SHOH's LIVE REPORTS

Hothouse Flowers (Oct 24,1998 at Laforet Harajuku,Tokyo)


ょっとしたら音のトラブルは解消されていないのでは、との危惧は杞憂に終わり、セッティングが完璧になっていた2日目。こうなったら怖いものはなにひとつない。

客の入りもさすがに土曜で開演6時ということもあって、きのうの3割増しくらいの感じ。きのうは売っていなかったサイン入りTシャツが出ていたのには驚いた。きっと、きのうあまり売り上げがよくなかったのを聞いたメンバーが、「じゃあ僕たちがサインしたらどう?」とか言ったんじゃないか(^_^)? 開場直後に買いにいった友人の話によると、「サウンドチェックのあとの休憩時間に書いてもらってるんですが、まだ全部出来ないので待ってください」と言われたとか。開演までの時間も惜しんでサイン書きしてるメンバーって(^^;)。サインの書き方も、ふつうだったらTシャツの白いところに思い切り大きく書くものだけど、模様の中に、注意して見なければわからないくらい小さな字で書いているのも彼ららしい。

ステージに現れたリアム、きょうはなんとグレーに白のピンストライプが入ったスーツを着ていた。が、このスーツ、サイズが妙に小さくて体に合っていず、しかもヨレヨレで、まるで拾った服を着ている浮浪者みたいに見える(^^;)。下にはブルーのTシャツにグレーに兎柄の手ぬぐいを首にスカーフのように巻くというミスマッチ。それがちっともファッショナブルでないのも彼らしくていい。髪型のせいもあるけど、ちょっとトム・ウェイツが入ってるかな、という気がした。

セットリストは基本的にはほぼ同じだったが、細部はもう全然ちがってた。マイクのハウリングを心配しながら声を出さずにすむから、熱唱度は大幅アップで、ただひたすら彼の声に聞き惚れてしまう。

2曲目の"GIVE IT UP"くらいから立って踊りたくなるんだけど、今回は最前列に座ってしまったので後ろの迷惑になるからそれが出来ず、足だけで踊ってしまう。ステージから見ると変な人に見えたかも(^^;)。3曲目ではフィアクナがティン・ホイッスルを出してきて、これぞHOTHOUE FLOWERSという音に。そういえば DEF LEPAPRDのシングルのB面(CDだからそうは言わないか)で3曲ほど彼らが ACCOUSITIC HIPPIES FROM HELLというバンド名で参加したことがあったのだが、あのときの音が今度の彼らに近いかもしれないと、急に思いついた。

"BE GOOD"が終わったところでハンディタイプのキーボード(なんて呼ぶのかなあ?)を手に持ち、テクノっぽいサンプリング音を出して遊ぶ。この楽器、きのうはあまりいじったことがないみたいで手探りで使い方を試しているみたいなところがあるが(足でキイを押したのはいいが、音が止まらなくなってしまい、目を丸くしながら歌ってるシーンもあった)、その後いろいろな音が出せることを発見したらしく、うれしそうにイタズラしてる姿がいかにも、という感じで微笑ましい。彼、ほんとに楽器が好きなのよねえ。以前のライブのときにも、民族楽器をあげるファンがけっこういて、すぐにステージでいじりだして、それを使って演奏しちゃったりしていたっけ。

"POP SONG"はアルバムを聴いたときは「ほんとにリアムが歌ってるの?」って思ったくらい、いつもと違う声で歌っているのだが、こうして目の前で歌っているのを見ると、なるほどリアムだ(^_^)。

"AT LAST"はアルバムを聴いたときには、オーケストラが平板な印象を与えているように思えたのだが、こうして生のピアノとギターだけで聴くとリアムの声がくっきりとしてきて、ものすごくドラマチック。

"IMAGINE"そっくりのピアノで始まった"EVERLASTING"は初めて聴いた曲だと思うんだけど、どこか懐かしさを感じる。リアムって曲の紹介をしないのよねえ。

フィアクナがティン・ホイッスルを吹き始めると、すかさずリアムが例のハンディ・キーボードから大歓声のサンプリングを聞かせて笑いをとる。さらにリアムがバウロン、ピーターがブズーキで加わると、ケルト音楽ファンの間から歓声が起こる。そう、今回は今までと客層が違う。HOTHOUSE FLOWERSのオリジナル曲のときは割合静かなのだが、トラッドな曲が出てくるといきなり手拍子が始まり掛け声がかかる。アイルランドのパブみたいな感じ(^_^)。このインストルメンタルは彼ら自身も思いがけずうまくいったという感じで、終わったあと3人でおおいに受けていた。おいおい(^^;)。

"TRYING TO GET THROUGH"のあとで、きのうと同様休憩が入る。「コーヒーかお茶でも飲んでて。ビールはだめだよ。おっと、これはきのうのジョークだった」リアムってばあ(^^;)。きのうは5分か10分と言っていたが、きのうの様子を見て、いったんロビーに出てギネスを手にした客が10分なんかじゃもどらないことを確認したせいか、きょうは15分になっていた。

再登場したリアムは、スーツはそのままだが、下のTシャツをきのうも着ていた白のドレスシャツに変えている。あれ、ピンタックがあるからアイロンかけとかも大変だし、ひょっとしたら洗ってない(^^;)?

