SHOH's LIVE REPORTS

The Wildhearts with The Hellacopters (Oct 25,1998, Akasaka Blitz, Tokyo)


うほんっとにかっこよかった、THE HELLACOPTERS

音を聴くのも初めてだったのだが、始まったとたんにイってしまった(^^;)。さすがに前座だけあってサウンドはかなり悪かったのだが、そんなものまったく気にならないほどのエネルギーに満ちていた。曲がどれもわかりやすく、しかもうまく出来ているというのも勝因かな。

BACKYARD BABIES のドレゲンがいたバンドということで、勝手なイメージをもっていたのだが、全然ちがうタイプだったのね(^^;)。BACKYARD よりもっと骨太でクラシックなHM/HR( DOORSとか BLACK SABBATH とか)に近いものを感じた。フロント3人の動きがけっこう昔ながらのHMっぽい部分があって、ギターのふたり(ひとりはヴォーカルだけど)が床に膝をついて2本のギターを掲げて弾くところなんて、「うっわあ古くさ〜い! でもかっこいい〜(=^^=)!」 と思ってしまった。ラスタヘアのベースの人もときどきレミー(MOTORHEAD )を思わせるたたずまいを見せたりして、存在感があった。

ヴォーカルの人は帽子を脱がないのでルックスはいまひとつわかりにくかったが、ギターを弾きまくりつつ歌う姿はなかなか。ただ、リードギターがひとりだけちょっと垢抜けなくていないような印象を受けた。きっとまだ若いんだろうなあ。体が大きいせいもあるんだけど、ステージ慣れしていないみたいで、派手なパフォーマンスが妙に浮くのよね(^^;)。あの位置にドレゲンがいたとしたら、確かにビジュアル的にも最高にかっこいいバンドだったろうと容易に想像できた。

しかし、なんといっても私が目を離せなかったのがキーボード。長身の体を折り曲げるようにしながらキーボードをぶんぶん言わせ、マラカスを振り回すというわけのわかんないパフォーマンスなんだけど、これがもうめちゃくちゃかっこいい。マラカスを持った両腕をいっぱいに広げて片腕を客席に突き出すと、3メートルくらいの矢印がこっちに向かってくるみたいだった。

でも、彼らのライブが終わるなり買いにいった2nd アルバムを見たら、彼って正規メンバーじゃないのね? 今回のツアー用のサポート? 彼のキーボードがない HELLACOPTERS なんて私にはもう考えられないので、なんとかしてほしいものだ(^^;)。

THE HELLACOPTERS があまりにもよかったので、「もう今日はこのあと何が起こってもいいや。とりあえずはチケット代の半分以上元がとれたし」 なんて思っていたが、予想に反して(?)メインアクトの THE WiLDHEARTSもかなりよかった。

セットチェンジ(というよりもメンバーがその気になるまで?)にものすごく時間がかかり(45分くらい?)ようやく出てきたと思ったのもつかのま、またすぐに引っ込んじゃって、そのあと15分くらい出てこなかったときは、「ああ、やっぱり中止かなあ」 なんて思ったのだが、その間金髪パンクヘッド(ジンジャーは PRODIGY と言ってたけど)のローディがステージを右に左にと走り回り、ギターをいじったりなんだりして、間をもたせていた。その彼に 「お前の顔なんて見飽きたぞ〜」 と叫ぶ客もいたが、彼、つつつっとマイクに近づいたかと思うと、小さな声でひとこと 「SORRY」。これは受けた(^^)。私、すっかり彼のファンになっちゃった。

さんざん待たせて出てきたメンバーは、何を思ったのか全員(あ、リッチは違ったかな?)茶色の紙袋に目鼻口の穴を開けたものをかぶって登場。もちろん途中ですぐに脱いでしまったが、あれのために15分遅れたのだろうか?

ジンジャーはちょっと太ったみたい。HELLACOPTERS で出てきて1曲一緒にやったときは、横縞のTシャツを着ていたのでそのせいかとも思ったのだが、別の服に着替えてもやっぱりお腹のあたりがちょっと太くなってみたいだし、顔の輪郭(特にあごのあたり)がはっきりしなくなった。髪型のせいもあるがボーイ・ジョージをちらっと思い浮かべてしまったのは心配のしすぎ(^^;)?

