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「おろしや国酔夢譚」
井上靖著  文春文庫


作品の内容について

この話は、日本の神昌丸の漂流と、その乗組員の人生を描いたものである。
結局、17人の乗組員の内、2人がロシアに残り、1人が北海道で死に、
2人が江戸で幽閉される。他の人びとはみな、途中で死んでいく。
10年にも及ぶ放浪の後、太夫たちは、自分たちを
理解できる者が誰もいない、という「孤独」におちいった。
井上靖氏の著作「天平の甍」も、何十年もの苦労が、
文字通り「水の泡」になる話であった。


井上靖氏について

 まだまだ私は氏の著作を数多く読んではいないが、氏の著作には、
どこか「無常観」的な、鋭い人間に対する洞察が
根底に流れているように思う。
 しかし、逆にとらえると、氏はそのような、ある意味で
「むくわれない人びと」に光を当てようと
しているのかもしれない。
少なくとも、書かれることで、彼らは私たちに認識される。
そしてそれは、他の「むくわれない人びと」に対する、
私たちの洞察へとつながっていくのである。


この小説に学んだこと

▼「自分とは違う者」に対するとき、次の3点が
重要であると思った。
・寛容であること
・人間として信頼すること
・同じ一人の人間として話をすること

▼自らも、いろいろなものを見、聞き、味わい、感じ、触れ、学び、
異質なものとの接触を活発にすることが大切。

▼自分が周りにとって「異質な者」となった場合には、
理想を持ち、常に行動し、希望を捨てないことが、
好ましくない状況を切り開く鍵になる。

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