1曲目が終わったところで、ピアノに向かったままのリアムが何やらぶつぶつ言い出した。「Making friends, making friends...」と言っているのでなんのことだと思っていたら、どうやら例の日本語学習手帳のインデックスを探していたらしい。「あったあった! こちらはフィアクナさんです。こちらはピーターさんです」そうか、人を紹介するときの日本語を探していたのね。で、会場から笑いと拍手がわいたら、すっかり調子にのっちゃって、「ゲンキデスカ?」「ヒトリデス?」なんて始まっちゃった。おいおい、それってナンパするときの用例じゃないの(^^;)? 「ユージントイッショデス」なるほど、断られたときの相手の言葉も書いてあるのね(^_^)。しかし、このまま調子づいてずっと日本語教室が続いたらどうしよう。と心配していたらタイミングよく男性客から「リア〜ム!」と声が掛かった。「OK」苦笑して手帳を置くリアム。ドスの効いた声で「先に行けってんだろ?」とふざける。

次の曲はホンキートンクっぽいピアノが軽快で、また手拍子が湧き起こる。アメリカの黒人が音楽やってる酒場みたいな雰囲気。即興で弾くリアムがどんな方向に行っても、しっかり余裕でついていくピーターとフィアクナはさすがだ。年季が違うって。

"FIND THE TIME"でまた客席を3つに分けて、ハミングだけのコーラスをつけさせる。これが本当にきれい。自分で歌っていながらうっとりしちゃう(^_^)。途中からはリアムが手で合図をしなくても、ちゃんと適当な個所でコーラスを入れてしまう観客にメンバーもとってもうれしそう。いいよねえ、こういうのって。なんというか音楽という絆でしっかりつながってるって感じで。

"THIS IS IT(YOUR SOUL)"は、なんといっても"YOUR SOUL"というところのリアムの低音でしょう。ベースの音かと思ってしまうほど美しい響きのある低音なんだ、これがもう(*^_^*)。かと思うと、限りなく高いほうに登っていってファルセットを聴かせてくれるし、この人、いったい声域が何オクターブくらいあるんだろう? アコースティックではあるけれど、フィアクナのエモーショナルなギターソロもひさびさに聴けて、なんだか涙が出そうになった。

途中のリフレインのところでソウルっぽい感じでリアムが歌いだし、それに何人かの女性客がコーラスをつけ始めた、すると、さらにそれと掛け合いになるように後ろのほうの男性客が歌い出し、これがもうまるで本物のゴスペル合唱団みたいに決まっている。リアムも他の客もすっかり喜んでしまい、どこまでもどこまでも続いていく。と、興にのってしまったリアムが、いきなり体をくねらせて上着を脱ぎ始めた(^^;)。な、な、なにをするんだ! と思って見ていると、首に巻いた手ぬぐいを思い入れたっぷりにはずし、次にはシャツのボタンをはずし始めた。さらには床に横たわって足を上げてみせたり。ドリフじゃないって(^^;)フルイ? 痩せてるからとてもセクシーとは言えないけど、とりあえず胸毛は生えている胸を見せたところで「来年ね」と言ってストリップは終わり。いやあ、びっくりしたあ。まさかリアムがあんなことするとは思ってもいなかったの。もう場内大爆笑。

"IT'LL BE EASIER IN THE MORNING"では、曲の途中でストップをかけ、全員が逆光を浴びたような形で止まってしまう。ピクリとも動かない。これはきのうもやったんだけど、客の反応がそれぞれで面白い。ロックコンサートだと握手と口笛でなんとか蘇らせようとするのが普通だけど、ここでは「おはよう!」とか「ハロー!」あるいは「生きてるかい?」とかいろいろに声をかける。これがいちいちハマっててみんな大笑いしてしまう。それでもステージの3人はピクリとも動かない。もう限界、というところで思い切り息を吐き出すように歌い始めるのがめちゃかっこいい。

本編最後の"YOU CAN LOVE ME NOW"を始める前に新譜の紹介をしようとしたリアムだが、それだけでもう照れちゃったらしく、「宣伝になっちゃうんだけど」と言い訳してから「money,money,money,making money」とふざけて繰り返し始める。どうやらこれはモンティ・パイソンにも登場するネタらしいのだが、なにも急にそんなこと言わなくたって、ふつうのアーティストだったらステージで新譜の紹介をするなんて当たり前だってば(^_^)。アメリカのミュージシャンだったら、もうそれこそはっきり「まだ持ってない人は買ってね」とまで言うんだから。こういうところ、アイルランド人って日本人と似た感性を持ってるのかもしれない。

