実は、もうこの作品を読んだのは結構前になります。 |
早く感想文を書かなくては、と思いながら、今日に至ってしまいました。 |
まぁ、まだ全然読み解けていないし、当然血肉化できていないので、 |
感想文を書くこと自体、おこがましいとも言えるのですが……。 |
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この作品は、ゲーテがその生涯をかけ、悲劇の中で、それに負けず、 |
書きあげた作品です。 |
その重さをしっかりと認識した上で、読んでいかなければ、決してその意図と |
メッセージを正確に読みとることはできないはずだ、と思います。 |
その意味でも、やはり、僕はもう2、3度、この作品を読まなければ、 |
ゲーテの真意にふれることはできないように感じます。 |
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この作品は、僕にとって、初めて読んだタイプの小説でした。 |
読み終わるまであまり感動せず、読み終わってからかみしめると、 |
味(意味や価値)がうっすらと分かってくる、という感じ。(^-^; |
僕があまり感動できなかったのは、頻繁に出てくるギリシャ神話の |
キャラクターに、全然なじみがなかったせいかもしれません。 |
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○世界観について |
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この作品全体を貫くのは、キリスト教に基づく世界観でした。 |
しかし僕は、全体的に、どことなく、無理を感じてしまいました。 |
一番それが端的に現れているのは、メフィスト、すなわち悪魔に関する |
部分ではないでしょうか。 |
作品の冒頭(天井の序曲)で、ゲーテは主(おそらく神)にこう言わせています。 |
「人間の活動はとかくゆるみがちだ。 |
人間はすぐ絶対的な休息をしたがる。 |
そこで、わしは人間に仲間をつけて、 |
刺激したり、働きかけたりして、悪魔として仕事をさせるのだ。」 |
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しかし、ホロコーストや原爆などを見るとき、人間の生命に巣くう魔性は、 |
そんな生やさしいものではないことは、火を見るよりも明らかです。 |
ゲーテは、ナチスを、原爆を知らないのですから、 |
当然といえば当然なのですが……。 |
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○この作品のテーマとは |
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「ファウストでゲーテが言いたいのは、『自分の感情のままに生き、 |
したいことをすることが、正しいことだ』ということだ」という人がいました。 |
僕は、その解釈はおそらく間違っていると思います。 |
ファウストが最後に救済されたのは、「真理」を必死で追い求め続けたから |
であり、決して感情に流されたからではないはずです。 |
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「努め努めてやまないものは、救われる」 |
というゲーテの言葉にもそれはあらわられているのではないでしょうか。 |
その意味でも、 |
「最高の存在に向かって、絶えず努力せよ」 |
(悲劇の第二部第一幕) |
この言葉がこの小説のテーマのような気がします。 |
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ファウストは、 |
「わしがいつかのんびりして安楽イスに寝たら、 |
わしは立ちどころにおしまいになるがいい! |
甘いことばでいつかわしをたぶらかし、 |
いい気にならせたら、 |
わしを享楽で欺くことができたら、 |
それはわしの最後の日だ! |
(中略) |
わしが停滞したら、わしは奴隷だ、」 |
(以上、悲劇の第一部より) |
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と言っていますが、 |
「停滞とは、すなわち『死』である」というこのメッセージを、 |
どこまで深く受け止め、実際の現実生活の中で実践するかが、 |
この作品を血肉化したかどうかのポイントと言えるのかもしれません。 |
この作品では、「女性」も、大きなテーマの一つとなっているように思います。 |
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ある意味において、ゲーテには、「愛」「優しさ」「慈悲」「美しさ」 |
「恥じらい」「気品」に対する憧憬ともいえるものがあったのではないでしょうか。 |
たしかに、これらは女性が持ちうる美点の一部だと思います。 |
他にも、女性には「適応能力」「生活力」「本質を素早く見抜く眼」 |
「男性をも凌ぐたくましさ」「老いても変わらぬ純粋性」など、 |
多くの美点を見ることができます。 |
しかし、それらは(隠れているだけであるにせよ)必ずしも全ての女性の |
表面に現れているとは限りません。 |
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女性が、本来持つ美点を引き出し、活かし、輝かせていく方法とは何か。 |
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少なくとも、ファウストのような恋愛の仕方は、それに合致しないように思えます。 |
彼は、女性の「美しさ」その他におぼれ、自らを見失うのを常としています。 |
そして、グレーチヒェンの時は、双方を不幸にしてしまいました。 |
そして、彼は、その罪をいつか忘れてしまいます。 |
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僕は、一つには、女性が賢くなることだろうと思います。 |
くだらない男にだまされ、傷つき、不幸になっていく女性のいかに多いことか。 |
女性は、峻厳に男性の本質を見抜かなければいけないと思います。 |
また、女性も、しっかりとした、人生観、思想、哲学を持っていくべき |
なのではないでしょうか。 |
そうした根を持たないものは、浮き草のように、おぼつかない人生を |
生きることになりかねないからです。 |