2丁目の上のタンコブ日記


96.12.11 水

 弦ちゃんはG-menの取材を受けるとかで編集室に出かけていった。

 夕方、アイランドのラクちゃんと一緒にタイ・レストラン「バンタイ」に行く。弦ちゃんも合流して3人で夕食。来年はタックスノットが15周年なのだが、パーティをやるべきだとハッパをかけられる。

 弦ちゃんは簡単な取材のつもりで行ったのだが、スタジオでの撮影まで付いていて、最後はブリーフ一丁姿にまでさせられてしまったそうだ。「してやられたわ」と言いながらも、どっか嬉しそう。乙女心は複雑ね。
 一月発売のG-menは忘れずに買わなくちゃだわ。

 バディ連載用原稿の第1回目を書く。

96.12.12 木
 
 久しぶりに赤岩さんが来た。年明け早々に開く個展の準備で、チョー忙しそうだった。でも、タックスノットの展示は大丈夫とのことで、ま、一安心。

 店が終わってから、バディの連載のための写真を撮る。アブソルート・ウォッカについての原稿につける写真なので、カンガルー(ウォッカのマティニー)を作って、撮ってみた。

96.12.13 金

 13日の金曜日。別に何もなかった。

 オシドリ状態でまわりからうらやましがられているカップルの片割れが、実はビデボでよく見かけるとか、お色気系のパソ通でセックスフレンド募集していたとか、そんな情報って集める気がなくてもいくらでも耳に入ってくるのが水商売。「ちょっと奥さん、聞いて!!」って言いたくもなるんだけど、パートナーシップ応援してる身としてはブレーキもかけなくちゃならないし…。そんなに僕のブレーキって効きのいいほうじゃないけど。

 昔から「もの言わぬは腹膨るる技なり」なんて言うけど、どんどん太っていくのは、きっとそのせいなんだわ。芦の生い茂る原っぱに穴掘って、叫んで来たくなるときがある。「王様のおチンチンは盛りの付いたウサギ並み!!!」って。
 
 永い関係を作っていく上で第三者とのセックスや恋愛をどうするか。これは永遠のテーマだわね。
 
 ハッテン場で誰を見たとかいう話はペラペラ人に話すもんじゃないって憤っている人がよくいるけど、それは勝手な言い分だと思う。どこにでもペラペラちゃんが存在するっていうのは人生のゲームを面白くさせている要素の一つなんだわ。レーシングゲームで滑りやすい路面が用意されてるように。
 秘密にしたいんだったら、それなりのエネルギー使って、完遂して欲しいわ。

96.12.14 土

 店に出る前にテレビ見てたら、ストーキングについての番組をやっていた。

 相手の気持ちを無視してつきまとい続け、相手に恐怖感や心理的な苦痛を与える病的な片思いのことだが、最近では日本でも増えていく傾向にあるらしい。実際、知り合いにも弁護士に相談しようかというところまで追いつめられているのがいるので、なんか他人事には思えなかった。

 アメリカではストーカーに対して被害者への接触を禁じることができる法律があるほど多発しているようだ。そのアメリカの状況を伝えるリポートでは、様々なストーカーのありようを説明していたが、その中で、証拠品として警察に保管されていた、ゲイのストーカーが相手の男の家に送りつけてきた品物が画面に写し出された。
 それは、手作りの紙製の箱に入れられたケン人形(バービーの彼)だった。ケンは素っ裸で、おチンチンのところには小さなミニチュアのナイフが何本も刺してあり、血糊がベッタリ塗ってある。
 
 確かにストーカーからこんなものを送りつけられた当事者には恐怖以外の何ものでもないだろうが、その箱も含めてどこかカワイイ雰囲気を感じてしまい、まぁ、犯罪にもゲイテイストって表れるのねと妙に感心してしまった。

 店は、混んだり急に空いたりを繰り返す変なパターンだった。

96.12.15 日

 店を早めに閉めて、レインボウ・カフェでやっているバディの3周年パーティに顔を出す。

 小倉東さんがカウンターの中に入って料理作りに大活躍、ブルちゃんや西野浩司さんなどもお客さん相手に笑顔を振りまいていた。
 まぁ、年末進行で編集そのものが猫の手も借りたい状態だろうというのに、2日間もパーティにかかり切りというのだから頭が下がりますわ。お疲れさま。

