2丁目の上のタンコブ日記


97.04.23 水

 叔母と一緒に紀伊国屋サザンシアターでやっている俳優座公演「門−わが愛」を見に行く。

 加藤剛の絵に描いたような新劇セリフ回しに唖然とする。つまらなくはないが、かと言って面白いわけでもない。「淡々と」してると言えば聞こえはいいが、メリハリがないとも言える。夏目漱石先生の講義でも聞いているような感じ。
 ま、若い人はおよそ興味をしめさないであろう芝居であった。

 芝居が終わったら叔母と食事をする予定だったので公演前には何も食べなかったのだが、それが災いして、観劇中におなかが鳴って仕方がなかった。こんなこと初めての経験だったのだが、自分でもビックリするくらいの大きな音がするのできまりが悪いったらなかった。
 加藤剛の思い入れたっぷりの「シ ョ パ ン だ ね ぇ」のセリフにかぶせるように僕のおなかがキュウルルルウグルグウとか大きな音で鳴るのだから、なんだか嫌がらせに来たような感じ。

 隣の叔母がいつ取り出したのか、飴をくれた。遭難して食べるものがなくひもじい思いをしていたら、ポケットからあめ玉が出てきたように嬉しかった。
 観劇やコンサートの前には軽く食事はしておいた方がいいですね。

 六本木のキャンティでお食事。おいしかったぁ! 空腹は最高の調味料とは、これなのね。

97.04.24 木
 
 いよいよ今日から禁煙プログラム「ライフ・サイン」の第2段階に入る。起床してからスイッチを入れると「25days to go」という表示と、禁煙マークの隣に「Time to Next Smoke 0:00:04」の数字が表示されている。
 これは完全に禁煙するまでに25日、タバコを吸えるまで4分待たなければならないという意味。

 4分経つと電子音が聞こえ、タバコのマークが点滅する。では、まず1本吸って、ボタンを押すと禁煙マークとともに「0:0:34」が表示される。あら、次のタバコまで34分待つのね。

 今日はだいたいこのペースでのインターバルをおいての喫煙になるようだ。

 弦ちゃんの方は、僕よりも一日のタバコの量が少なかったからか、最初が「0:00:08」で23日間での禁煙プログラムになっていた。

 二人で頑張ろうと励ましあい、禁煙を誓い合うのであった。

 一日に50本以上吸っていたのだから、ほぼ30分に1本のタバコにするだけで本数はかなり減ることになる。

 日中はこのペースでもほとんど辛いという感じはなかったが、店に入ると結構辛かった。人の相手をするときにずいぶんタバコに助けて貰っていたことを実感。やっぱ、ストレスたまるお仕事なのよ!

 いちおう指定されたように吸っていけたけど、ふと気づくと待つ時間が1分ほど増えている。まぁ、こうやってジワリジワリと待つ時間が増えていくのね。

 店はヒマだった。タバコのことばかりが気になってどんな日だったかはあまり印象がない。

 さてさて、これからどうなることやら…。

 弦ちゃんは途中で我慢ができなくて、2本ばかし禁煙マークが出ている間に吸ってしまったそうだ。解説書には、その時にも必ず喫煙ボタンは押すようにと書いてあったので、押したら不快な「ブー」音がなるのだそうな。

 寝る前にスイッチを切る。明日は何分ずつの我慢になるのかしら。ちょっと不安。

97.04.25 金

 今日の「Life Sign」は禁煙タイムが37分になっていた。弦ちゃんのは、禁煙タイム途中で2本ばかし吸ってしまったせいか、後何日で完全禁煙になるかを示す数字が23と昨日と同じになっていて、禁煙時間も昨日と同じ時間からのスタートだった。

 街中では、歩きながらタバコを吸っている人の姿がやたらと目につく。

 昨日と同じように昼間はほとんど苦痛なく指示されたとおりにやれるのだけれど、やっぱり店での禁煙時間がけっこうきつい。今日も店がヒマだったので、する事がなくなる時間が多く、よけいに吸いたくなる衝動が頻繁にやってくる。

