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新幹線がなかったら
山之内 秀一郎 著 東京新聞出版局

 この本は、僕の親しくしている友人から貸してもらいました。

早めに読んで、すぐ返すつもりだったんですが、なかなか読み切らなくて、

しかも、読んだら読んだで、今度は感想文を書かずに入られない気分になって、

さらに筆がなかなか進まず、とどめになかなか書く時間が無かったので、

とんでもなく長い時間借りっぱなしになってしまいました。

ほんと、ごめんなさい。m(_ _)m


 この本、「新幹線がなかったら」という、なかなか楽しそうなタイトルですが、

実は、「新幹線がなかったら」というテーマで書かれているのは、最初の方だけで、

その他は、鉄道の歴史や、日本と海外の鉄道事情など、豊富なデータや資料を通し、

紹介していたりします。

また、そのなかで、新幹線が登場するまでの変遷や、著者自身の苦労などの

話も書かれていました。

特に、国鉄時代のさまざまな苦労話は、とても貴重だと思いました。

また、「組織」というものの難しさなども、行間からにじみ出てくるように

感じました。


 この本では、その他にも、国鉄改革のさまざまな側面から見た意味、

安全性の追求の姿勢、JR東日本の様々な試行錯誤など、さまざまなことを

知ることができます。


 この本を読んでいて気づいたのは、安易な自慢話に走ることがほとんどない、

ということでした。

「それってすげぇじゃんっ!」とか、読者が思うような場所でも、

山之内さんは、そんなことはない、そんなことはない、まだまだなんだ、

という感じで書いておられました。

本当に謙虚(傲慢になることへの怖れ?)で、実にすばらしいなぁ、

と思いました。

おそらく、数多くの修羅場をくぐり抜けてきたからこそ、そういう人格が

磨かれたのだろうなぁ、と思います。


 印象的な話もいくつかありました。

山之内さんは、仕事で忙しく、なかなか娘さんに関わってあげることが

できなかったそうです。

この本ではそのことに触れ、ご自身のことを「最低の父親」と

おっしゃっておられました。

JR東日本の会長といえども、やはり「一人の父親」なんですね。(^-^)


 最後に、この本を読んで思ったことは、やはり、「組織」と言っても、

所詮は「人」で決まるのだなぁ、ということでした。

人は、壁にもなれば、エンジンにもなります。

人々の姿勢が変わらない限り、組織も変わりません。

あとがきの「最近の日本の状況を見ていると、国全体がかつての

国鉄病にかかっている思いがする」という指摘を思うとき、国民一人一人が

自分の利益しか考えず、人間としての成長への努力を止めたならば、

日本という「組織」も、良い方向へ進むことはできないのだろうなぁ、

という思いに駆られます。

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