2丁目の上のタンコブ日記


97.03.11 火

 ゴーちゃんに頼まれた本を探して、イタリア政府観光局に行ったのだけどお目当ての本は見つからなかった。ま、最終的に、それらしき本を紀伊国屋で手に入れられたので良かったのだけど、表紙の色も出版したところもファクスで指定してきたのとは全然違うんだから往生したわん。

 自分用にもフィレンツェとヴェネチアのガイドブックを買ってきて読み始めてみたら、なんだかだんだんその気になってきた。そうか長いこと憧れていた物物に会えるんだわぁぁぁ。

 気持ちよく出発するためにも原稿は仕上げていかなくてはならない。結構四苦八苦だったけど、なんとか書き上げた。ふー。

97.03.12 水

 バディの原稿に付けるグラフィックを仕上げ、15周年パーティの案内状送付のための宛名ラベルを印刷し、それを封筒に貼り、返信用のはがきを印刷してたら一日が終わってしまった。

 旅行前に済ませなければならないことが次々にやってくる。はー。

97.03.13 木

 バディへ原稿を持っていく。次の号で読者プレゼントをしたいので、何かプレゼントになるものを提供して欲しいとのこと。「二丁目からウロコ」のサイン本とマックで描いたイラストを額に入れたものをプレゼントにした。

97.03.14 金

 タダシに頼んでいた15周年パーティの案内状が上がってきた。店が暇なのをいいことに、お客さんを総動員して、案内状の封筒入れ、切手貼りなどを手伝ってもらう。大勢でするとなんでも速いわ。

97.03.15 土
 
 昨日は雨だったので、濡れるといけないと思い投函しなかった。今日、店に置いてあった案内状をいざポストに入れようとしたら、切手を貼ったところがみんな貼り付いてしまっていた。あわててはがしたら、ひどくみっともない様子になってしまい、泣きたい気分。だけど結局そのまま投函した。

 イマーゴがアレルギー性の鼻炎にかかったらしく、鼻をグスグスさせている。彼の「あんまり鼻かみ過ぎて、鼻血がでちゃった」と言ったことばを聞き違えて、ある客が言った。「えっ! あんまり、ハダカ見過ぎて、鼻血がでちゃったの?」

97.03.16 日

 原宿ギャラリーから作品を搬出。イマーゴとギンケンが手伝ってくれた。

 今日は来週の日曜にタックスノットを担当するケイちゃんがカウンターに入っての予行演習。
 明日、朝の出発なので今日は12時で早終いした。

 なんか、ここ数日の日記は愛想がないわよね。ま、許して。

 さ、いよいよイタリアだわん!

97.03.17 月

 寝ないまま、パッキングを済ませ、7時頃家を出発しようと思っていたら、弦ちゃんが僕を見送ろうと6時半に起きてきた。6時半に僕が家を出発するのだと思い込んでいたみたい。ほんとに無理をして起きてきた感じで、機嫌が悪い。仕方がないので6時45分に家を出た。
 シドニーの時は滑り込みセーフで発車に間に合ったというほどギリギリの時間だったのに、今回は1時間以上も前に着いてしまい、時間をやり過ごすのに往生してしまった。全くどうして僕はこう極端なのかしら。
 
 初めてのアリタリアは喫煙席を頼んだのだけど、最後部は飛び立つなりすごい横揺れ。これで無事にイタリアまでたどり着けるのか不安。

マルペンサ空港に着くと、知り合いのヒラクに会う。彼もちょうど同じ日程での旅だとか。この人はゴーちゃんの知り合いでもあるので今晩の夕食を一緒にする約束をして別れる。

 空港まで出迎えてくれたゴーちゃんの愛車ランチャに乗ってホテルへ。荷物を解いてすぐに、ヒラクお勧めの「タイムアウト」というリストランテに向かう。ヒラクと、現地で音楽の勉強をしているシュウちゃんと5人での食事。ここの味付けはやたらと塩辛い。すてきなインテリアとブスなウエイトレスの笑顔のないサービス。サービスにうるさいイマーゴはご機嫌がよくない。

 ホテルに帰り、シャワーを浴び、おやすみと言ったとたん、イマーゴは気を失ったように寝てしまった。なんという寝付きの良さ!

