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「日本人と中国人」
陳舜臣 著 集英社文庫

感想。
 この本を読みはじめて、次の文にいきなりハッとさせられました。
「日中の友好のうえにしか、この本の作者には安住の場所がない。」
陳舜臣さんは、日本生まれ、日本育ちの中国人です。
ですから、当たり前といえば当たり前のことを言っているのですが、
僕には何か新鮮に感じられました。
日中の友好なしでは、ふつうに暮らすことの出来ない人々がいる、
ということに気づかされたからかもしれません。頭でではなく、心で。

 この本、とても薄いです。二百数十ページしかありません。
文章も平易で、気軽に読めると思います。
でも、読んでみて、とても勉強になりました。
内容は、全然、薄くないです。

 読了後、「これからの国際時代で大切なことって何かな〜?」と、
少し考えてみました。
そして、僕なりに出した結論は、
「バランス感覚」
「全体を把握し、俯瞰する能力」
「それぞれの国の文化の共通点・相違点をよく知ること」
「お互いを人間として信頼すること」
の、以上四点。
ついでに、僕はまだまだだ、ということに改めて気づきました。(^-^;
でも、そのことに気づけるのと気づけないのとでは、
えらい違いだと思います。
だから、読んで良かった。(^-^)

 ただ、少し残念だったのは、第二次世界大戦関連のことが
ほとんど出てこなかったことです。
あまりにテーマが大きすぎたからでしょうか。
ページの都合からでしょうか。
それとも、激烈なバッシングが予想されたからでしょうか。
文化の大恩人の国を下に見、弓を引いたわけですから、
悪いのは日本に決まっていますが、陳さんのような方はどのように
とらえているのか、とても知りたかったです。

 本書を読むと、中国人のことだけでなく、私たち日本人のことも
よく分かってきます。
中国に興味を持っておられる方も、持っておられない方も、
御一読されてみてはいかがでしょうか。
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