この作品は、文章に面白さを求める人には、全く
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つまらないものかもしれない。特に奇跡も起こらず、
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派手な演出もあまりないからだ。逆に、全体に漂う
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暗い雰囲気に浸るのが好きな人には、とても面白い
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作品かもしれない。しかし、そういう読み方は、
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僕は非常に嫌いだ。著者も、おそらくはそういう
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読み方を求めてはいないだろう。
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この作品の登場人物は、それぞれとても個性的であり、
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生活臭、リアリティ、といったものは非常によく出ている。
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彼らを、あえて2つのタイプに分けてみる。
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一つは、権力や富を持ち、利己主義に陥って、人間性を
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失い、民衆を見下すようになってしまう人々。
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もう一つは、ただ生きようと必死になって、
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お互いに助け合う人々。
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どちらの方が、人間の生き方として崇高であるかは、
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明白であろう。しかし、前者の人々は、権力を傘に着、
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後者の人々を「赤」と呼び、「悪」と決めつけ、
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しいたげる。
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権力や富は、人間を非人間的に、そして傲慢に
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してしまう。そうした人々は、自らが、「権力」の
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魔性に踊らされている、哀れな操り人形であることに
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気づかない。
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生きるために盗むことが、必ずしも悪だろうか。
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貧しい人から搾取するのは善なのか。
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貧富の差では、人間の価値は決まらない。
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しかし、現在でも、権力者はおごり高ぶり、
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自らの地位を守ることに汲々とし、
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人間の真価に盲目である。
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結局この状態は、人間が物的欲求に縛られている
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かぎり、また、一人一人の精神的境涯が深く
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ならない限り、変わらないのではないだろうか。
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