2丁目の上のタンコブ日記



97.03.21 金

 最低でも1時間は並ぶと聞かされていたウフィチ美術館。「最後の晩餐」は見ないでもいいけど、ボッティチェルリに会わずにフィレンツェは帰れない。結局9時に並び始め、1時間半待ってようやく入れた。

 時代的に一番好きなゴシック期の祭壇パネルなどを十分楽しんでからいよいよボッティチェルリの部屋へ。また泣いたりするかしらと思っていたけど、意外と大きな感動もなく、「ああこれだわ…」と割とサラリとした初顔見せだった。
 これはあまりに期待しすぎたためかもね。だってクラナッハの「アダムとイブ」のアダムを見つけた時は「あらー、あなたってここにいたんだ!」って結構感動したもの。ウフィチではこのアダムを見られたのが一番の収穫かな。


ウフィツィ美術館/「ヴィーナスの誕生」の前で

 

 ウフィチだけで午前中は終わり。1時半に昼食。もうパニーニ系統は飽きたので、中華料理店に入ってスープそばを食べた。見かけはラーメンだったけど実際は入っていた麺は手打ちのパスタだった。まずいというほどではないが、決して美味しくもない味。

 またゴーちゃんの車でシエナへ。

 途中出見たトスカナ地方の美しい田園風景はこの旅一番のハイライトだったかもしれない。「絵のような」という形容詞がぴったりの景色だった。
 
 シエナのドゥオーモも今回期待していたものだったけど、ここもその期待に応えたくれた。ジオットのデザインに依る塔もそのプロポーションと色のバランスがホントに美しい。また大聖堂内部も僕の好みにぴったりで、特に中央ドームの美しさと言ったら、ただ溜息が出るばかり。


シエナの大聖堂/美しいその外観 

 


シエナの大聖堂/内陣

 


シエナの大聖堂/中央ドームの明かり採りを見上げたところ

 

 シエナは本当に質のいい観光の街といった感じ。ここでお土産用にいろいろと食料を買い込む。

 もう一つ欲張って塔の街サンジミニャーノに寄ることにして、シエナを後にする。

 サンジミニャーノに近づいた頃には日も暮れてしまったが、夕暮れの空に、幾つかの塔がシルエットで浮かび上がった丘を見た時は、ホントにこの国には美しいものがあちこちに散らばっているのだと感心してしまった。

 フィレンツェに戻ってから「チブレオ」でディナー。ここでは料理の組み合わせがうまく出来ず、似たような味のものばかりを取ってしまい失敗。
 ここは給仕が全員女性であまり楽しくない。特に背のでかい北方系の女が根性悪くてあきれてしまった。突然テーブルにやってきてイマーゴのライターを貸してくれと言う。貸してやると隣のテーブルの客のタバコに火を点け、礼も言わずに返して去っていった。あんた、どういうつもり! グラツィェぐらい言いなさいよ!

97.03.22 土

 8時起床。花の大聖堂を中心にビデオに納めて歩く。着いた夜に歩いたのと同じコースだが、昼の光で見るとまた趣きが違う。ここのドゥオーモはゾクゾクするほど美しい。


フィレンツェのベッキョ宮殿の前の広場にあるネプチューンのおちんちん 

 

 メディチ家の礼拝堂では教科書でお馴染みのミケランジェロの彫刻がホントにあった。(当たり前か)
 ここの彫刻、特に若い方のメディチの像はデッサンでさんざん描かされたので、デッサンの得意でなかった僕としては苦々しい思いがよみがえり、そんなに楽しめなかった。

 しかし、ここでも聖遺物容器がゴチャマンとあり、それを見られたのが収穫だった。


メディチ家の霊廟で見た聖遺物容器(レイカーリョ)の一つ

 

 2時にフィレンツェを出発。まずはピーザに向かう。

 4時頃ピーザに到着。写真では何度も見たことのある斜塔だけど、実際に見るとやっぱり立っているのが不思議なくらい傾いている。世界の七不思議の一つに数えられるだけのことはあるわね、これは。


ピーザの斜塔を支えるトクガワ・ド・ブルボン

 

 後は延々車を飛ばしてミラノへと帰る。

 ゴーちゃんの家に行き、ご飯を炊いてもらって、ゴーちゃんが大好きな「味道楽」とかいう振りかけをかけて食べる。なんという美味!!!! いつのまにか僕も白いご飯がないと生きていけない身体になっていたのね。ウーム。ゴーちゃんの日本から買ってきて貰いたいものリストに「味道楽」が入っていた理由がこの時初めて納得できたのでした。

 


