2丁目の上のタンコブ日記


96.08.29 木

 HONCHO(*1)の古い号を見てたら、面白いコラムがあった。

「皮を返して」(Give Me Back Some Skin)というのがタイトル。皮という文字をスキャンしただけで、アラームがなるのだから、僕も相当、業が深いわ。

 サンフランシスコにNOHARMM(National Organization to Halt the Abuse and Mutilation of Males)というグループがあって、アメリカではごく当り前になっている、生まれたばかりの男の子の包皮を切り取る手術を止めさせようという活動をしているそうだ。グループによれば、包皮を切り取ることで、性感が損なわれるし、手術自体も危険を伴うというのだ。実際、割礼手術では500件に1件の割合で、深刻な大量出血、感染症、性器自体の損傷、ひどい場合には死亡も含む事故が起こっていると書かれている。

 これがHONCHOに載っているのは、アンカット・ミートが好きでたまらない読者がたくさんいるということを編集部が認識した証拠でしょうね。いいぞ、いいぞ。
 だいたい、露茎ばかりをありがたがる風潮は許せーん!!

 (*1)HONCHO/アメリカのゲイ雑誌。男臭いタイプを好きな読者をターゲットにしている。発音はハンチョで、これは日本軍隊の「班長」という言葉に由来している。捕虜になった米兵にしてみれば、班長は怖ーい存在だったのでしょう。

96.08.30 金
 
 今週からマゴマゴが金曜日も12時まで入ってくれることになった。これでお客さんと話をする時間がもっと作れるようになるんじゃないかな。

 久しぶりに来店したShingoちゃんからプリッツの博多明太子味をもらう。これって九州地区限定版なんだそうな。
 まゆげのアキラからは僕のお気に入りの明治饅頭、リョウイチからはウォーカーのショートブレッドをもらう。

 一人きりの客になったエントツちゃんのインナートリップに付き合って、終わったのが朝7時。はー。この人にも、心の奥深ーく、クレバスみたいな傷が隠れていたのねぇ。

96.08.31 土

 今日はマゴマゴとの2人体制。パレードに出た人たちがたくさん来てリクエストするので、ビデオを3回くらいかけた。自分の声にザッツ・イナフ!って感じ。(実況ナレーションをしながら撮ったので)
  
 ここ3〜4ヵ月の間にタックスノット関連で9組もカップルが誕生。さてさてどの組が公認カップル(*1)に辿りつけるやら…。賭けでもするかという話でけっこう盛り上がる。

 オカビーから不二家のクッキーとうなぎパイを貰う。

 お掃除をしながら、今週も朝6時8チャンネルの「英国生活」を見る。やっぱり、カワイイ番組だわ、これは。

 オランダのウィムさんがメールでパレードのことを教えて欲しいと言ってきたので、返事を書く。
 全部ローマ字で書かなくちゃならないので大仕事になってしまった。フー。終わったら10時!

(*1)公認カップル/付き合いは長ければ長いほど良いと信じるタックスノットの専制君主(つまり僕)は、1年経たないとカップルとしては公認しないことにしている。その理由を知りたければ、僕が書いた「二丁目からウロコ」(翔泳社刊¥1600)をお読みください。たまには営業も許して。

96.09.01 日
 
 弦ちゃんがミートソースを食べたいと言う。スパイスの色々入った本格的なのは嫌だとのたまうので、ハインツの缶詰物で手抜きしてみたら、死ぬほどマズイので腰が抜けた。あんなものはミートとは呼べない。

 店は日曜日としては大混雑だった。

96.09.02 月

 今日から休み。7月31日に搬入した作品を作り終えてから、ずーっと後片付けをしないままで置いておいた仕事部屋を徹底的に掃除する。しなきゃ、しなきゃと思いつつ、1ヶ月間も放っておいたのだ。

 実は、この作品は霞ヶ関ビルの30階にあるNTTデータのプレゼン・ルームに1ヵ月展示するために制作したもの。刑場に引かれながらも、間に合わないわ、間に合わないわとイバラのセーターを編み続けた白鳥の王子のお姫さまみたいに必死で搬入日当日まで頑張って作ったというのに、初日にたまたま来あわせたNTTデータのおえらいさんが「これはここにはふさわしくない!」と言ったとかで、半日で撤去となったといういわくつきの作品なのでした。(写真は、搬入日に現場で撮ったもの。高さは1.8m)


