別冊宝島「ゲイの学園天国」より
1993年12月発売


ゲイの言語表現

 

 ゲイはもともと、自分の重要なある部分をいつも隠しておかなくてはならない状況に置かれてきたので、潜在的にいつも何か表現しきれていないという感覚を持っている人が多いようです。そういう人達はひとたび自己表現の場が与えられると留まるところを知らず、過剰なまでの表現に突っ走る傾向があります。その傾向は、最も日常的な表現の場である言語表現においても顕著に見られ、恐い物なしのいわゆるおネェさん二人が丁々発止とやりあっているのを聞けば、その饒舌さに恐怖感を覚えることさえあります。その時に使われる言葉は間違いなく「おネェ言葉」です。

 ゲイの全てが「おネェ言葉」を使うわけではないのはもちろんです。しかし、ゲイの言語表現を考える時、これは避けては通れない重要な要素です。「男のくせに女のように話す滑稽な言葉」と軽蔑されがちですが、日本語の表現を豊かにしている一側面でもあるのです。

 この「女のような言葉」は、決して女性の言葉ではなく、紛れもなくゲイの言葉です。自らの女性性を完全に受け入れた(開き直ったとも言うワ!)ゲイによって使われてきた言葉であり、どのような評価をするかは別にしても、ゲイの作り出してきた文化であることは否定できないでしょう。

 多くのゲイにさえ毛嫌いされるこのおネェ言葉は、一度正しく評価されてしかるべきだと思います。この講義では、その「おネェ言葉」を中心に、外専と言われる人達の話す英語とおネェ言葉のミックスした独特の言葉や、ゲイの聴覚障害者の使う手話などについて、5人の講師の方にお話を伺うことにします。

 おネェ言葉って、使う時と場所さえ心得ていれば、これほど強力な武器はありませんことよ!

 


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