ドクガワ・ド・ブルボン邸で食べたイタリア旅行一番のご馳走

 

97.03.23 日

 8時半起床。ミラノの街をイマーゴと二人で散歩。日曜なので店はほとんど休み。教会も美術館も行く予定がない。ふたりしてチンタラチンタラ歩いた。なんかこのゆっくりした速度で歩くのはイタリアに来て初めてだということに気づく。こういう時間の使い方もいいよねとか語り合いながらのんびりとした午前中を過ごす。

 午後はまたランチャを飛ばして北に向かう。まずはマッジョーレ湖のイゾラ・ボッローメオが目的地。ここは湖の中に浮かぶ三つの小島で有名なところ。三つの島ともボッローメオ家の持ち物で、特にイゾラ・ベッラと呼ばれる島は島全体が一つの美しい庭園になっているという。しかし、今日はボッローメオ家の人がまだ使っているので見られないとのこと。


マッジョーレ湖に浮かぶイゾラ・ボッローメオの一つ/漁師の島

 

 「ここまで来たら、ちょっと足を伸ばせばスイスよぉ! 頑張って行きましょ!」と飛ばすゴーちゃんに励まされながら一路スイスへ。

 着いたところはマッジョーレ湖の北端ロカルノ。ここは何もかもがこざっぱりとして汚いものが見えない。イタリアでは埃まみれの車はいくらでもあったのに、ここでは車さえみんなピカピカ。同じイタリア語圏でもずいぶん違った雰囲気が漂う。
 ゴーちゃんが「ここではカレーライスが食べられるから行きましょ!」と連れていってくれたのが「メーベンピック」(新宿西口にもあったわね)。大きなエビが五匹も入ったカレーライスとコーヒーを2杯で3千円。ウーン、スイスは物価も高いのね。

 


ロカルノ/こんなところに住んでみたいお屋敷

 街を散策した後、ルガーノ、コモを抜けてミラノに帰る。

 夕食はゴーちゃんの家の近くの中国料理店へ。全体に塩辛かったけど、洋物の味付けに飽きてきた口にはありがたかった。

 僕たちがホテルに帰る前に元気なゴーちゃんが言った。「明日は思い切って西リビエラを突っ切ってフランスまで行くのよ!!」 最後までフルスロットルの旅になりそう。

97.03.24 月

 今日はパスクァ(復活祭)だと思いこんでいたら、それはゴーちゃんの勘違いで実は来週だという。となると、ミラノの店は開いている。それは、イマーゴにとってこの旅行の一つの目的でもあった「リトモ・ラティノ」の時計が買えるという意味でもある。
 そこでフランスまで足を伸ばすという予定は急遽変更され、ジェノバを通り、反対の東リビエラのポルトフィーノに行くことになった。この日は日本からやってきたヒカルも加わり、4人での賑やかな旅となる。

 ジェノバはなんだかゴミゴミしてすっきりした美しさがない街だった。宮殿もチョー豪華なものを見続けた目にはさもない感じ。いつのまにかゴーちゃんのようになってる!

 


ジェノバの宮殿の中庭で見つけたヘタウマ象さん

 

 ポルトフィーノはかわいい街。小さな入り江にカラフルにペイントされた家が建ち並び、シーフードを食べられるリストランテがたくさんある。ゴーちゃんがお目当てにしていたリストランテは閉まっていて、仕方なく一番お客さんが入っているところを選んで入る。イマーゴも僕も、美しい景色と夏を思わせる太陽を浴びて外で食べるというロケーションが気に入り、食事もおいしく食べられたのだけど、ゴーちゃんはお目当てのリストランテの味を知っているから、ここの味では許せないといった感じでちょっとご機嫌が悪い。お勘定がきたらもっと悪くなった。「この味でこの値段?」 まーまー。

 食後は丘の上にある小さな城に登り、そこからのパノラマを楽しむ。

 


ポルトフィーノ/小さな入り江にリストランテが並ぶ 

 


ポルトフィーノから望む東リビエラの海岸線

 

今日でいよいよイタリア旅行も終わりなんだわ…。

 ミラノまでまたまたぶっ飛ばして帰り、イマーゴは念願の時計も買い、まずはめでたし。

 イタリア最後の晩餐は「メディテルラーネア」で。ここはイカスミのリゾットが逸品だというリストランテ。もちろんそれを頂きましたわ。美味しかったーー!