 実際に作品制作を依頼してきた孫受けのプロデュース会社の人はとにかく平謝りで、この人責めても仕方がないわという気になり、引き上げてきたんだけど、やっぱり、どこかで僕も深く傷ついていたんでしょうね、仕事部屋片付ける気力も出てこなかったというワケでした。
 
 彩色したスケッチまで出させてOKしといて、ひ、ひどいわ! いつか実物を見て貰えるような機会を設けるつもりです。(個展かぁ、いつのことになるやら…)

96.09.03 火

 友人のジュンちゃんが開いた個展を見に、銀座のギャラリーに行く。彼の個展を見るのは初めてで、ラグビー部か柔道部といった雰囲気の野郎系の方が、こんなにも硬質で静かな、ある意味で古典的な作風の絵を描くとは新鮮な驚きだった。
 絵を言葉で説明するのは至難の業だけど、ま、強いて言えば、非常に描き込んだE.ホッパーといったところか。
 帰りに、資生堂ザ・ギンザアートスペースでやっていたウィジー写真展も見る。路上の死体や火事の現場などを撮っているんだけど、全体としては、なんか暖かい物の見方が伝わってきて、見ながらふっと口元がゆるむような写真だった。

96.09.04 水

 弦ちゃんは今月、週2回休む体制に入ったので、今日、明日とお休み。友達と富士急ハイランドに遊びに行った。おさんどんをしなくて済むと思ったら、つい昼間中寝てしまった。はー。

 7時に床屋を予約して、散髪。帰ってから、マックのバックアップをとったりしてたら、あれよ、あれよという間に時間が経ってしまった。こんなこと読んでも仕方ないわね、ごめんなさい。

 持っているトランプを引っぱり出してきて、デザインのことなど色々考える。実は、「ドラァグ・トランプ」(*1)を作ろうと思っているのです。マーガレットさん(*2)も参加してくれると言ってたからゴーカなものにしなくちゃねぇ。

(*1)ドラァグ・トランプ/53人分のドラァグ写真を集めて、それをトランプに仕立てようというもの。
きっと知り合いだけでは間に合わないと思うので、この日記の読者で自慢のドラァグ写真を持っていたら、僕宛にメールに添付して送ってくださいませぬか? (できるだけ大きいファイルでね) 
 僕のトランプに参加して、あなたの美を永遠に留めよう!ちなみに僕はマックを使ってます。

(*2)マーガレットさん/知る人ぞ知る、ドラァグ界のスーパースター。Friends of Dorothyでも本の情報ページ「ex.libris」を担当している小倉東さんのこと。彼(彼女)の写真は、その「ex.libris」の人物紹介に載ってるので、見てね。彼のドラァグには哲学があります。


96.09.05 木

 エントツちゃんからの情報。

 8月23日(金)に新宿保健所に於いて、同性間感染の予防と対策に関する連絡会議が開かれ、彼もそれに参加したそうだ。エントツちゃんは、厚生省HIV疫学研究班が行っている調査研究に問題があると腹を立てていた。

 参考資料として、色々持って来てくれたのだが、とにかく漢字ばかりのややこしい文章なので、かいつまんで、その調査研究というのを説明すると、

 ゲイサウナなどに出向き、そこのゴミを細かに調査して、そこに、どれだけのコンドームが含まれているかから、コンドームの使用状況を推測し、そのコンドームに糞便(ウンコね)が付いている割合から肛門性交の割合を弾きだし、コンドーム中の精液を調べてHIV、梅毒などの感染者の割合を割り出そうとしているというもの。

 この調査は平成7年から行われているそうだ。その調査結果から導き出される結論として、「コンドーム使用率の極めて低いことが推測され、コンドーム使用のための啓発を促進する必要があるものと思われた」んだそうだ。

