SHOH's LIVE REPORTS

Slayer (October 7,1998 at Shibuya Kokaido, Tokyo)


やあ、かっこよかったぞ〜。彼らのステージを見ていると、ケリー・キングの腕の隈取りみたいな刺青のせいもあるんだろうが、歌舞伎を見てるみたいな気がすることがある。大見得をきったときのかっこよさ、みたいなものを感じるのだ。グリーンのスモークの中に浮かび上がった3人に赤いライトが当たったときなんて、背筋がぞくぞくするくらい決まっていた。

音はちょっともこもこしていたように思う。中盤、トム・アラヤのヴォーカルが聴きにくいときがあったり、ドラムのリズムについていけないときがあった。が、後半ではなんとか調節したのか、あるいはこっちの耳が慣れたのか、あまり音は気にならなくなっていた。

新譜からの曲、ライブだとさらにかっこよくて感動する。ふつう、こういうふうに新譜発表後のライブがあると、昔の曲のほうがウケがよくて、新譜からの曲は「とりあえず聴いてみてください」ってふうになるものだが、彼らは違った。めちゃくちゃヘヴィーで音が新鮮。「新しい音はやっぱりいいよね」と思わせるようなインパクトがあった。友人があとで言っていたのだが、昔の曲をアルバムの1.5倍くらいのスピードで演奏してたんじゃないかということだ。そのせいで、「速い」旧曲と「重い」新曲のコントラストがくっきりついて、お互いを引き立て合ったのではないかという説。なるほど納得できる。

しかし驚いたのは、ヘッドバンギングをする人が減ったこと。前に同じ渋谷公会堂で彼らを見たとき(1995年)は、曲が始まるとサ ーッと視界が開けて、ステージが一面に見渡せるようになるほど、全員が腰を低くしてヘッドバンギングしていたものだったが、今回は最初から最後まで目の前に人の壁があった。私は10列目だったので、前にいる人たちは熱心なファンだと思うのだが、最近の人たちはヘッドバンギンングをしないのだろうか。髪も短いから、する気にならないのかなあ。

しかし、ステージ上ではヘッドバンギングのお手本とも言える3人が並んで見事な振りっぷりを見せてくれているのだ。少しはそれに応えてあげてもバチは当たらないと思うのだが。トムの黒くて長い髪が鏡獅子のように振り乱れる様は、ほんとうにかっこいい。でも、毎度ながら、そういうステージは見たいわ、自分も首を振りたいわのジレンマに悩む私の姿がそこにはあった(^^;)。

トムは相変わらずジェントルで、演奏し歌っているときの荒々しさと、MCのときのおだやかで優しい雰囲気のコントラストがなんともたまらない(^_^)。しかし、そんなふうに礼儀正しく話している彼に向かって「Fuck you!」と叫んだ奴がいたのにはあきれた。高いチケット買って来てるんだから、SLAYERが嫌いで叫んだとは思えず、多分、アメリカ人ミュージシャンがひとこと話すごとに"Fuckin'"を入れたりするのを 聞いて、そういうもんだと思い込んじゃっただけなんだろうが、あのタイミングでああ言うのは失礼以外の何物でもない。さすがに温厚なトムも「Fuck you, too」と中指を立てて答えていた。

アンコールが終わってもメンバーは引っ込まず、ステージの前に出てきて握手をしたり、ピックやスティックをまいたりしていたが、最後の最後にトムがマイクに向かい、「ありがとうございます。おやすみなさい」と挨拶した。これには「やられた〜」って感じだったな。だって、ああ言われちゃうと「もっとやってくれ〜」とは言えなくなるもの。仕方がないので「おやすみなさい。今夜はけっこうなものをありがとうございました」とおとなしく帰ってきた(^_^)。


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