 それでも、なんとか今日もクリアした。

 この日記、完全に「Life Sign」のモニター日記になってるわね…。

97.04.26 土

「Life Sign」は着々と禁煙時間を伸ばしていく。今日は40分からのスタート。
 
 今日は店が超忙しかったのでタバコを吸うヒマもないくらいだったので、気が付くと「あらもう吸っていいの」って感じで、あまりイラつかずに済んだ。

 甘ちゃんが突然タックスノットでイトコと遭遇! 友人からどうやら自分のイトコはゲイらしいとの情報を得ていたのでそれほどの驚きはなかったけど、当のイトコ(うちでは象さんと呼ばれている)は気も動転する驚きのようであった。ホントに世間は狭いのねぇ。
 それでも、驚いた後は楽しげに話していたからよかったわん。

97.04.27 日

「Life Sign」は44分からのスタート。なんだか、このままやっていけそうな感じ。ピッと鳴る度にタバコ吸わされるので、逆タマゴッチと呼ぶ客あり。
 確かに、これはゲーム感覚の禁煙法なのだわん。とにかく待っていればいつかはタバコは吸えるという気持ちがあるので、それほど切羽詰まった感じはない。そのせいか、最近はふとタバコのことを忘れている時間が長くなってきた。

 使用説明書には、「禁煙ができたら、自分に何かご褒美をあげるということを決めておくのもいいでしょう」なんて書いてあるし、何ご褒美にしようかなぁ…。

 店は昨日と打って変わってヒマ。

97.04.28 月

 友人がやっている眼鏡屋さんが店じまいをすることになったというので、閉める前に眼鏡を作っておこうと思い、出かける。イマーゴなんてここぞとばかり二つも作ったんだって!

 旅行中は近眼の眼鏡と老眼鏡を掛け替え、掛け替えと忙しかったので、やっぱり遠近両用の眼鏡が必要だと痛感、それを作ることにした。ヒエー、遠近両用眼鏡よ。もう私はオババ。

 帰ってきてから、いよいよ作品展用の次の作品「聖遺物筺シリーズ」アイデアスケッチにとりかかる。
 一応これは今回のメインディッシュになるはずなので、少し力が入ってしまう。リラックス、リラックス。

97.04.29 火

 今日はカズの祥月命日。もう8年も経ってしまった。

 ゲンパパとジャンクとナフが合同で六尺・浴衣祭りをやることになり、その広告を作る。作るといっても弦ちゃんの指定通りにマックを操作するだけだけど。この時はオペレータに徹するのよ。

 弦ちゃんの語感は面白い。絶対僕の中からは出てこない言葉を選ぶので感心してしまう。
 どんな言葉かは、6月発売のG-men見てみてくらはい。

 「聖遺物筺シリーズ」の素材に手を加え始める。うーん、うまくいくといいんだけど…。

97.04.30 水

 半日を渋谷の東急ハンズで過ごす。材料の品揃えから言うと、やっぱり渋谷よね。
 あら、これはいいなぁ、おや、これも使えるかも、なんて買ってたら、かなりの金額になってしまった。

 卓上ボール盤が欲しい…。

 家に帰ってから、買ってきたものを組み合わせながら、基本的なデザインを決める。うーん、ま、悪くはないけど、なんかパワーに欠けるところがある。それをどうするか…。
 神様の配達を待つしかないか。

97.05.01 木

 今月の展示はジャイアンの作品。
 店に来てからの組み立てなのだが、8時になってもまだできない。結局、本体の部分だけを展示してもらい、後は明日やってもらうことにする。
 
 店はヒマ。

97.05.02 金
 
 ジャイアンの作品は8時になってもできていない。さすがに僕もイライラしてくるが、ま、なんとか完成にたどり着く。パウチされた不思議な形態が構成されたインスタレーション的な作品。これがその写真。

 

 明日からゴールデンウィークの後半が始まるせいなのか、すごく混む。

 営業中に、両面テープでくっつけた、パウチされた部品が落ちてくる。

97.05.03 土

 今日はイマーゴさんがお休み。パートナーのケンケンのお店がゴールデンウィークでお休みなので、ケンケンと一緒に過ごすためのお休みなのだ。

 今日もジャイアン作品から部品が落ちてくる。やっぱり作品は作った人を如実に映し出すのかしら…。
 
 昨日大混みだったので今日はヒマだろうと踏んでいたのだが、果たして予想的中。一人でも十分こなせるくらいの状態だった。

 大阪からの2人が来店。大阪に行ってしまったファーファの紹介とか。あらファーファ、しっかり営業してくれてるのね! ありがとう。
 色々話していたら、他にもタックスノットの客が彼らの大阪の行き着けの店に来ているとか。どんな感じの人かと聞いていくと、新潟に住んでて遠距離恋愛していて、やたらペラペラペラペラ(ペラを4つ言った)しゃべる人とか。そんな人、うちではマユゲちゃん以外にいない。
 ペラペラしゃべるうえにやたらとマユゲが動かない?と聞くと、その通りだそうな。
 まぁ、マユゲちゃんたらどこでもペラx4しゃべると思われてるのね、やっぱり。

