THE LEFT BANKE


THE LEFT BANKE

1967年 アメリカ

1. PRETTY BALLERINA
2. SHE MAY CALL YOU UP TONIGHT
3. BARTERERS AND THEIR WIVES
4. I'VE GOT SOMETHING ON MY MIND
5. LET GO OF YOU GIRL
6. EVENING GOWN
7. WALK AWAY RENEE
8. WHAT DO YOU KNOW
9. SHADOWS BREAKING OVER MY HEAD
10. I HAVEN'T GOT THE NERVE
11. LAZY DAY


TOO

1969年 アメリカ

1. GOODBYE HOLLY
2. THERES GONNA BE A STORM
3. SING LITTLE BIRD SING
4. NICE TO SEE YOU
5. GIVE THE MAN A HAND
6. BRYANT HOTEL
7. DESIREE
8. DARK IS THE BARK
9. IN THE MORNING LIGHT
10. MY FRIEND TODAY



  良し悪し?があるにせよ、ビートルズの「イエスタディ」が音楽界に与えたものは大きく、ビートルズ自身もクラシック風味の曲をアルバム内で発表していく中、その部分をサウンドの核としていくバンドが現われます。

 ここで紹介するレフト・バンクはそんなバンドの代表格。アメリカのバンドらしからぬ(超偏見!)ジェントルなポップ世界を展開、1stアルバム収録の代表曲「いとしのルネ」にその事実が集約されています。
 クラシックの要素を取り入れていると言ってもけっして重くならず、「イエスタディ」の様な普遍的「ポップス」である事が重要。哀愁を漂わせる流麗なメロディが「いとしの」という邦題にピッタリ。切ないんですよ…。そんな時に20回は聴く事のできる大名曲です。アイデアに富んだ3声コーラスもまた彼らの武器。その上、曲が良く出来ているんですから言う事ありません。
 似た傾向のグループとして、ELOのジェフ・リンのそれ以前のバンド「IDLE RACE」があります。どちらもフラワー/サイケデリック臭く無く、(ビートルズを通過した)クラシックの要素を取り入れ、ポップな音世界を展開しています。
 しかし、やはり「IDLE RACE」はイギリスのグループ。ボードヴィル等の欧州的音楽要素をぶち込んだり、アルバムにトータル感を持ち込ませたりとミニ・ビートルズ的。
 対してレフト・バンクは同様な背景を持ちながらも、コーラスをも武器としている事からよりポップ側に寄っている印象。どちらも好きですけどね。録音・サウンド環境は確実にレフト・バンクの方が良いです。代表曲のほとんどを作曲している中心人物であるマイケル・ブラウン、彼の父親がレコード会社の重役でスタジオを持っていた事から録音・サウンドの環境が良いのでしょう。

 67年発表の1st「LEFT BANK」は1stアルバムらしい粒よりのポップな曲とジェントルなストリングスを生かした哀愁漂う曲を満載した傑作。シングル曲に引っ張られるだけでなく、他の曲もメロディは立ってるし、ピアノやハープシコードををリードにして、小気味良いロックが楽しめます。最終曲だけはファズがかったギターとボトムの利いたベースを主体にした当時流行りのサイケっぽい仕上がり。
 この1stを出した後、コンサートでのトラブルから中心のマイケル・ブラウンが突然の隠遁生活、またメンバーの了解を得ずに違うボーカリストでシングルを発表する等のゴタゴタがあり解雇。グループも失速して行きます。
 でもそんな中で作られた69年発表の2nd「TOO」は滅茶苦茶良い出来。中心のソングライターがいなくなった事を感じさせない相変わらず素晴らしい音作り。マイケル・ブラウンが在籍時の7も入っています、その曲がとても素敵なのは御愛嬌、逆にこの曲が入ってる事でメンバーの別の味、才能も引き立って良い感触を受けます。
 グループの特徴であるクラシカルな部分を拡大してコーラスパートも強化。曲のアレンジメントはサージェント・ペパーズ以降の拡大解釈でまさにやり過ぎ。
 しかし僕的には全く問題がありません。だってそういうやり過ぎ大好きですから!凝り過ぎちゃってるのが曲を散漫にするとの意見もありますが、彼らには見えてたんです、僕らも感じましょう!曲のクオリティが下がってる訳でもないし、前作の小気味さはあまり聴こえてきませんがメロの良さはアレンジに負けてません。

 しかしアルバムは完成度の割に売れませんでした。ヒット曲の不在と前述のゴタゴタがグループの勢いをそいだ事、アルバムが出るまでの期間が長過ぎたのも原因でしょう。1年以上アルバムが出ないのは当時の業界的には致命的だったと考えられます。内容が良くても時期に乗れなかった不運です。でもこうして今、その作品を素晴らしいモノとして聴けるんですね。「何故売れなかったんだろう?」って思っても詮無いです。



 その後、レフトバンクは解散します。しかし何故か、元リーダーのマイケル・ブラウンがレフトバンクと同傾向の新バンド「MONTAGE」を結成します。1stの音楽性+もう少し凝ったサウンドで、1stと2ndの間にアルバムがあったらこんなのになってたかなぁ?って感じですね。


MOTAGE/MONTAGE(1969)

 アルバム未収録、メンバー未了解のモノを含む全シングルが入った編集盤はこちら。マスタリングをライノレーベルの名チーム、ビル・イングロットとケン・ペリーが担当し、高音質に仕上がっています。


There's Gonna Be A Storm
THE COMPLETE RECORDINGS 1966-1969 (1992)