96.12.16 月

 シムラーから借りたビデオを見る。「Hollow Reed」というイギリス映画で監督はアンジェラ・ポープ。字幕がついていないので内容を把握するのがけっこう大変だった。
 旦那がゲイだという理由で別れた夫婦が子供の養育をめぐって葛藤を繰り広げるというストーリー。「クレーマー・クレーマー」のゲイ・バージョンみたいなものと聞いていたので、少しはコミカルな演出を想像していたのだけど、実際はイギリス映画特有の暗くて深刻な作りになっていて、見終わってから気分が重くなってしまった。
 子供の養育権を巡って裁判が行われるのだが、どう見てもゲイの父親には勝ち目はない。しかし、子供は最終的に父親のもとにやってくる。その理由が元妻の現在の恋人が実は子供に暴力を振るう人間だからなのだ。
 幼児虐待とでも比べなければ、ゲイの父親には子供を養育する権利はないとでも言われたような気分だった。離婚の被害者はいつも子供なのだというメッセージだけは痛いほど伝わってくる作品。子供のおどおどした目がいつまでも印象に残る映画だった。

96.12.17 火

 「アエラ」が伏見憲明さんの記事を組むとかで、その取材を受ける。小学校の先生や同級生から始まって、現在仕事で関わっている人まで取材しているそうだ。面白い記事になりそう。
 嫌なところってありますか?とか軽く聞いてきたので、そんな恐ろしいこと聞くんですか?と答えると、名前を出さない書き方にしますから教えてください!ときた。その手は桑名のなんとやらだわ。

 取材が終わっての帰り道、タックスノットの前を通ると店が開いてない。8時半だというのにブルちゃんがまだ来てないようで、外で客が待っている。なんと伏見君まで。
 ひとまず開けて営業開始。
 
 「嫌なところとかありますか?」って聞かれたんだけど、そんな恐ろしいこと答えられるわけないじゃないよねぇと伏見君に言うと、苦笑いしてた。

 ブルちゃんは9時近くに恐る恐る入ってきた。なんと寝坊したとか。今度お仕置きだわ!

96.12.18 水

 床屋に行く。

 その後、渋谷のギャルリー・ル・デコ3で開かれているプラント氓ニいう写真展を見に行く。この個展を開いている福田君はうちのお客さんでもあるのだが、先日個展の案内を持ってきてくれたので出かけてみた。
 彼は今30代の半ばだが、4年前に写真をやり始めたとか。それまではイベント関連の会社で働いていたのが、会社がつぶれてしまい、突然空いた時間をどう使おうかと考えた結果写真をやってみようと思い立ち、写真学校に通い始めたのだそうだ。
 今回が初めての個展で、被写体は工場プラントばかり。それも夜中に長時間露光でのみ撮るのだそうだ。ポジフィルムは長時間露光させると色がグリーンに偏るという特性を持っているそうで、その色合いを逆に活かした作品が並んでいた。
 実際には見られない風景、写真でなければ見られない風景が展開されていて、なんだかとても不思議な気分にさせられる写真展だった。


96.12.19 木

 トシカスからお餅とアルベリの焼き菓子、ドゥマゴのケーキを貰う。

 ラクちゃんからは、里帰りのお土産「野趣村情」を貰う。この「野趣村情」は前にユキヤが買ってきてくれて、僕がおいしかったと言っていたのを、データマンのラクちゃん、しっかり手帳に書き留めておいてくれたらしく、買ってきてくれたのだった。

 実に貰いの多い日だったわねぇ。

96.12.20 金

 シムラーがエルトン・ジョンのドキュメンタリー「Tantrums Tiaras」を買ってきたというので、店で見せてもらう。
 この「Tantrums Tiaras」はエルトンのパートナーであるデイヴィッドが撮ったもので、エルトンにとっては初めてのドキュメンタリーになるそうだ。

 超おネェさんぶりからナーヴァスなアーティストの部分まで開けっぴろげに見せてくれて、なかなか面白いできになっている。
 中でも、L.A.で行われたエイズ・プロジェクトのファンド・レイジング・コンサートでのスピーチでは「アメリカは僕にとって第2の故郷です。ここでカミングアウトします。僕は男と寝てきました。そしてHIV検査では陰性でした。本当にラッキーな人間です。その恩返しをしたいと思います。」と語り、淡々とカミングアウトしていたのが印象的だった。


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