ダニーは名古屋でも東京初日でもまた 「吐いてた」 と聞いていたので心配していたが、すごく元気そうだったし、吐くそぶりもみせなくてひと安心(^^)。ジェフはちょっと元気なかったかなあ。

会場のノリは最初から最後まですごかった。ブリッツのフロア全体が海のように揺れている。今回さすがに屈強な外人セキュリティを何人も配置していたが、最前列で飛び込む人の数が半端じゃないので、セキュリティも途中からは見るだけで何もしてなかったような(^^;)。途中で廊下に出たら、気分が悪くなった人がたくさん座り込んでいた。

さすが集金ツアーというだけあって(あるいはライブレコーディングをしているためか?)、セットリストはヒットソングのオンパレード。あれでのらないほうがおかしいってものだ。音も前座の HELLACOPTERS に比べたら天国と地獄ほども違うほどよく、それでも例のローディ兄ちゃんが何度も走り出てきては、細かく気をつかっていたし。

ローディだけではなく、ダニーもジェフも、少しでもマイクがハウったり音が狂ったりすると、すぐに袖に合図して直させたり、自分で言いに行ったりとものすごい気のつかいよう。あそこまでやらなくてもなあ、という気がした。

ジンジャーが客席から投げられたプレゼントの手ぬぐいをマイクスタンドに結んでいたのだが、途中でジンジャーのマイクスタンドから(故意かはずみか)マイクが落ちてしまったとき、めざとくみつけたダニーがあわてて走り寄って拾い上げ、マイクを直すだけでなく手ぬぐいまで結び直している姿には、なんだかあきれてしまった。その間、ジンジャーは我関せずという風情でドラム台に向かって休憩してたし(^^;)。

驚いたのは、アンコールでサングラスをかけ、Tシャツの下は黒い下着だけという男がギターを抱えて登場し、ジンジャーにキスしてから FACES の "STAY WITH ME" を歌い出したこと。肥満体型といい、下着姿といい、とてもミュージシャンとは思えなかったので、お笑い系の日本人タレントが、なにかの縁で出てきたのかと思ってたら、HONEYCRACK のウィリーだと友人が教えてくれた。道理で歌はしっかり歌えていた。しかし、あのかっこは一体・・・謎だ。

次に今度は HELLACOPTERS の連中が乱入してきて RAMONES の "BLITZHRIEG BOP" を演奏。さっきギターを弾きながら歌っていたヴォーカルが、今度はドラムを叩いている。へえ、彼ってドラマーでもあったんだ。

さらに驚いたことに、ジンジャーが 「トミー!」 と叫ぶので、一体どこのトミーが来たのかと思ったら、マーキュリーレコードの深民さん(タミー)が登場し、ベースを弾いて T-REX の "20th CENTURY BOY" が始まってしまった。なんか文化祭みたいだなあ。

最後の最後は客席から "DON'T WORR 'BOUT ME" の大合唱が起こり、感激したジンジャーがステージから飛び降りて、最前の客たちと握手して回るというオチまでついた。「せっかく解散ライブって言ってるのに、こんなにジンジャーを感動させたらまた気を変えて活動再開して来ちゃうぞ」 とハラハラしてしまったのは私だけだろうか(^^;)。

まあ、そんなこんなでバラエティにも富み、ライブとしてはなかなかの水準を行った内容だったと思う。ただし、こと WiLDHERATS のショウ部分に関しては、妙にデジャブ感があった。家に帰って前回来日時の2日目のレポートを読んだら、それも道理。ほとんど同じような内容だった。セットリストが似てるとかいうだけではなく、ハラハラさせたわりにはきちんとしたショウで、しかもヒットソングの羅列でとりあえず無難に盛り上がれる内容という点で。まわりじゅうが気をつかって、客も必死でジンジャーの機嫌に一喜一憂して、というところまで全部同じ。

私は楽しいライブを見るのは好きだけど、ステージ上の楽しさの影にある裏側の苦労は見たくない。プロのステージというのはまるでなんの苦労もなかったようにすごいことを軽々とやってみせるものだと思う。多少は苦労を見せてしまったとしても、何か新しい芸術的進展が見られるなら、それはそれで天才ミュージシャンにつかまったファンの宿命と受け入れてしまうかもしれない。でも、あれじゃあねえ。タダのチケットでもあれば別だけど、もういいや。さよなら、ジンジャー。今まで楽しませてくれてありがとう。


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