神秘への旅路
No Earthly Connection

Rick Wakeman and The English Rock Ensemble

1976年 イギリス



1.転生
Music Reincarnate
2. 転生/パート氈F警告
Part: The Warning
3. 転生/パート:創造者
Part: The Maker
4. 転生/パート。:宇宙人
Part。: The Spaceman
5. 転生/パート「:認識
Part 「: The Realisation
6. 転生/パート」:審判
Part」: The Reaper
7. 囚人(めしうど)
 The Prisoner
8. 失われた連環
The Lost Cycle

 

 「キーボードの魔術師」とうたわれるYESのキーボーディスト、リック・ウエイクマン。73年の初ソロ作「ヘンリー8世の6人の妻」以降、ソロ作品、バンド名義、サントラ、息子との競演作等々、大量の作品を量産。まさにそんな意味でも魔術師、いや、練金術師かな。
 その多々の作品群の中でも、なぜかロシアでだけでしかCD化されていなかった本作が日本でやっと CD化されテープの劣化やアナログの磨耗を気にしなく聴ける様になりました。(さらに僕は中古で買ったため気になりまくり)
 妙なジャケの絵は、一緒に入っているミラーフィルムを円筒にしてジャケの円の部分に置くと、ジャケで歪んでいたリックがちゃんとした画像になるという、特殊ジャケ。こんなトコまでしっかりと復刻してくれるのはとっても有り難い。

 基本的に彼の作品はインスト物が多いのですが歌物の作品もあり、けっしてメジャーとは言えない(なんだそりゃ)ロック/ポップセンスと一聴して彼と解る持ち味「手クセ」以外の何物でもないキーボードプレイを駆使した一風変わった作品に仕上がっています。 ただ前述の多量の作品群のため前述の「手クセ」がマンネリ化するという事態に陥ってしまっているのものも多々ありますが(笑)。

 その一風変わったロック/ポップセンスが開花した本作に至るまでの過程を見てみましょう。ソロ1枚目では魅力全開だけど多少気負い過ぎたプレイも目立ち、曲自体も繋ぎ合わせっぽく、アレンジもイマイチの印象も。なにせ初のソロ作ですからね、でも売れちゃったのはタイムリーだったから。出世作の2作目「地底探検」、3作目「アーサー王と円卓の騎士達」ではオーケストラと競演、壮大さが増した分大仰過ぎて作曲家、編曲家としてのセンスは理解出来るものの、肝心のシンフォニックかつカッコ良いキーボードプレイが埋没してしまうきらいもありました。
 そして76年に発表されたこの作品、それまでの「大仰」というイメージと前述のロック/ポップセンスが微妙な形で成り立ち、妙にこ難しそうなテーマを表層的かつ、それを深遠そうにみせるウエイクマン独特の作曲センスが初めて発揮された傑作です。ロックバンドとブラスセクションによるオーケストラ、English Rock Ensambleを率い、ある程度のプレイを他のメンバーに任せているせいか、曲の押し引きも以前の作品に比べてスムース。そのせいか彼独特の手クセによるカッコ良いキーボードプレイが目立つ目立つ。
 曲は各楽器のアンサンブルによるシンフォニックなロック。僕はこちらの方がオーケストラを率いていた頃よりも大好きです。各曲も小回りの効いた起伏の激しい曲調がロック的なダイナミズムとなり、その分彼のキーボードプレイも生き生きとした印象に。そしてその事が静の部分のプレイをより感動的にしています。
 多数のキーボード、シンセやオルガン、メロトロン等によるキーボードアンサンブルもまた、今までの作品よりはるかに進歩の跡が。オーケストラを廃した事が結果的にキーボードアレンジに良い影響を与えています。
 やはりロックバンドのキーボード奏者なのですよ、彼は。バンド形態に入ってこその「リック・ウエイクマン」なのでしょう。この後に所謂キーボード主体のアルバムを製作しますけど・・・、面白いんですよ、でも好みの問題なのかも知れませんが、やはりこうしてバンド形態での方が断然にカッコ良いんです。
 そしてもう1つの特筆は、けっして上手くは無いものの大仰なサウンドに合う味のあるヴォーカル(VO.アシュレイ・ホルト)、歌のパートが充実しています。キーボーディストのアルバムでこれだけ歌が充実しているのも珍しい。
 歌詞は観念的、哲学的で難解との批判もあるタイトル・内容ですが、彼のお得意であるイメージによる作曲法なので、そんなにこ難しく見る必要はなく、聴く方もそんな様なイメージを楽しめば良い物だと思います。
 所謂「プログレ」系の方々のクセなのでしょうかね、こう言った抽象的なイメージやこ難しいテーマを選ぶのって。聴く方もそんなにかしこまる必要もないでしょう、深遠な思想にしても理解出来なければどうしようもないし。僕だって(本作に関して言えば)言葉のイメージとしてとらえてますからね、音と言葉の融合したイメージを楽しむ。そんな音楽なのではないでしょうか。