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−はじめに−

 小泉首相の靖国神社参拝によって、今、日本は、外交的に大変難しい立場に
立たされています。 近隣の国々の人たちにすれば、甚大な被害を受けた戦争を押し進めた
指導者たちに対して(も)、首相が公然と「感謝」するとなれば、
黙っていられるはずがないと思います。

 私は、(戦没者に限らず)自分の祖先や、故人たちに感謝の心を捧げることは、
すばらしいことだと思います。
逆に、戦争を忌み嫌うあまり、自分の先祖までをも忌み嫌ってしまうとすれば、
それはあまりいいありかたではないだろうと思います。
しかしそれは、時の首相や国会議員が公式に靖国神社に参拝しても
いいということにはなりません。
私が参拝に反対する理由は、4つあります。



○故人たちのこころ

 まず1つ目ですが、はたして、自らの命よりも日本の国益を優先した人たちは、
日本と近隣諸国の間の関係を悪くし、平和とは逆の方向へ日本を
押し進めたがっているか、ということです。
欲しいのは真心であって、格好ではないのではないでしょうか?
票を得るための道具にされて嬉しいでしょうか?
(小泉総理も、総裁選の際、自民党の有力支持団体である日本遺族会に、
「靖国に参拝する」ことを約束していたことが報道されていました。
[毎日新聞2001/5/3朝刊など])

その意味では、「公式参拝」こそが、故人たちの心をないがしろにする
行為なのではないかとさえ、私には思えます。
本当に戦没者たちを思うのなら、家族に代参してもらい、一人静かに、
誰にも知られず、心を込めて遙拝するなどすればよいのではないでしょうか。



○千鳥ヶ淵墓苑

 「靖国神社が戦没者をまつる唯一の場所だ」というようなことを
言う人がいますが、実際には、千鳥ヶ淵墓苑というものが存在します。
千鳥ヶ淵墓苑とは、厚生労働省が管理する国立墓苑で、身元の分からない
戦没者の遺骨が納められており(靖国神社には戦没者の遺骨はありません)、
当然無宗教です。
また、兵士だけでなく、民間人も対象になっており、空襲で亡くなった
方々なども、対象になっています。
こちらを訪れ、追悼することには、何の違法性もなく、問題も起こりません。
(小泉首相も、8月15日、千鳥ヶ淵墓苑に行っています。)
「靖国しかない」というわけではないのです。
これが2つ目の理由です。



○近隣の国々の人たちの心の痛み

 日本に侵略を受けた国の人々は、非常にこの問題に対して敏感です。
それをすぐに「外圧」の一言でくくり、抵抗しようとする人もいますが、
私は、今一歩、考えを進めてほしいと思います。
侵略を受けた国の人々の記憶には、今もまだ、戦争による傷が生々しく
生きているのです。
靖国神社への公式参拝は、その傷を、乱暴に踏みつける行為なのだと思います。
「人の心の痛みが分からない」
これが、今の日本の様々な問題(いじめや差別など)の根っこに
あるように思えてなりません。
千鳥ヶ淵墓苑では規模が小さいというのなら、拡充すればいいし、国立墓苑を
つくることで問題が解決するなら、つくればいいのではないでしょうか。
これが3つ目の理由です。



○私が反対する心情的な理由

 最後に、4つ目の理由です。
私が、祖父母の話を聞いたり、いろいろな方の戦争の体験を読む中で、
いつも思うことは、そのあまりにも大きい心の傷です。
戦時中を生きた多くの方は、戦争当時のことを話したがりません。
それは、あまりにも残酷な、地獄の日々だったからにほかならないと、
私は思います。
死んだ祖父は、終戦後も時々、突然家中の雨戸をすべて閉めさせたといいます。
空襲の恐怖が脳裏に焼き付いていて、時折そういう発作が起きたのだ
ということでした。

靖国神社は、その、地獄の苦しみを国民に強い、近隣諸国に甚大な被害を
与えた当時の指導者たちをも、「神として」奉っています。
その靖国神社へ、今の日本の指導者が参拝し、「感謝する」。
私は非常に強い違和感を禁じえません。
また、それが「票目当て」であると思うとき、強い悲しみがこみ上げてきます。



 私事になりますが、私は毎日、「戦争で亡くなった方々」に、追善供養しています。
別にどこに行くというわけでもありません。
日常の中で、故人の苦しみを思い、社会の発展と平和のために、
微力を傾けようと決意しています。
いろいろな方の話を聞き、読み、考える中で、それこそが本当の追悼の
あり方だろうと考えるようになりました。



2004年1月2日 追記

 新年早々残念なニュースが入ってきました。小泉首相がまたも靖国神社に参拝したとのこと。近隣諸国の理解も、国民の理解も得られていないのに、それを無視する形で参拝するのは、とても一国の首相の取るべき行動とは思えません。
 しかも今は、自衛隊の海外派遣が問題になっているとき。せっかく自衛隊員の方々が命を懸けてイラクへ行ってくださるのに、「日本の右傾化の象徴」と取られてしまう可能性も十分にあるんではないでしょうか。折しも今は、近隣諸国と協力して、北朝鮮の問題を解決して行かなくてはならない大事な時期です。タイミングも最悪。

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