別冊宝島「ゲイの学園天国」より
1993年12月発売


  イントロダクション



 ノンケの人たちには、学校があります。すべての人をノンケに育てようとする学校です。ゲイの人たちは、その学校の中で、いつも自分でないものになることを強制されています。リッパなゲイに育てと励ましてくれるゲイの学校があったら、世の中もっと楽しくなるのに…。

 この「ゲイの学園天国」は、そんな空想をヒントにして生まれました。

 内容は前回同様、それぞれのゲイの人に面白がっているものを書いていただき、それをすべて講義という設定にして構成しました。各講義の扉には、その講義に関する試験問題も用意してあります。どうか全問正解を目指して挑戦してみてください。(言っとくけど難しいわよ!)

 というわけで、この本は学校です。当然、基本理念があります。それは、この学校に参加するすべての人に、ありのままの自分を受け入れ、ゲイであるということにリラックスできるようになってもらうこと。またその上で、自分の望む生活を手に入れるために、具体的な行動が
とれる人間になってもらうことです。(ウフ、大風呂敷!)

 10年前に比べたら、ゲイに関する情報量は飛躍的に増えました。これから問題にされるべきは、その「質」です。そして、それはもちろん僕たちゲイにとっての「質」です。

 ゲイに興味を持つ人たちの最大関心事は、ゲイが何を求めているかではなく、ゲイというイメージがもたらす「意味」です。長い間、無視され続けてきたゲイは、突然表舞台に引っ張り出され、ノンケの男女関係が陥った閉塞状況からの逃避先や、突破口としての文学的意味を勝手に担わされてしまっているのです。(ホントにアンタたちっていつも勝手よ!)

 本校では、ノンケに押し付けられた期待とは関係なく、シンプルに、ゲイであることを隠さずに、自分の望む形の幸せを追求できる発想を育てていきたいと思っています。

 幸せの形は人によって様々ですが、それを追求する時に忘れて欲しくないのがゲイテイスト
です。何がゲイテイストなのかは、それが非常に感覚的なことなので、伝えるのは容易ではありません。例えば、この本が端から端まで学校という形式をとっているのもゲイテイストですし、付録としてゲイバー合わせが付いているのもゲイテイストです。できるだけゲイテイストは出したつもりですので、感覚的に掴んで欲しいと思います。

 ゲイテイストについて考えるときのキーワードは「キャンプな感覚」です。本文にもキャンプという言葉が何回も登場しますが、キャンプとは、長い間抑圧を受けてきたゲイが、押し付けられてきた価値観を逆手にとって、その価値を逆転させ、笑い飛ばし楽しんでしまう感覚のことです。内容より形式を、全体より細部を、現実より夢を重視し、それに徹底的にこだわること。女子供のものと馬鹿にされてきたものを、至高のものとして崇め奉ること。いずれは博物館に入ってしまうであろうこのキャンプな感覚を、ゲイが創り出してきた文化遺産として大切にしていきたいというのも、本校の創立意図なのです。

 心優しきゲイのカップルが、子供を育てながら漁師をしていこうと決心する。しかし、その時作る大漁旗は、人魚姿のディヴァインが魚を喰わえているデザインだ。こんな事ができるゲイをたくさん育てたいのです。

 さて、始業を告げる鐘が鳴っています。楽しい講義を始めることにしましょう! 


Taq's Writings MENUに戻る