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森田療法の本×2
神経衰弱と強迫観念の根治法 ノイローゼ克服への必読の原典
森田正馬著 白揚社
森田式精神健康法 不安にとらわれない生きかた
長谷川洋三著 三笠書房

 みなさんは、「神経症」という状態をご存知でしょうか。
 身近なところでは、「家の鍵をかけてでかけようとしても、
本当に鍵がかかっているのか、不安で何回も確かめずにいられず、
外出することができない」
「何を触っても不潔な感じがしてしまい、何回も手を洗わずに
いられなくなった。ついにはものに触れることができなくなって
しまい、生活もままならない。おかしいと自分でも思うが、直そうと
すればするほど、症状はひどくなっていく」
といった状態が「神経症」にあたります。
他にも、さまざまな症状があります。
(「鼻の頭が視界に入っていて、それが気になって仕方がない」など。)
 これを直すための療法の一つが、「森田療法」です。
今回は、これからご紹介する2冊の本を読んで、同療法について、
勉強してみました。
(本を貸してくれた友に、心から感謝!m(_ _)m)
 1冊目は、療法を始められた森田先生の著作。

神経衰弱と強迫観念の根治法 ノイローゼ克服への必読の原典
森田正馬著 白揚社

 森田療法では、「あるがまま」という言葉が非常によく出てきます。
これがなかなか、本当に自分のものにするのが難しい概念ではあるのですが、
一つには、各人が自分の持っているものを「治そう」と焦るのではなく、
あるがままに認め、自分の「生活」を全うせよということだそうです。
それによって、たとえ体の不自由なものでも、神経症であっても、
一人前以上の、偉大な仕事ができる、と。
 桜には、桜にしかない美しさがある。
梅の花には、梅の花にしかない美しさがある。
桃の花には、桃の花にしかない美しさがある。
すももの花には、すももの花にしかない美しさがある。
桜は梅のように咲くことはできない。
梅もまた、桜のように咲くことはできない。
それぞれ、自分の持ち味を活かして咲くから、それぞれが美しい。
仏法では、これを「桜梅桃李」といって、よくたとえに出しますが、
「あるがまま」と深いところで通じてるような気がします。
 神経症そのものの話以外にも、この本では、今の医療にも通じる指摘が
いくつもなされていました。
たとえば……
「これらのことは、今日の医学があまりに専門的になり、限局した
知識で広く一般のことを忘れる弊害である。また、今日の医学が
あまり物質に偏して精神的なことを無視し、病ということに没入して
健康の方面を思わず、人工的なことに汲々として人間の自然機能を
没却し、生活状態の如何を度外視して、いたずらに病といえば
薬という迷妄にとらわれているという傾向が著しいのは、
大いに遺憾としなければならない。」p.16
「病は何のために治すか。目的がなければならぬ。
すなわち薬なり催眠術なりを用いるにしても、たんにその容態を
治すだけでなく、その人を治さなければならぬ。
ここに人生観というものがなければならぬ。」p.242
現在にも通じる、鋭い喝破であると思います。
次に、森田療法を紹介する、比較的平易な本をご紹介します。

森田式精神健康法 不安にとらわれない生きかた
長谷川洋三著 三笠書房

 森田先生の文章は、古くて少し読みづらいという方にも、
こういった本は読みやすいかと思います。
また、森田療法を実践するに当たってのポイントなども、まとまった形で
書かれているので、とっかかりにはいいのではないでしょうか。
 特に、この本の特徴は、神経症の方たちでつくっている、
「生活の発見会」の詳しい紹介をしている点かと思います。
 この本に、森田先生の弟子の高良(こうら)先生の文が載っていたので、
ご紹介したいと思います。
「『あるがまま』とあきらめの差異をわかりやすい例で説明してみよう。
プールの高い飛びこみ台からはじめて飛びこもうとするとき、恐怖感を
おこすのは一般人に共通の心理である。この恐怖感のために飛びこむのは
やめてしまうのがあきらめの態度である。またこの恐怖心がじゃまに
なるのだからと考えて、観念的にこの恐怖心をおこすまいとし、
この恐怖心がなくなったら飛びこもうとするのがはからいごとであり、
これが神経症に通じる道である。
 これは恐怖心をなくすことに重点をおくのであるが、必然的な心理に
たいするたたかいであり、不可能を可能にしようとする葛藤である。
そのため精神交互作用的に恐怖意識はいよいよ強くなり、飛びこもう
という本来の目的はなおざりになってしまう。」
「そこであるがままというのは当然おこるべき恐怖はそのまま受け入れて、
ビクビク、ハラハラしながら本来の発展的行為である飛びこむという
欲望によって飛びこむのである。
 恐怖心をなくして飛びこもうという二重の操作は無用である。その行動に
よって、結果として自信も生まれ、恐怖心もうすらぐのである」p.39
「『あるがまま』の実現は、なによりもまず『なすべきをなす』ことにある。」p.42
 少々長い引用になってしまいましたが、「あるがまま」を
非常にわかりやすくとらえることのできる説明だと思います。
 これは僕の勝手な直感、ないし推測ではありますが、森田療法を
学ぶ方法のうち、もっとも身近で、もっとも正確なのは、
おそらく森田先生の直弟子、高良先生の本を読むことなのではないか、
と思います。
 もちろん、実際に実践されている方の本ならば、なんらかの得るものは
あるはずですが、テーマがテーマだけに、やはりその人の主観というものが
はいりこんできてしまいやすいものと思います。
この本も、その点で、難がないとは言い切れない部分もあるように思いました。
 現在、ともすると森田療法に対する認知は十分ではないように感じられますが、
いずれ、もっと当たり前の療法になっていくのではないかなぁと思っています。
 医師になって、またいつか森田療法について学ぶ機会があれば、
次は高良先生の著作を読んでみようと思います。
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