97.05.04 日

 京都のシモンとオリエンタル・ウェーブで会う。初めてのアメリカ旅行から帰ってきたところだそうで、4時間ばかり会話の楽しんだ。ホントにこの人とは24時間ぶっ続けの会話ってのに挑戦してみたい。

 今日は休日前なので、日曜だけど大混みだった。

 そういえば、「ライフ・サイン」の方だけどちゃんと指示通りにやってますわ。今はもう1時間45分くらいの間隔での喫煙。思っていたよりラクなので、ホントにこれで止められるのかしらと逆に不安にもなる。
 ま、先のことは考えないで、今の指示通りにやることに集中しましょう。

 最近、この日記を続けていくのがちょっと苦痛になっている。自分で最近の日記を読んでも、書かれていることにほとんど関心がないのが分かる。
 今は自分の関心は作品制作だけで、その他のものにはほとんど関心がない。その状態で日記を書くのは面白くない上にやたらと時間がかかる。時間がかかるから、こんなことしている時間があるくらいなら、作品制作にまわすべきだという気分になってしまう。そんな気分になるから余計に楽しくなくなる。悪循環なのだわ。

 うーん、どうしよう。この日記のスタイルに関してちょっと発想の転換が必要なのかも知れない。

 最近何人かの人から日記の感想で「タックさん疲れているみたい」と言われたけど、疲れているんじゃなくて毎日の生活に対する関心がほとんどなくなってきているのよね。

 店さえ休んで制作に集中したいという気持ちがどんどん膨らんでいく中で、日記にまでエネルギーを使うことの意味が見いだせない…。

 これってグチだわね。グチならこんなに書けるのだから、これからはグチ日記にしようかしら。

97.05.05 月

 あ、今日は何をしたのかしら…。

 えーっとぉ、あ、そうだ、新宿の東急ハンズにドリルスタンドを買いに行ったのだった。
 卓上ボール盤を買わなくても、このスタンドにドリルをくっつければなんとかなるのだそうな。

 後は作品制作。今回はスケッチを描かずにいろんなものを実際に組み合わせながらデザインを考えていくやり方にしてみたので、組み合わせては壊し、また組み合わせてみては壊しといった作業が続いている。

97.05.06 火

 弦ちゃんはG-men主催(?)のワハハ本舗公演を見に行ったので、今日は食事の支度がいらない。

 昨日買ったドリルスタンドにドリルを付けて、実際に穴を開けてみる。直径2センチの穴を垂直に開けてみたけど、まぁなんとか使えはするみたい。ただ、これより大きな穴を開けるには、僕の持ってるドリルではパワーがちょっと足りないようだ。

 「聖遺物筺」の一つのデザインが決まった。いよいよガラスなどを切る作業に入る。

97.05.07 水

 今日は一日ガラスの箱作りをしようと決めていたのだけれど、目が覚めたらヘンリクからファクスが入っていて、青山の「スペース・ユイ」でやっている宇野亜喜良の「365」という作品展が面白いのでぜひ見るようにと書いてあった。

 弦ちゃんはゲンパパ3周年の記念品をどうするかの打ち合わせとかで出かけているので、食事の支度はいらない。じゃ、行ってみるか、と出かけた。

 1から365までナンバリングしてある白いハガキに、絵を描いたり、切り抜きをコラージュしたり、気になった宣伝コピーなどを切り張りしたり、と軽い感じで作られた作品が文字通り365枚展示されていた。