97.03.18 火

 6時起床。 朝食はさもないビュッフェ・スタイル。
 イマーゴと二人でサンタ・マリア・デッレ・グラッツィエに最後の晩餐を見に行くが、2万人ほどの(嘘)日本人の列におそれをなして断念。
 スフォルツェスコ城を見る。二組の日本人観光客から道を聞かれる。こんなところに来るのは日本人だけと言った感じで堂々と日本語で聞いてくる。
 ミラノのドゥオモを見学。屋上にも上ってみる。途中どうやら高所恐怖症 のイタリア人のおばさんに会う。階段の途中で座り込んで立ち上がれない。この人帰れるのかしら。

 リナシェンテにてお買い物。イマーゴは台所用品を見ると極度に興奮する。ホントに楽しげ。僕は割れないヴェネチアン・グラス(要するにプラスティック製)をお土産に買う。

 午後一番、ゴーちゃんの車で一路ヴェネチアへ。すでに14万キロ走った中古ランチャをぶっとばし、気短なイタリア人に一歩も譲らず、奇声を発しながら180キロも出すので、横揺れのアリタリアより怖かった。「どくのよ! わたしにブレーキを踏ませないでぇっ!」と地声より3オクターブは高い声で叫びながらアウトストラーダを運転するゴーちゃんを見て、この人はどこでもたくましく生きていけるんだなと思った。
 「そんなに飛ばして大丈夫?」と聞くと「ダイジョーブ! この車メータの調子がおかしくて、止まってても20キロを指してるから、思ったより出てないのよぉ!」
 
 途中、僕のリクエストでベルガモのサンタ・マリア・デレ・グラツィエ教会を見る。ゴーちゃんに言わせれば、さもない教会。でもベルガモの町は素敵だった。
 この街で昼食。フォッカッチァのパニーノを食べる。ここいらのねえちゃんは愛想がいい。昨日の「タイムアウト」の不愛想ねえちゃんの悪口をいいながらの賑やかな昼食になる。

 ベルガモから2時間でヴェネツィアに。


夕暮れのヴェネチア/リアルト橋

 

 水上バスでサンマルコ広場へ。き、来たのね、とうとう。宿泊先のオテルドリスボナに着いた時はあたりは暗くなっていた。
 
 ディナーは「フィオーリ」というリストランテ。イタリアに来て初めてのおいしくて気分のいい食事。スカンピのグリルやカレイのなんたらもおいしかった。(なにしろお料理の名前が覚えきれないのよ)サービスも気持ちよくイマーゴもとっても満足。
 食後は夜中の街を散策。いつしか3人ともそれぞれヒロインになってまるで舞台のような街を歩き回る。

 くたくたになってホテルへ。
 シャワーから出てきたイマーゴがベッドに入るなり言った。「何かお話して…」 ちょっと思いがけないリクエストにあわててガイドブックを取り出し、読んで聞かせる。この人毎晩ケンちゃん(イマーゴの彼)にもこんなこと頼むのかしらと思いつつ、一行目を読み終わり、ふと彼の顔に目をやるともう寝息を立てていた。
 うーん。この人、けっこう長生きするかもしれない…。

97.03.19 水

 7時半起床。

 ここのホテルは雰囲気はあるんだけど、部屋が狭く壁と壁の間の距離より天井の高さの方がある。なんか井戸の中にいるといった感じ。夜中にトイレに入ろうとしてライトのスイッチを入れたとたん、電球が突然爆発。床の上に割れたガラスが飛び散り、ショートしたのか部屋の電気まで消えて真っ暗。このままでは大変とフロントに電話して来て貰ったけど、要領の悪い人で何度も何度もフロントと部屋を往復して、結局直すのに小一時間かかってしまった。 イマーゴは爆発音を聞いても気づかず深い眠りについていた。お話が効いたのね。てなわけで僕は寝不足。

