BEETHOVEN Symphony No.10
ウイン・モリス指揮 ロンドン交響楽団
1988年製作


「ん?ベートーヴェンに十番なんてあったか?」

 って、思う向きもおありでしょうが、あったんです。ちょびっと残された草稿から作っちゃったモノなんですけどね。

 イギリスの著名なベートーヴェン研究家のバリー・クーパー博士が第十のためと思われる草稿を発見。そして「もしベートーヴェンの音楽スタイルの知識を持ち、それ以上に彼の通常の作曲法を知っていれば本人が想像していた様な楽章に近いものを創る事は可能であるはずだ」と自分がその適任者であると確信しちゃったからさぁ大変。
 草稿では大半のハーモニー部分のアレンジ等は存在せず、どの様なオーケストレーションにするかの指示もほとんど無く、まさにそれまでのベートーヴェンから想像し創るという手探り的な方法で作っちゃったんですよ、この博士。でも出来たものは第一楽章のみ。まぁ、その辺は交響曲全部を完成させるだけのモノが残ってなかったのでしかたないでしょう。
 まぁ、これがベートーヴェンの作品だと言えるのかは、はなはだ疑問。リスペクトというよりも研究成果+研究者の暴走でしょうか、これが科学者・化学者だったら大変な事に…(笑)。
 内容的には、僕があまりベートーヴェンを好きでないせいもあるのか非常につまらないです。一般的な評価としても人気がないようです。ある意味当たり前の様な気もします、なにせほとんど作ったのは博士ですもんね、「クーパー博士の自己満足」と評価されても致し方ないでしょう。

 でも当スタジオ=僕は違います。たとえ内容が面白くなくても、その存在を考えてみると非常に面白いじゃないですか!
 作曲家のひらめきと研究家の思いは、また別の所にあるものとの認識ができたり、前述の研究者の暴走気味な価値もあります。最大の価値はクーパー博士の講演が一緒にCDに入っていて、そちらの方が曲よりも長く収録されている事なんですけどね。(曲19:44秒/講演28:50秒)
 「自分しかいない」と思って作っちゃった人間の野心・探究心を評価するべきでしょう、なにせ曲が面白くないんだから。って、何のフォローにもなってないじゃん!(笑)。


日本盤カバーがこれ。「ウププ…」なデザイン。

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