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「スーホの白い馬」
大塚勇三/再話 赤羽末吉/画  福音館書店

伝わってくる、騎馬民族の心
 この物語を貫いているのは、主人公スーホの、そして
モンゴル民族の、馬への信頼と愛情なのではないか、
と感じた。それは、自然の中で、自然と共に、動物と共に
暮らすことをしない僕には、とてもたどり着けないところ
かもしれない。そう思うと、少し、さみしい。
 思えば、親子の情の確かささえ怪しくなりかねない、
病んだ日本の現代社会において、こういった純粋な
生命の共鳴、交流はとても少ないような気がする。
 今の人は、「他者」を心から信頼し、尊重する
という心が希薄になっているように思う。
ある意味で、現代のゆがんだ「個人主義」は、いたずらに
人を孤立させてきてしまったのではないか、と
ふと考えてしまった。
少し考えすぎかもしれない。


馬頭琴とヴァイオリン
 スーホは馬の指示に従って、愛馬の亡骸から楽器を作る。
これが馬頭琴の由来であるという。そして、馬頭琴は
嬉しいときは嬉しい音が、悲しいときは悲しい音がするという。
 僕は、これと同じことを、ヴァイオリンに感じる。
僕は全然大した腕前ではないけれど、ヴァイオリンは、
確かに僕の心の音を奏でているように思う。
演奏を聞いている人には分からないかもしれない。
そんなことを感じるようになったのは、割と最近に
なってからである。それからは、僕はいろいろな感情を
ヴァイオリンにぶつけるようになった。
そうすると、不思議に心が落ち着き、楽になる。
 僕は、馬頭琴には馬の魂が住んでると思う。
ヴァイオリンには、妖精か何かが、きっと住んでると思う。
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