バッド・フォー・グッド
BAD FOR GOOD

1983年 アメリカ
JIM STEINMAN


1. BAD HOR GOOD
2. LOST BOYS AND GOLDEN GIRLS
3. LOVE AND DEATH AND
    AN AMERICAN GUITAR
4. STARK RAVING LOVE
5. OUT OF THE FRYING PAN
     (AND INTO THE FIRE)
6. SURF'S UP
7. DANCE IN MY PANTS
8. LEFT IN THE DARK
9. THE STORM
10. ROCK AND ROLL DREAMS COME TRUE

  こちらは邦題。
1. バッド・フォー・グッド
2. さまよえる世代
3. 愛と死とアメリカン・ギター
4. 荒野に叫ぶ愛
5. フライパンから炎の中へ
6. 渚の誓い
7. 死ぬまでロックンロール・ダンス
8. 暗闇にひとり
9. ザ・ストーム
10. ロックンロール・ドリーム


 ロック・オペラと言われるものがあります。オペラ風にアルバムが構成されているものもあれば、1曲がオペラ風に構成されているものもあります。題材も日常的なもの、ファンタジー等なんでもあり、そのサウンドも日記をつづるような地味なものからドラマティックなもの等があり、その中でも「大げさ」「やりすぎ」加減が他の追随を許さない極地に達しているのがこの本作です。(聴いていて疲れる人多数)
 このレビュウの主人公=ジム・スタインマンの作風は一聴してすぐに解るもので、一般的に有名な曲として「ヤヌスの鏡」の主題歌「今夜はANGEL」(歌:椎名恵)と「スクールウォーズ」の主題歌「ヒーロー」(歌:麻倉未稀)を思い浮かべていただくと(どちらも原曲に忠実なアレンジなので)その極端に大げさなアレンジの一端がお解りになると思います。

 同じように、QUEENもまた、オペラティック/ドラマティックな楽曲と曲構成で知られていますが、QUEENはイギリス的な湿り気というかウエットな感じがします。
 ジム・スタインマンの一連の作品はその旋律の明解さやストリングスの流れも非常にアメリカ的というか、オペラというよりもブロードウェイ・ミュージカル的な明るさと享楽さが聴き取れます。
 若者の青春と享楽(ロックン・ロール)がドラマティックに書き綴られた詩(詞)と感情起伏の激しい若者を写し出すかの様に動と静を繰り返す、劇的な楽曲と曲構成。
 そして、これは誤解されやすいのですが、ドラマティックだからと言って、結してヘビィな曲調ではなく、多種多様な曲調に溢れ、むしろポップでさえあります。彼はロックとクラシックを幼少の頃から同系列で聴いていたともいわれ、はたまた学校で演劇を専攻していたり、最初は劇作家としてデビューしたこともあってこの様な彼独特の作風が確立されていったのでしょう。

 その最初の爆発が1997年、ミートローフの「地獄のロックライダー(BAY OUT OF HELL)」でした。この作品でイメージコンセプト、作詞・作曲、キーボードと八面六臂の活躍を見せ、彼の名声は一気に上がります。この「地獄の〜」も本作と同様にオペラティック/ドラマティックで破綻寸前の様な濃ゆい音世界。その意味では「地獄の〜」と「バッド〜」の両方を聴いても同じ様に聴こえてしまったりもしますが、それは当時から自分のやりたい音楽の傾向がはっきりしていたと受け止めるべきでしょう。1983年の本作「バッド〜」ではミートローフと言う表現者がいなくても、自分の世界を表現出来るんだと言う自負が表れています。
 ここで重要なのが、そんな破綻寸前、極端に過剰でエキセントリックな世界を引き止めているプロデューサーのトッド・ラングレン。2つのアルバム共に彼がプロデュースを担当しています。様々なバンドのプローデュ−スをこなせる、バランス感覚に優れた彼の手腕がなければこれらのアルバムは生まれなかったと思われます。
 
 主要な楽曲は1曲目。「一生バッドに生きる」、完全なジム・スタインマン節の大げさな仕上がりで、この曲を乗り越え、興味が湧けばもう貴方も虜。4曲目はどっかで聴いたイントロで、こっちが元ネタ。他にも朗読、ロックンロールあり、オーケストラ楽曲あり、バラードありとてんこ盛り状態。そんな多様さと享楽さ加減が1つにまとまり、物語は「ロックンロールの夢はかなう」で終幕を迎えます。全編を通して聴けばやはりミュージカル。

 ジム・スタインマンの時系列は1977年に「地獄の〜」が来て1981年に本作、そして同年にミートローフのセカンド「デッド・リンガー(DEAD RINGER)」となるのですが、最初の2枚を聴けばもうおなか一杯なぐらいの満足感。そのうえ1993年には「地獄のロックライダー(BAY OUT OF HELL: BACK INTO HELL)」なるもの(さらに輪をかけて濃ゆい!)までが製作され、一気にこの4枚を聴くと「もう許して状態」に陥ります。ちなみに「地獄の〜」では本作の「ロックンロール・ドリーム」「さまよえる世代」「フライパンの中から炎へ」がリメイクされています。