"YOU CAN LOVE ME NOW"は、アルバムではオーケストラでスケール感を出していたので、ライブではどんなふうになるか興味津々だったが、ものすごく生々しい作りで、"Take,Take,Take me!"のところの叫ぶような歌いっぷりなんて、もうたまらないくらい悩ましい。

アンコールで再登場したリアムに、女性客のひとりが日本酒をプレゼントした。いきなり開けようとするリアム。「え〜っ!?」と咎めるような声を出す客席に向かい「最後の夜だからね」と言い訳する。が、このボトルの口の開け方がわからない。必死に格闘するリアムを笑って見ながら、フィアクナがBGMのようにギターをかきならす。それもほんとに映画のBGMみたいに、それぞれの場面に合ったメロディを奏でるものだから、場内は爆笑の渦。プレゼントした女性が口を開けてあげると、いきなりラッパ飲みを始めた、客席から「イッキ!イッキ!」の声が上がるが、そんなこと言われなくても、もう飲んでるって(^^;)。ピーターやフィアクナにも飲ませて、「甘いね」と言いながらもまだぐびぐび飲むリアム。う〜ん、さすがアイリッシュ、お酒に関しては底なしと見た。あげたのが日本酒でよかったかも。あの調子でウイスキーなんて飲もうものならどうなっていたことやら(^^;)。

別の女性があげた紙袋には同じ包みが3個入っていた。わざわざ1個ずつ他のメンバーに配る。あとでいいって(^_^)。さらに別の女性があげたカードは、うれしそうにメッセージを読み、それをピーターにも読ませている。なんかほんとに普通の人がステージに立ってるって感じだなあ。

ボトル半分くらい飲んでから、ようやくピアノに向かった。

"DON'T GO"はラテン風味のアレンジが楽しかったけど、きのうより(というより今までより)客のコーラスを入れる部分が少なかったのがちょっと残念。ストリップなんかやって時間が押しちゃったからかな(^^;)。

というわけで、きょうは曲の最後にバウロンを叩き始めて、すぐに"CATHAIN"へと入っていった。しかし、このアレンジはほんとうにかっこいい。きのうはまだサンプリングの使い方が慣れていない雰囲気があったけれど、きょうはピーターがリアムの様子を見ながら、ばっちりのタイミングで合わせていく。うう〜きもちいい〜(*^_^*)。

盛大な拍手にこたえてリアムが「あ〜あ〜あああ、あ〜あ〜あ」とまたまた客席に声を出させる。何度か繰り返して、客席がリアムの声なしでもしっかり歌えるようになったところをみはからって、メンバー全員がステージから去っていった。なんだ自分たちを送る歌なのか(^_^)。

賞賛の拍手はそのままアンコールを求める拍手となって鳴り止まない。コーラスも止まらない。これで出てこなかったらミュージシャンじゃないよね。と思っていたら、やっぱり出てきた(^_^)。今度はリアムだけ。となるとやっぱりアレだろうな。

思った通りのケルトのアカペラ。もっとロックしてたころのHOTHOUSEのライブでもアンコールでこれをやったことがあって、そのときは圧倒的にロックファンが多かった客席(私も含めて)は、唖然としながらも、その圧倒的な存在感にノックアウトされ、それっきり彼のトリコになったんだっけ。 などとシミジミしている間にも歌は続く。きょうはかなりタップリ、全曲通してやるつもりらしい。歌詞はもちろんゲール語だからひとこともわからないが、これが理解したらさらに感動的なんだろうなあ。メロディはマイナーキーで、どちらかというと日本の民謡に近いものがある。沖縄のソウル・フラワー・ユニオンなんかがドーナルたちとコラボレートしているのも、そのあたりの共通点によるものなのだろう。

最後はマイクから離れて、生の声をしっかり聴かせて歌い終わったリアムは、それでもアンコールを求める客が増えたら大変だと思ったのか、ドーナルのライブで佐渡に行ったときに覚えた5本締めを始めて、すっきりと終わりにした。

ああ、楽しかった〜。感動した〜。すてきだった〜。でも、でも、この次HOTHOUSEで来るときには、やっぱりフルバンドで来てほしいと言うのは贅沢というものなんだろうか。頼むよ、リアム。あ、その前にALTがあったっけ。12月が楽しみだなあ(*^_^*)。

SET LIST
  1. THE OLDER WE GET
  2. GIVE IT UP
  3. BE GOOD
  4. POP SONG
  5. AT LAST
  6. EVERLASTING
  7. BANISHED MISFORTUNE(INSTRUMENTAL)
  8. TRYING TO GET THROUGH
    -INTERMISSION-
  9. RED DEAD
  10. TROUBLE DOWN YONDER
  11. IT'S A MAN'S MAN'S WORLD
  12. FIND THE TIME
  13. THIS IS IT(YOUR SOUL)
  14. IT'LL BE EASIER IN THE MORNING
  15. FOREVER MORE
  16. HALLELUJAH JORDAN
  17. YOU CAN LOVE ME NOW
    -ENCORE 1-
  18. LEARNING TO WALK
  19. DON'T GO
  20. CATHAIN
    -ENCORE 2-


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