 これらの調査に対して、アカーや南定四郎氏などは、調査方法そのものにも問題があり、そこから導き出される調査結果に信頼性が低く、そのような調査結果が一人歩きして新たなるゲイ差別を引き起こす可能性もあると、調査そのものの中止を要求したそうだけど、これからも、この調査は続けると研究班は言っているそうだ。
 そう言えば、バレードの後のプライド大会で南さんが、厚生省に対しての抗議文を読み上げてたのは、このことだったのね。堅苦しい文章を、ただ読み上げられても、聞いてる僕にはよく飲み込めなかったので、聞き流してしまったんだけど、注意を払わなかった人って多かったんじゃないかな。全然話題にならなかったもの…。

 でも、実際にゲイサウナなどに遊びに行っている人たちの話を聞いても、「このご時勢に、コンドーム付けないでパックバンバンやってる子がけっこう多いんだ」って言ってるし、なにも、そんなゴミあさりしてご大層な結論導き出さなくても、コンドーム使用の啓発にもっともっとエネルギーをかけるべきだってことぐらいわかんないのかしらねぇ。だいたい、ゲイのHIV感染が増えているという事実があったからこそ、こんな調査を始めようと思ったんでしょう? これが、お役人の発想なわけぇ。なんか暗い気分になってきちゃう。

 こういう調査に対しては色々な意見があるだろうけど、とにかく厚生省がこういうことをやっている事実は、できるだけ多くのゲイに知らせるべきだと思う、と言うエントツちゃんに同感したので、ここにも書いておきます。

 ホントに大ざっぱに書いたので、もっと詳しく知りたい方は、資料がタックスノットに置いてありますのでどうぞ。

96.09.06 金
 
 ひぇーーー! 借りたHビデオにお客さんが出てた! こ、こんなに毛深かったのね、彼は。お尻の割れ目も毛で見えないくらい。でも、なんだか照れ臭くって、とてもHな気分にはなれなかったわん。

 ワラちゃんから 松風のくずきりをもらう。

96.09.07 土

 フライイングステージの「美女と野獣」を見に行く。蜘蛛女のキスを関根さんが翻案。蜘蛛女のキスを見事に換骨脱胎、自分の世界にしてみせる技量は見事。いやぁ、面白かった。
 いつもながらサービス満点盛り沢山で感心するんだけど、ただ、もうちょっと刈込んで欲しいなぁ。
 関根さんはなんだか生き生きしちゃってほんとに元気。フルスロットルの関根さんを迎え撃つ野口君は少しパワー不足だったかも。もう少し野郎系の男の凄味みたいなのを出して対抗してくれたら、バランスとれたんだけど…。野口君は最初から関根君の手の平でいいように転がされてる雰囲気だったなぁ。
 でも、でも野口君は実にカワイーーー!!


96.09.08 日

 「二丁目からウロコ」を読んで来たという29歳のゲイと色々話をした。お店も閉店間際で他に誰もお客さんが居なかったので、彼もリラックスして自分自身のことを話してくれた。
 12年前から二丁目にはゲイ雑誌を買いに来ていたいうのに、ゲイパーに入るのは、うちがほとんど初めてなんだそうだ。ゲイの友達は一人もいないし、男の人とセックスはしたことあるけど、付き合ったことはないという。
「タックさんの本にも書いてありましたけど、僕自身の中に強いホモフォビアがあるんだと思うんです。でも、この前、初めてここに来て、何にも話はしなかったけれど、いろんな人が楽しそうに話しているのを聞いているだけで、すごく落ち着けて、嬉しかったんです。ひょっとしたら、僕も変われるかもしれないって思いました…」

 まだまだ、彼のような人が沢山いるんでしょうねぇ。外からの情報にも、自分の内側からの声にも耳を閉ざしたまま生きてきた人が。

96.09.09 月

 今日はおフクロの命日。写真に向かって搬若心経を唱える。死んだ人との僕なりの付き合い方。

 弦ちゃんがタコ焼きを食べたいというので、お好み焼き屋に行く。タコ焼きだけじゃ物足りないので、弦ちゃんはもんじゃ焼きに初挑戦。前に食べた時にも思ったけど、これって世界でもかなり奇妙な食べ物の部類に入るんじゃないかしら。

 バディから今度新しいコミック誌「パレード」が発刊されるとかで、依頼された原稿を書く。








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