
| 「だれも知らない小さな国」 |
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| この本を読んで、一つだけイヤな点があった。 |
| それを最初に述べてしまおうと思う。 |
| その「イヤな点」は、あとがきである。 |
| このあとがき、神宮輝夫というかたが書いているのだが、僕の目には、 |
| 童話の良さをずいぶん削ってしまっているように見えた。 |
| 童話というものは、読んで、心にしまって、心の中で育てて、 |
| 自分の糧にしていくもののような気がする。 |
| しかしこのあとがきは、いちいち著者の意図を断定し、 |
| 味気のないものにしてしまっている。 |
| それで、僕は大切なものが壊されてしまいそうで、 |
| このあとがきは、流し読みして二度と読まないことにした。 |
| もっとも、現在刊行されているものには、このあとがきは |
| 載っていないのかもしれない。 |
| この本は、僕の大切な友人が、ふいに貸してくれたものである。 |
| あちこちいたんで、紙はまっ茶色。 |
| 古本屋よりも、むしろ小学校の図書館を思い出させる、 |
| その古い本の香りに、昔の自分に引き戻されるような感じを受けた。 |
| 僕はその香りをかいで育ったのだ。 |
| 僕はこの本の表紙の「佐藤さとる」という名前を見た瞬間に、 |
| とても懐かしい友人の名前を見たような感じがした。 |
| それは、僕がまだ小さいころ、よく氏の童話を読み、絵を見て |
| きたからだと思う。もう何も覚えていないが、氏の作品から受けた |
| 影響は、僕の心にしっかり刻まれていると思う。 |
| 今回、久しぶりに童話を読んだわけだが、やっぱり童話はいいなぁ、 |
| と思った。必ずハッピーエンドだし、安心して読める。 |
| そして、これは「童話」がすごいのか、佐藤さとる氏がすごいのか |
| わからないが、すくなくとも「だれも知らない小さな国」は、 |
| 言葉が非常に簡単なのに、とても表現力が豊か。 |
| 僕はだいぶビックリした。 |
| 「だれも知らない小さな国」は、ひとりの男の子と、こびと |
| (コロボックル)たちの話である。ところどころに「オジサン」 |
| くささを感じないでもないが、素晴らしい作品である。 |
| 小さな時に読むのも、とてもいいと思うし、大人になってから |
| 読むのも、とてもいいと思う。僕は、この本を読んだおかげで、 |
| ほんの少し、心の乾きがいやされた気がする。 |
| 小さいころ感じていた「ワクワク」を思い出してしまった。 |