SHOH's LIVE REPORTS

Thunder Live In Japan,1997(5) (Jan 26, 30, Feb 1,1997)


だだだっと曲が終わると「ほーほほっ!」とダニーが叫んだ。

「僕がほーほほっ!と叫んだら、ひーひひって返してね」

え〜〜やだ〜。

と言いながらもついつい「ひーひひっ」と叫んでしまうファン心理。ああ、なさけないったら。

でも、今回のおふざけはすぐに終わり、ルークのアコースティックギターが鳴り出した。うっそー、これやるの。きのうの大阪では"CASTELS IN THE SAND" だったところなので、すっかりそのつもりでいたのに、"LOW LIFE IN HIGH PLACES" が来てしまった。いえいえ決して不満なのではありません。予期せぬことに動揺してしまったの。私はこの曲のベンのギターがそれはそれは好きで、あれを聴くと心が震えてしまう。

途中、例によって客席に歌わせる。この部分、前回来日時の初めの頃には最後まで歌わせようとして静寂を招いてしまい大あわて、というシーンもあったが、さすがに同じ失敗は繰り返さないベテランバンド。今回はみんなが歌えるタイトル部分だけ。

(補)この曲でいつもダニーが「みんな僕の歌を手伝ってくれるよね」と呼びかけるおきまりのパターンが、五反田ではまさに文字通りの意味をもつようになってしまい、なんとも切ない展開となった。歌詞を全部覚えていて、しかもダニーみたいな声が出るんだったら、ステージの前まで行って、声が出ない彼の分まで歌ってあげたいと思ったけれど、それができない悲しさ。せめてコーラスの部分で思いきり声を張り上 げるしかなかった。
なんて言ってる間にベンのギターが始まってしまった。私は2階席のバルコニーのいちばん前、ベンのすぐ上にいたものだから、彼が弾く姿だけが目の前にアップになって迫ってきた。ほかに何も見えなくなった。涙が出ちゃった。

「さっちあろ〜〜んり〜」で例によって間をとってじらすダニー。このあたりの演出はまさに彼の真骨頂といったところだ。あれだけ間をとって、みんなをじらした挙げ句、歌い上げた部分でこけたらみっともないったらありゃしない。今の時代で、自信たっぷりにあそこまで出来るのは、ポール・ロジャースとダニーくらいのものでしょう。

(補)チッタでのダニーのこの部分の絶唱は、鬼気迫るものがあった。前日の悔しさをぶつけるかのように、最後の部分のアカペラを、今まで聴いた中でもベストの出来になるのではないかという迫力で歌いあげたのだ。いくら声が出るようになったとはいえ、点滴打って、薬のんでなだめているだけで、完治しているわけではない。あんな無理をしたら喉をつぶしてしまうんじゃないか、そんな心配をしたのは私だけではないだろう。でも、あそこでダニーを止めることは誰にもできなかった。一流と呼ばれるヴォーカリストなら誰だって、ああやって無念を晴らしたかっただろうから。

つづく


1997 I INDEX I