 完成度よりやりたいことを気取らずにやってしまうやり方に、今の僕は心が動くようだ。どこをどう切っても宇野亜喜良以外のなにものでもない世界が軽々と広がっている。

 青山から家まで歩いて帰る。このくらいの距離は夕暮れ時の散歩にはちょうどいい。途中、On Sundaysで虫眼鏡を買う。

 朝までに、ガラスをカパーリングしたり、ハンダ付けなどをして今回に必要な箱を完成させた。
 後は全体の細かな組み立てが残るのみ。うん、なんかいい感じになりそう。

97.05.08 木

 久しぶりの本格的な雨。

 今日は3人も新人がやってきた。先月のバディの二丁目特集にタックスノットが載っていたので、それを見て来てくれる人が最近多い。うーん、やっぱりメディアの力はバカにできないわねぇ。

 ラクちゃんが赤い顔をして来店。テニスの合宿にいってきたとか。その時の日焼けでこんなに赤いのでした。今月の末に二丁目の何件かの店を中心に企画されたテニス大会が行われるのだけれど、その大会に出場するので強化合宿をしてきたのだそうな。
 このテニス大会、今回は参加者が450名を越すそうで、毎年参加者が鰻登りで増えている。ホント、日本でゲイゲームスも夢じゃないという気になってくる。他のスポーツも頑張れ!!

 「Life Sign」はとうとう2時間半おきというところまで来た。うーん、さすがに最近はちょっと辛いと思うことがある。なにか魅力的なご褒美を用意して、自分を励まさなくては…。

97.05.09 金

 レズビアン&ゲイ映画祭に「It's elementary !」を見に行く。
 今年もスパイラルの前に大きなレインボーフラッグが垂れ下がってる風景を見ることができて、なんか嬉しかった。これがその風景よ。

 

 「It's elementary !」は、ゲイやレズビアンのことを教えるアメリカの小学校での授業風景をドキュメンタリーにしたもの。偏見をなくすには幼い頃から偏らない情報を与えていくことがいかに大事かを教えてくれる秀作だった。こういうのぜひNHKで放映して欲しいわん!

 店はそれなりの金曜日といったところ。
 今日も、初めてという客が何人か来てくれた。

97.05.10 土

 映画祭にトランスセクシュアルを扱ったものを見に行くつもりだったけど、とても起きられなかった。

 店は忙しいのと、急にガランとしてしまうというのが繰り返される変なパターンだった。

 弦ちゃんがペンペンの芝居に出ることになった。座員の一人が急に出られなくなったそうで、ヒロシさんから出てよ!と言われて、いいですよと気楽に引き受けたようだ。
 これで、弦ちゃん毎週日曜と水曜はお稽古! 大変…。

 家に帰ったら台本がテーブルの上に置いてあったので早速読む。

 弦ちゃんたら、こんな大きな、そして難しい役をよく引き受けたわねぇ…というのが感想。きっとこれから気がついてゆくのね、弦ちゃんは。

97.05.11 日

 弦ちゃんは早速、1時からの芝居の稽古に。

 僕は映画祭へ。今回のプログラムのうち、一番面白そうだったのが「ごめん、でもルーカスは僕を好きだったんだ」。それを見に行く。

 今回の映画祭は去年に比べて一層客の入りがいいようで、プログラムによっては入れない人も出ているとのこと。この「ごめん…」も入場時間の45分も前に行ったのにもう並んでいた。

 映画は笑い通しだった。こんなに笑った映画は久しぶり。スペインらしいぶっ飛んだコメディで、こんなのが一般公開されないのはホントに残念。

 映画祭の最後のプログラムは公募日本作品から選ばれた受賞作品の上映と表彰式。審査員だったので僕も参加。結果は今年もグランプリに該当なし。優秀作一席、二席、三席と、観客が選んだ観客賞の合計4作品が上映された。
 
 優秀作の第一席に入った「Wounnded Bird」は無国籍風アジアンタウンで繰り広げられるギャングとスナイパーのドラマ。セリフは一切なく、ウォン・カーウァイばりの映像が美しかった。ギャングもごろつきも全員女性が演じてて、これがおなべファンタジーというものかと感心しました…。
 
 来年はゲイものの応募もたくさんありますように。

 この日記のアップがイレギュラーになり過ぎてますね。まだかしらとチェックする度に「いい加減にしろ」と言う気分になっていた方も多かったと思います。反省してます。

 だいたい10日置きというペースに戻しますので許してくださいませ。

 





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