今回の御紹介は、そのポップさにおいて、ブリティッシュ・ポップグループの中でも群を抜いているグループ、パイロットの鍵盤奏者ウイリアム(ビル)・ライオールの唯一のソロアルバムです。
そんなポップ・グループの鍵盤奏者のソロですから悪い訳はありません、系統はまさにブリティッシュ・ポップ、切れのある甘さはまさにパイロット直系。って、メンバーだったのだから当たり前ですね。全員がそろって参加している曲はないものの、脱退後であるものの、パイロットのメンバーが参加しているのもポイントです。
全編を通しポップさ溢れる鍵盤プレイ満載で、パイロットの2枚目になって開花した感のあるポップな鍵盤プレイがここに来てさらに進化。彼の操るアープ・シンセサイザーがまたイイんだ、これが。曲やアレンジに対する彼の人柄が表れているのか?とても個人的には好きなプレイなんですよね。
テクニックを強調せず、曲を盛り上げつつも印象的なフレーズ・音色を残すプレイがとても素晴らしいです。その辺はバンドで培われたものなのでしょう。
表題の1曲目から2曲目への間髪入れないつながり方はもうたまらない程素晴らしく、出だしにてもうノックアウト状態に。後は多彩な曲調の収録曲群、イイですねこの感じは。ポップアルバムの見本の様ですね。
大体ソロアルバムなんか出したりすると、趣味丸出しや持ち楽器中心になるのですが(僕はそういうのも大好きですが)メインのボーカリストでない彼が、ここまでバランスの取れた超ポップな作品を出すのはとっても興味深い事です。最終曲での2曲目のメロディをモチーフに取り入れた部分の作りなんかは一筋縄で行かない「単なるポップアルバムで終わっていない」
一面も聴かせていています。
曲を彩るストリングス・アレンジもまた秀逸で、エルトン・ジョンのアレンジャー、ポール・バックマスターを主に、ビートルズ「LET
IT BE」の「THE LONG AND WINDING ROAD」のストリングスアレンジや自身のバンド「RAH BAND」でも有名?なリチャード・ヒューソン等がポップスにおけるストリングス・アレンジの好例とも言える良い仕事をしています。ストリングスと鍵盤の絡みもまた聴きどころ。
この後の彼はあまり目立った活動はなく、89年にエイズでお亡くなりになってしまいました。生きていたら今頃パイロットの再結成にも参加していたかも…なんてのは想像でしかありません。
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