97.03.25 火
 
 9時にはホテルをチェックアウト。頼んだタクシーでマルペンサ空港へ。遅れちゃいけないと早めに着いたものだからなんと離陸まで5時間もある。出発の時もそうだったけど、今回はこういう旅なんだわ。

 ローマ出発のアリタリアはストライキの影響で1時間近く遅れて離陸。ストライキは日常なのね、ここは。

 夜のシベリア上空で、ヘール・ボップ彗星を見る。感激!! こんなおまけまで付いてるなんて…。
 晴れ渡った夜空にぼうっと長く光る尾を引く彗星はいつまで見ても見飽きない。生まれて初めてのヨーロッパ旅行の最後に、生まれて初めて見る彗星。今回は忘れられない旅になった。
 
97.03.26 水

 30分ほど遅れて成田に無事到着。税関を抜けて、ほとんどすぐに成田エキスプレスが出発したので、1時近くには家に着いた。

 弦ちゃんはオカビーと一緒に石和温泉に1泊旅行に出かける直前で、小一時間ほどなんやかやと話してからお見送り。

 荷物をほどき、洗濯をし、撮ってきたビデオを全部見てみた。60分テープが7本あったから、トータルで6時間以上は見ていたことになる。つ、疲れた。

 後はひたすら寝まくった。

97.03.27 木

 なんか疲れがとれていない。

 店では当然旅行の話が中心。どこを廻ってきたの?という質問が一番多かったのだけど、どんな順に回ったのかがもう思い出せない。いろんな場所がゴッチャになってひとかたまりになっている。

 これじゃ明日はしっかり紙に書いて来なくちゃだわ。

97.03.28 金

 毎度お馴染みの月末の銀行振込を済ませた。

 今日は、旅行をちゃんと説明するぞとばかり、行程もしっかり覚え、ビデオも持って店に入った。
 
 ビデオは、撮り方はともかく画像がきれいというのが、見てくれた大方の人の感想であった。やっぱり3ccdカメラはひと味違うわね。重い思いしてとり続けたかいがあったというもの。

 イマーゴさんは会社が年度末と消費税引き上げに対する対応が重なり、チョー忙しかったようで残業を済ませてから来てくれたので、いつもより遅く入店。

 今日はけっこう忙しかった。

97.03.29 土

 けっこう強い雨が降っていたにも関わらず、店は忙しかった。

 今日もずっとビデオを見せながらの営業。初めて来てくれた客はちょっと面食らっていたみたい。

 味の素が好きなアケピーが店にやってきたら、たまたま彼に会うのが久しぶりの客が彼を見て言った。
「あれ、しばらく見ないうちにずいぶん垢抜けたね!」
 それを聞いたアケピーどこか嬉しげ。
 実は、アケピーは最近茶髪にしたんだけど、「いいじゃない」と言う人もいあるけど、「もともと髪が薄めなのに、それが強調されておかしい」とか言う人もいて賛否両論だったのだ。
 それが「垢抜けた」と言われたので嬉しかったのね。
 そこへタカちゃんがやってきた。アケピーはちょっと自慢げに「今、前より垢抜けたって言われたんだからぁ」と話すと、タカちゃんはアケピーのかなり赤目の茶髪の生え際を見ながら「え、赤い毛が抜けたって言われたんじゃないのぉ」と切り返した。
 それが一同大うけで、これからは「最近、赤毛抜けたアケピー」と呼ぶことになった

97.03.30 日

 イタリアから買ってきたお土産の中に「OTOSAN」という耳掃除の道具がある。旅行に行く前にお客さんから「イタリアには面白い耳掃除の道具がある」と聞いていたので、それを買ってきたのだ。
 今日、店でオカビーにそれをあげた。ちょうどそこに木曜に同じものをあげたシンチャンも居合わせたので、オカビーはここでやってみるということになった。
 ワックス状のものを染み込ませた布を細いロート状に丸めた代物なのだが、そのロート状の細い方を耳の穴に突っ込み、上部に火を点けて燃やすようになっている。

 写真はその時の様子。燃え残った筒の中には信じられないほどの量の耳垢がくっついている。しかしそれは耳垢のようにも見えるが、違う物質のようにも見える。
 なんかだまされたような気にもなる不思議な耳掃除方法だった。誰かホントのことを知らないかしら…。
 
 しかし、耳に火の点いたロウソクをつっこんで横になっているオカビーの姿は間違いなく面白かった。これがその写真。


 

97.03.31 月

 昨日お客さんから桜がもうすでに満開だと聞いていたので、ゲンちゃんと新宿御苑に行く。
 
 満開にはまだ数日と言った感じだったが、気持ちのいい日差しの中で春を満喫した。

 旅行中の日記の整理。これでアップ出来るわ!

 

 
 
 

 


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