはけっこういい街じゃないかと考え直して貰えるチャンスを提供したかったからだ。

 そんなワケで、ここには観光ガイドのように、どこそこに行けばこんなに面白いものが見られるとか、こういうことが起ったらこう対処しろとかいう情報は、全くと言っていいほど書かれていない。(そういうことは自分の目と足とお金を使って、自分で体験してほしいのだ。だって、それこそが二丁目の醍醐味というものなんだから)

 ここには、二丁目を愛してる一人の人間が二丁目をどう見てきたか、どうして愛せるようになったのか、そして二丁目にやってくる人々とその行動をどうとらえているかが綴ってある。   
 もしこの本が、あなたの二丁目に対するイメージを少しでもポジティブな方向に動かせたら、僕は実に本望です。


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