SHOH's LIVE REPORTS

Live Undead (July 15,1998 at Akasaka Blitz, Tokyo)


本人バンドが何バンドか出て、SLAYERの曲をカヴァーするらしい。おまけにスペシャル・ゲストとして御本尊のSLAYERも顔を出すらしい・・・友人から聞いて、チケットの値段も安かったことから、ひょっとしてガセネタでもふだんあまり見る機会がない日本のバンドを見るいいチャンスだし、などと考えてチケットをとった。6バンドも出て1344円(消費税込みなので半端)だなんて、いまどき信じられないような値段でしょ(^_^)?

さて当日。赤坂ブリッツの前にはふだんとは明らかに客層の違う若者がひしめいていた。チケットはあっという間に売り切れたらしく、会場前には「チケット売ってください」の札を持った人たちもいる。

それにしても、彼らの気合の入り方はどうだ。最近メタル系のライブに行っても、それ風のかっこをした人は極端に少なくなってきている。みんな街を歩いているそのままのかっこだ。が、きょう、ここに集まっている連中は、電車に乗ればさりげなく席を変わられ、夜道を歩けば警官に不審尋問されそうなのばっかり(^^;)。馬鹿にして言ってるわけじゃなくて、気合が入ってていいなあ、とうれしくなってしまったのだ。

だけど、見て楽しいのと一緒にいて楽しいのとは話は別。こんな連中と同じ場所で見てたんじゃ、絶対につぶされてしまう。向こうにも邪魔になって迷惑だろう。なるべく上のほうで見るつもりで会場入りすると、整理番号が200番近かったにも関わらず、一段上になった所の柵の前が空いていた。信じられな〜い。ふだんだったら真っ先に埋まるところなのに。いかに上で見たがる客が少なく、みんな前へ前へと目指していったのかがわかろうというものだ。みんな元気なのね(^^;)。

赤坂ブリッツでこの手の音楽のライブを見るのは初めてだった。今まで見たWILDHEARTSやSUPERGRASSなんかのライブでは、広いフロアの真ん中あたりで押された人がころんだりするのを見ていたので、すごく危険な会場という意識があったので、先に入ってた友人に「きょうのライブがどんなふうになるか、セキュリティはちゃんとわかってるのかなあ?」と聞いてみた。すると、「ものすごくガタイのいい外人が大勢入ってたよ」という答えが。なるほど、上から見ていても、前のほうの人混みの中に首ひとつ抜けて屈強なセキュリティが見えた。

ふだんのライブだと、セキュリティなのか、ただの会場スタッフなのかわからないような人がやってて、女の子に突き飛ばされたりしてるんだものね。さすがにこの手の催しをやるくらいだから、主催者もちゃんと考えたのだろう。

で、出演バンドだが以下の通り。最後の CHEMICAL WARFARE というのが、もうバレバレだけどSLAYERだ。

D.B.X
PULLING TEETH
UP HOLD
HELLCHILD
COCOBAT
UNITED
CHEMICAL WARFARE

出演者の中で聴いたことがあったのはUNITEDだけ、名前だけは知っていたのが HELLCHILD と COCOBAT だけという無知さだったが、始まっていみると予想以上に楽しめた。SLAYERのカヴァーをやるんだと思っていたのが、みんなオリジナル曲をやっていたのには驚いたが、考えてみれば6バンドも出てみんながカヴァーをやったら、本家が出てくる頃には演奏する曲なくなってるよね(^^;)。

それにしても、私が思ってた以上にみんな上手だったのでびっくり。しかも、みんな英語で歌うのね。邦楽しか聴かない人に理由を聞くと「英語がわからないから」という答えがけっこうある。で、洋楽を聴くファンというのは、なぜか日本のバンドはあまり聞こうとしない。そういう傾向を考えると、彼らって、とても不利な状況にあるんじゃないかなあ、って思ってしまった。でも、これみたいなイベントがあると、この私もそうだけど、日本のバンドももっと聴いてみようという気になるから、いい企画だったと思う。

面白かったのはきっちり出演順に巧くなっていったこと。技術的なことはわからないが、やっぱりキャリアが関係してるんだろうな。客のツカミがあとのバンドになるほど上手だった。

HELLCHILDは、ヴォーカルがレゲエみたいな頭して、上半身裸という、あまりデスメタルっぽくないタイプなんだけど、すごく迫力のあるいい声をしていた。動きも魅力的で、見る者を惹きつけるパワーを持っている。残念ながら大勢のバンドが出るライブの例に漏れず、セッティングが不十分だったのか、音のバランスが悪かったのが残念。もっとちゃんとセッティングが出来る会場でライブをしたら、きっとすごくかっこいいバンドなんだと思う。

COCOBATは、ベースの人が前にANTHRAXのライブに飛び入り参加したことがあって、その頃は髪をうしろで縛って、服装も真面目な大学生みたいな感じだったが、きのうはトランクス一丁で出てきたので驚いた。でも、このバンド、ユニークなリズム感を持っていて、オリジナリティはいちばん感じた。ヴォーカルがちょっとうわすべりしてる感じだったのが残念。ここもきっと自分たちのライブではもっとずっといいんだろうな。

