SHOH's LIVE REPORTS

Thunder (June 30,1998, Bottomline, Nagoya)


古屋ボトムラインでは、2階のテーブル席でビールを飲みながら見るつもりだった。初日だし、まずゆったりと全体像を把握して、という気持ちと、彼らのライブはそうやってリラックスして見るのがいちばん楽しいという思いからだった のだが、入場してまずその出鼻をくじかれた。2階は閉められたままだったのだ。多分、客の数が多くないので、1階と2階とに散ってしまうと、ステージから見たときに寂し状況になるかもしれない、という危惧によるものだったのだろう。確かに結果的には1階スタンディングスペースを8割方埋めたファンが、最初から最後まで大きな声で歌い、叫び、笑っていたので、バンドとしては気分のいいスタートをきれたと思う。

最初にメンバーが登場したときに、まず目が行ったのが服装。なにしろ昨年来日時の悪夢のジャージが頭にこびりついていたし、さっき開場を待って並んでいたとき、エレベーターから降りて、「ちょっとご近所まで」といった風情で出ていったダニーとルークのかっこが、まるで避暑地の海を歩く田舎のオヤジ達みたいだったもので、かなり心配していたのだ(^^;)。

が、不安はすぐに一掃された。ダニーはジャージじゃない! 黒の半袖Tシャツの袖を何回かロールアップし、着古したジーンズをはいている。金具のバックルがついたベルトと赤い運動靴がちょっとダサイが、その程度ならいくらでも目をつぶれる。ルークはといえば、やわらかめな白の長袖シャツに黒地に小さな白い水玉のスパッツ。さりげない銀のチェーンエックレスが白いシャツとダークブロンドにはえて、とてもすてき。さっき紺のランニングに白の短パンをはいて、髪をひっつめにしばってたおっさんと同一人物とはとても信じられない。それにこ のあとわかってくるのだが、交互に弾く彼の白と黒のレスポールとこの服装が実にもうぴったり合っていて、ため息が出そうに素敵だった。

ライブアルバムと同じオープニングでにぎやかに幕をあけ、"PILOT OF MY DREAMS"で客に声を出させる。この2曲で会場の雰囲気は完全に彼らのペースにはまった。

そして次にきたのがいきなり新曲。ドラマチックなイントロで一気に惹き付けられ、ルークとダニーが掛け合いで歌う部分で完全に魅了された。ものすごくかっこいい。THUNDER のファンの中でも、マイナーキーの曲のほうを好む人なら、まず気に入るであろう曲調だ。シングルカットしてもいけるんじゃないかなあ。

ダニーの声の調子はまずまず。さすがに来日したばかりの初日とあって、ちょっと出にくい部分もあったようにみえたが、それは THUNDER のダニーにしては、という程度のもので、ごくふつうのバンドだったら絶好調といってもよいくらいのものだろう。なにしろ今回のツアーは、昨年東京での汚名をそそぐための大事なツアー(だからこそニューアルバムが出る前にあえて再来日したのだろう)だから、ダニーと しても万全の体調を整えてきたにちがいない。

それを実証するかのように"I'LL BE WAITING"は入魂の出来。最初のうちピョンピョン飛んだり前に押したりしたがっていた若い、初めて THUNDER のライブに来たらしいファンも、ここではじっと立ちつくし、すべてを忘れて聞き入っていた。

ファンといえば、THUNDER のライブはふだんのロックコンサートとちょっと違う。スタンディングで前のほうにいても、ほとんど押されない。みんな自分の位置を確保したら、それ以上人を押しのけてまで前にいこうとしないし、むやみに騒いで曲をだいなしにすることもない。静かな曲では体や首を小さく動かしながらじっと聞き入るし、ダンスが似合う曲や手拍子が必要な曲にもすぐに反応する。一本調子にバラードで手拍子を叩き続ける人なんて皆無だ。みんな、ほんとに THUNDER の音楽が好きで、よく聴いていて、バンドと一緒に楽しむことを知って いる。彼らのライブがいつ見ても楽しいのは、彼らの実力ももちろんあるけれど、こうした部分によるところも大きいのかもしれないと今回改めて思った。

ファンキーな曲と静かな曲をうまく織り交ぜてセットは進んでいく。ハイライトはやはり"HIGHER GROUND"の大合唱から"BACKSTREET SYMPHONY"でのツインギターのキメまでの人気チューンのあたりだったろうか。しかし、みんなライブアルバムやビデオでしっかり予習してきたのか、イイギリスのファンもとまどってしまい、あまり声が出ていなかった"RIVER OF PAIN"の最初の部分も、しっかり歌詞を覚えてきて歌っていたのには驚いた。日本のファンってほんとに真面目だ(^_^)。

アンコールの最後の曲で、途中からルークがどこかで聞いたことのあるような音を出し始め、「あれ? なんだっけ?」と思ったところでダニーが ROLLING STONES の"SATISFACTION"を歌い始めたのにはびっくり。まあ、前にも"BROWN SUGAR"なんかカヴァーしてるから、STONES の曲をやるのは意外ではないのかもしれないけど、なんとなくこの曲と THUNDER って結びつかなかったのだ。でも、有名な曲だけに会場からもしっかり歌声があがって、とてもいい仕上がりとなった。

1. WELCOME TO THE PARTY
2. PILOT OF MY DREAMS
3. JUST ANOTHER SUICIDE
4. I'LL BE WAITING
5. THE ONLY ONE
6. AN ENGLISHMAN ON HOLIDAY
7. YOU CAN'T LIVE YOUR LIFE IN A DAY
8. EMPTY CITY
9. HIGHER GROUND
10.LOVE WALKED IN
11.RIVER OF PAIN
12.BACKSTREET SYMPHONY
-ENCORE-
13.UNTIL MY DYING DAY
14.PLAY THAT FUNKY MUSIC
15.DIRTY LOVE〜SATISFACTION〜DIRTY LOVE


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