別冊宝島「ゲイのおもちゃ箱」より
1992年12月発売


ゲイの老後について

 

 ゲイと老後。これほどゾッとする組み合せってあるかしら。お袋も言った。
「あなた、若いうちはそれでいいかも知れないけれど、年取ったらどうするの? 面倒見てくれる家族もなくて悲惨よ。」
「いいの。その時は野垂れ死にしてやる」
 と強がってはみたものの、頭の中では寝たきりのコオロギである僕が天井を見つめている。

 確かに、このオドシは良く効く。このオドシで、親にカミングアウトしたようなゲイでさえ結婚を考える。終り良ければ全て良しって言うからなぁ…。

 ちょ、ちょっと待て! 

 逆に、現実はそんなに甘くなぁぁい。寝たきりになった時の保障に子供を当てにするなぞ、今時ストレートだって考えやしない。ゲイとかストレートとか関わらず、基本的に老後は自分で面倒見なくちゃならない悲しい福祉大国日本の現実。

 条件は同じとなるとゲイは途端に有利になるぞ。

 ゲイにとって家事は女の仕事なんて発想ないから(あんたあるなら、すぐ改めなさい。ゲイの風上にもおけない)、奥さんに先立たれた惨めなオッチャン横目に、お掃除のゆき届いたお部屋で栄養バランスのいい食事を自炊しているのだ。ゲイは趣味だって豊富だからゲートボールばっかに出てないぞ。今日はアラビア語習って、明日はフラダンスだ。(ジジィがフラ踊って何が悪い!)

 家族がない分大事にしてきた友達がたくさん居るから淋しくないぞ。なぁんだ。ゲイの老後は明るぅい!

 人生最後の何年かのために、人生棒に振るなんてほうがよっぽど悲しい。今やりたいことをやって、今を充実させて年を重ねていくしか、いい人生なんてありえない。とにかく心配という人は子育てしない分、貯蓄に励むというのもいいだろう。基本的に一人で老後を迎える覚悟しておけば、何が起こるかはある程度想定できるから準備もしておける。困った時に助け合える友達を持つことも大事だと思う。

 老後なんて惨めだと思えば、いくらでも惨めになる。実際のところ、老後を生きている人なんていない。常に人が生きるのは、今なんだから。

 


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