 さて、まずはあこがれのサンマルコ寺院へ。モザイクはやっぱり実物を見ないとダメね。写真集などでは分からなかった不思議な光り方。
 そして今まで写真でしか見たことのなかった「聖遺物容器」(レリカーリオ)も見られて感激。
 サンマルコ寺院の隣にあるドゥッカーレ宮殿では、ゴーちゃんが借りた日本語によるガイドマシーンを聞きながら各部屋を案内してくれた。「ホー」とか「ハー」とか「ま、大したタマゲタ」とかすっかりおばさんになった僕。とにかくここは豪華だわ! でも僕はティツィアーノでっかい絵には何も感じないの。

 その後はヴェネチアを歩き回り、お土産などを買う。

 3時過ぎにエステに行く。といっても別に美顔術にいったのではなく、エステというヴェネチア近郊の街のこと。ゴーちゃんが4月に個展を予定していて、彼のデザインした椅子を実際に作ってくれる職人さんのチェーザレに会うのが目的。
 エステに着く頃は暗くなって雨も降りだした。春の嵐といった感じで雷もすごい。

 チェーザレのおかあさんの住む家の納屋にゴーちゃんデザインの鉄製の椅子が並べてあった。かわいい椅子!

 その後、ゴーちゃんの友人で、エステ近くの丘のてっぺんの古い民家を改装して住んでいる建築家のお宅に伺い、ディナーをご馳走になる。生まれて初めてロバの肉っちゅうもんを食べたわ。
 暖炉の火がパチパチ燃える素敵なインテリア、美味しいお料理、庭で採れた果物をつけ込んだ自家製の食後酒、楽しい会話、気持ちのいい応対。これはパック旅行では味わえないとびきり楽しいひとときだった。


アジャンニさんのお家/かいがいしく働くアジャンニさんとテーブルの奥さんと妹さん

 

97.03.20 木

 かなり疲れてきて8時起床。午前中にサンマルコ広場へ向かい、今度は鐘楼に上る。この街は街全体が世界遺産に登録されている理由がよく分かる。ユニークでホントに美しい街。

 今日は水上バスがストライキだとかで、水上タクシーを頼んで駐車してある島まで向かう。

 ヴェネチアに別れを告げて、一路フィレンツェへ。今日はいよいよイマーゴの運転。これでわざわざ取ってきた国際免許証も活きる。

 途中僕のリクエストでラヴェンナに寄る。出来るだけ本物のモザイクを見るのが僕の今回の旅行の目的でもあったのだ。

 三つの教会を回る。どこも写真集では何度も見ていたお馴染みのものだったけど、やはり実物を前にするとその感動は大きい。サンヴィターレでは窓から入ってくる光が色々と変化し、それに呼応してモザイクの絵が微妙な色合いを変える。見ているうちに涙が流れる。来て良かった…。


サンヴィターレ教会の内陣/このモザイクを見て涙が流れた


サンヴィターレ教会のモザイク/有名な皇后テオドーラの図

 

 フィレンツェには7時頃到着。食事前の1時間ほど夜の街をゴーちゃんの案内で散策。花の大聖堂は前面の掃除も済んでいてホントにきれい。どこもライトアップされていて夜の観光もなかなかいい。

 食事は「フォンティチーネ」で。
 前菜には野菜スープ、プリモに手打ち麺の菜の花ソース和え、セコンドにフィレンツェ風のステーキとトリッパのトマトソース煮と、ここまで食べたら苦しくなったけど、ドルチェを食べないイタリア料理なんてと、プリン系のものとチーズタルトのオレンジソースかけを皿に盛ってもらい、念の入ったことにその上にジェラートまで載っけてもらったものを食べた。いざという時にこんなに大食らい出来る胃を持っていてホントによかった。


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