SHOH's LIVE REPORTS

Donal Lunny,COOLFIN,SOLAS & ALT
(December 3,1998, Gotanda Kani-Hoken Hall, Tokyo)


反田簡易保険ホールのステージがあんなに天井が高いとは、今まで気づかなかった。ロックコンサートのときは近視眼的に見ているし、バレエやクラシックのときはそれで当然だと思っていたからなかあ。

どうして今回気づいたかというと、アコースティックで、しかも小人数で演奏するグループだと、あまりにも空間が広すぎて、すかすかして見えちゃうのよね。

最初のSOLASはそれでも5人いたし、激しく動きながら弾くフィドルのお姉さんや、出たり入ったりするヴォーカルのお姉さんなんかもいたので、それほどは感じなかった。こんなにインストの多いバンドだとは思っていなかったけど、でも、インスト苦手の私にも楽しめたのは曲にメリハリがあって、特にフィドルのアグレッシブなところが刺激的だったからだと思う。

SOLAS
1.The Beauty Spot (inst)
2.The Newry Highwayman (song)
3.Pasty Highwayman (inst)
4.A Chomaraigh Aoibhinn o (song)
5.Pastures of Plenty (song)
6.Paddy Taylors (inst)

が、お目当てだったALTの番になったら、なにしろリアムは左端に置いたピアノに座ったきりだし、ティムは右端に置いたドラムセットに座ってる。かろうじて真ん中に立ってるアンディだけが目立つ物体なんだけど、これがまたあんまり動かないんだ(^^;)。

客層もホールで座ってケルト音楽を聞こうという人たちなので、多分HOTHOUSE FLOWERSもCLOUDED HOUSEも知らないと思われるので、きっと「これは一体どういう音楽なんだろう?」と戸惑っていたに違いない。礼儀正しく拍手はするんだけど、3人がほのぼのしたジョークを飛ばしても笑い声はかすかで、ホールの壁にむなしく吸い込まれていく。

とはいえ、決して聴衆が退屈していたり、ステージがしらけていたりということはなかった。あくまでもお互いに戸惑っていたというだけ。 初めて生で聴くALTは、そういうわけでアルバムのイメージとはかなり違っていた。もっと即興的で、とっちらかっていて、半分冗談みたいな感じかな、と思っていたのだけれど、ピシッと緊張感のある、まとまりをもった音だった。

あとに出るDONAL LUNNY & COOLFINに合わせてあると思われる音響のせいで、楽器の音がどれも異常に大きくて、せっかくのリアムの繊細な歌がかなりそこなわれていたのが残念だったけれど、それでも他を圧倒する声の魔力はあいかわらず。アンディも巧いんだけど、なんというのかなあ、リアムが歌いだしちゃうととたんに輝きを奪われちゃうのよねえ。

意外だったのはティムがほとんどすべての曲でいちばん高いパートを歌っていたこと。私もCLOUDED HOUSEはよく知らないので、彼がファルセット・ヴォイスがあんなに得意な人とは知らなかった。

アルバムではひとりで歌っているのかと思っていた曲でも、ステージでは3人が交互にリードヴォーカルをとったり、思いがけないところでコーラスをつけたりと、まったく違う曲に生まれ変わらせていたのはさすが。

"What You've Done"の前にリアムが「僕は昔、スターに恋をしたんだ。アイリッシュ音楽界のスターで・・・」と長々と、しかも要領悪い話し方で話しだした。「え? スターって誰よ?」といろめきたつ私とは裏腹に周囲の客はシーンとしている。あまりにもくどくどしてきたのにあせったアンディが「僕が翻訳しようか」と言い出した。

「彼が恋をした。だけど彼女には好きな人がいて、うまくいかなかった。それを僕らに話して、みんなで次の曲を作ったって話さ」

「あ、でも、ひとつだけ言わせて。そのとき僕は彼女のために服を買ったんだ。でも、受け取ってもらえなかったから自分で着た。それが歌詞にも使われてる」

あとから友人に聞いた話だが、どうやらこのスターというのはCRANBERRIESのドロレスだったらしい。ふ〜ん、リアムの趣味って意外。

で、曲に入ったのだけれど、途中の歌詞で「彼女のボーイフレンドに会った。彼は僕よりでかかった」と歌うところで、ピアノを弾いていたリアムが「ひ〜」という小さな叫び声を上げたのが笑えた。

ある程度調子が出てきて、会場のノリが出てきたな、というところでALTの持ち時間は終わってしまった。残念。やっぱり単独でないと初めての客をつかむには無理があるなあ。でも、私としては初めての生ALTに充分満足して明日に期待をつないだのだった。

ALT
1.We're All Man
2.Penelope Tree
3.When the Winter Comes
4.Favorite Girl
5.What You've Done
6.The Refuge Tree
7.Girlfriend Guru
8.I Decided To

DONAL BANDに関しては、もう言うことはないかな。相変わらず楽しくて、しかも巧くて、文句のつけようがない。今回、あのフランス人形みたいなフィドルの女性がいなかったのが寂しかったけど、その分グレン・クロースみたいなお姉様が大張り切りだった。クリスマスらしい真っ赤なニットドレスの裾のところに白っぽい模様があると思ったら、なんとそこは透けていて、脚がほとんど見えていたという大胆な衣装。

シャロン・シャノンはいつもながらラブリー。彼女、実際の年がいくつか知らないけれど、お姉様と並んでフィドルを惹いたときなど、中学生くらいにしか見えなかった。

今回のゲスト歌手はモーラ・オコンネル。いかにもアイルランドの女性らしいふっくら(というかでっぷり)した体型にふさわしく、素晴らしくいい声。彼女、シャロンをフィーチュアーしたアイルランドの音楽番組のビデオにも確か登場してたはず。

ドーナルおじさまは、少しだけ老けたかな。少し痩せて、額の生え際もほんの少し後退したような気が。

そうそう。最後の曲ではオーディエンスもみんな立ち上がって手拍子をとっていたのだけれど、ふと左横を見ると、ステージに近い通路のところに立ってステージを見ているアンディとリアムの姿が!

ついついステージを見ずにリアムのほうを見てしまった私って、やっぱり邪道者かしら(^^;)。曲が終わり、何人かの客が気づいて注目しだすとリアムのほうからも手を振って挨拶したり、衝立ての向こうに去るふりをして、もう一度衝立ての後ろから顔を出して見せるなど、愛敬たっぷりのところを見せてくれた。

DONAL LUNNY & COOLFIN
1.The Mouseskin Shoe and Dancing in Allihies
2.Kickdancer
3.Cavan Potholes
4.Scholar (fea. Maura)
5.Down Where the Drunkards Roll (fea. Maura)
6.Butlers
7.Glentown
8.Teddy O'neil (fea. Maura)
9.Mouth of the TobiqueFly


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