UNITEDは、SLAYERが渋谷公会堂でやったとき前座についたので、聴いたことがあったが、そのときは、上手なことは上手だけれど、こちらをぐっと惹きつけるものがないなあ、と思ってた。が、今回はまったく違ってて、最初の音を出したときから「おお、かっこいい!」と感動。これまでのバンドとは「格が違う」という感じ。

しかし、途中で「お知らせがありま〜す!」なんて明るく言うから、次の自分たちのライブの告知でもするのかと思ったら、なんとドラマー脱退の告知。まあ、円満退社なんでしょうが、ちょっとシラけるなあ。日本のバンドってけっこうああいうふうに発表するのって多いんだろうか? 前に日本のバンドのライブを見にいったときにもそんなことがあったような気がする。内輪だけでライブやったりする土壌があるから、ああいうふうになっちゃうのかな、なんてチラッと感じた。

さて、いよいよ最後のバンドだ。来る前には、SLAYERは真ん中あたりでちょこっと顔を出して、他のバンドのメンバーも一緒に2〜3曲ジャムって終わり、という程度なのかと思っていた。が、どうやらそんなもんじゃなくて、トリのバンドとして演奏するらしい。ステージのセットチェンジもかなり念入りに行っている。

最初の頃は外のロビーでたむろしていた連中が、HELLCHILDあたりから徐々に会場内に入ってきていたのだが、ここに来て、一体これだけの人数がどこにいたのだと思うくらいの人間が後から後から入ってきた。すでに下のフロアは立錐の余地もない。こりゃ物凄いことになるんじゃないだろうか(^_^;)ゞ。

会場からは"SLAYER!"コールが湧き上がっているが、セッティングは終わらない。ひょっとしたら楽屋で日本のバンドの連中がサインもらったり記念写真撮ったりして手間どってるんじゃないか、なんて思いがチラっと頭をよぎった(^^;)。

いよいよメンバー登場。相変わらずトム・アラヤは笑顔が温かい。が、演奏のほうはすさまじかった。"SOUTH OF HEAVEN"、"WAR ENSEMBLE"と立て続けにくると会場は騒然。フロアはダイブの嵐、ピットの渦。Aブロックはもちろんのこと、私のすぐ下のBブロック後方でも、それまではじっと立って見てた人たちの中にいきなり波が起こり、あっという間にピット空間が出来ていた。一瞬、危ないんじゃないかと危惧したが、参加しない人はすぐに外側に逃げたし、みんな自分がすることを知ってたようで、さすがスタンディング慣れしている客が多いライブは違う、と感心。もっとも自分があの中に入る気はしなかったが。

UNITEDのところで「格が違う」という言葉を使ったが、SLAYERにいたってはそんなもんじゃなかった。スケールが違うというのか、食ってるものが違うというのか(^^;)。ケリー・キングの腕なんて、ほとんど人間とは思えなかったもんなあ。あの刺青、ちょっと歌舞伎のくまどりみたいだったが、ほんとは何なんだろう? 雑誌とか見るとFEAR FACTORYのメンバーにも同じような刺青してる人がいたな。

新譜からは"DEATH7S HEAD"と"STAIN OF MIND"。これがもうめちゃくちゃかっこいい。客の反応も他の曲と同様あるいはそれ以上にいい。私と友人達はもう首振りっぱなし。ステージは見たいわ、首は振りたいわという、いつものジレンマに悩まされる。最後のほうは首を斜め横に振って、見ながら振れるように調節していたが、かなりきつかった。でも、首振る人、少なかったなあ。若い子はやっぱり首は振らずに縦ノリというのが主流なんだろうか。ま、そのほうが体にはよさそうな気がするが。

トム・アラヤは相変わらずMCになるととても紳士的で、「たのしんでますか?」と聞いてくれ、みんなが「いえ〜!」と叫ぶと「さいこ〜!」と可愛く言ったりする。ステージの最後にマイクスタンドについてたピックを全部むしりとって、律義に客席に投げていたのも印象的だった。ふつう、あれは片づけを始めたローディがやるって(^^;)。

熱狂してわけわからん状態になった客席を振り回すだけ振り回し、最後に今日のバンド名にもなっていた"CHEMICAL WARFARE"を叩きつけてSLAYERは去っていった。いやあもうとんでもなく素晴らしいライブだった。圧倒的な存在感。見てよし、聴いてよし、暴れてよし、の三拍子。なんといってもスタンディングというのがよかった。前に見た渋谷公会堂では、もちろんライブ中は立ってはいるんだけど、間に席があるから、どうしたって距離感がある。あの人が大勢集まって熱狂したときの、あの緊密感というのは、絶対にスタンディングでないと出ないよねえ。今度の単独来日、メンバーからもスタンディングの日程を入れるようにと強い要望がでているらしい。追加で赤坂ブリッツが出ることを熱望!

しかし、7曲で終わった今回と違って、フルセットで彼らをスタンディングで見たら、あとで絶対に死ぬだろーなあ(^^;)。


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