やがて人影が現われた。フィルだ。手を振っている。ジョーも登場して投げキッスをする。リック、サヴ、ヴィヴとそろってドラムのカウントが入り、"LOVE BITES"が始まった。バスドラがお腹に響く。

マイクスタンドの上のほうを右手で下のほうを左手でそれぞれつかんで歌うジョーの姿は、それはそれはセクシーで大人の男の魅力があふれていた。スタンドを離すようにしてのけぞる姿、マイクに顔を伏せて絶望的な思いを見せるシーン、かすれた声。どれひとつとってもため息なしでは見られない。間奏部分では、腕を後ろに激しく振りながらストレートヘアを振り乱してみせる。そして綱渡りをしているかのように両手でバランスをとりながらスタンドに向かって歩いていき、再び歌い始める。ああ、もうだめ。

今回、ジョーがスタンドマイクを使って歌う姿を見ていて、誰かに似ているような気がすると、ずーっと考えてた。足を少しうしろにひきぎみにして、マイクを引き寄せるような形で歌う姿が実にかっこいいんだ。PEARL JAM のエディとか、オルタナ系のミュージシャンにはけっこういるような気がしたけど、ジョーのはもっと別のお手本があるような気がしてならなかった。で、思い出した。U2のボノだ。

(補)１８日にはこのとき、マイクスタンドをじっとみつめていたので、よほど曲に没入しているんだろうなと思っていたら、歌う前にスタンドについてた髪の毛をかっこつけて取り除いたので、ちょっと倒れそうになった私であった。

歌い終わるとスタンドを持ったまま、ジョーが袖に消えていく。フィルとヴィヴのギターが同じリフをずらして重ねるように紡いでいく。夢のように美しいギターソロだ。

そして、アルバムでは機械処理されていた最後のセリフが、袖に引っ込んだジョーの声でささやくように呟かれて曲は終わった。ああ、なんて素晴らしい。

「THANK YOU! ありがとう！　DO YOU WANNA GET ROCKED？」ジョーが叫ぶと、フィルがそばに行って向い合い、ギターで応える。

おお、やっぱりやってくれたのね！ なんてったって盛り上がるもの、これ、ライブでは。最初の「LET'S GET! LET'S GET! LET'S GET! 」のところからすでに大合唱状態。途中の叫ぶようなコーラスの部分（ドリフの風呂入れよみたいな掛け合いのとこね）も完璧に歌って、LEPPS のファンってほんとによく歌詞を覚えてると思う。楽しくてたまらないって感じで演奏するメンバーと、楽しくてたまらないってふうに応えるファン。音楽を通しての絆の強さをひしひしと感じてしまうひとときだったなあ。

ここで１回目のアンコール終了。白いベースを高々と掲げて挨拶するサヴ。とてもうれしそうだ。手を振り、ウエストのところに手を当て、上半身だけを曲げて騎士のようなお辞儀をするフィル。

暗いステージにオレンジ色のライトが点滅し始めると、歓声がひときわ高くなる。そして会場全体がパーッと明るくなって、演奏が始まった。曲はもちろん"ACTION"。カヴァーとはいえ、完全にLEPPS のものになってしまっている。「アクション！」では地鳴りのような合唱。２万本の拳が振り上げられる。腕を後ろに組んだままステージの端までダッシュするジョー。

「LIAR!」「FIRE!」のコーラスも男くさくてかっこい。全体にアルバムよりも速くなっているせいか、この曲ではヴィヴの速弾きの片鱗を少し聴くことができるのも楽しい。最後の「あくしょん」のリフレインを元気に決めて、とうとう終わってしまった。

「もう一度、ありがとう東京！　また会おうぜ！　おやすみ！」

メンバー全員がステージ前方に並び、肩を組んで挨拶する。全力を出しきった満足感にあふれている。「SEE YA!」 最後にジョーが叫んで、みんなステージを去っていった。

あ〜終わっちゃったぁ。でも、不思議と寂しい感じはしない。一緒に思いきりがんばった充足感のせいかなあ。まだこのあとにも公演が残ってるせいもあるけど、でも、きっと最終日になっても、こういう終わり方だったらきっと笑ってメンバーを送れるような気がする。次の来日を確信して。そう、たとえ４年後になろうと、絶対に私は来る、それがわかっているからこんなにも平静な気持ちでいられるのかもしれない。待てる愛って強いよね。

長くなってしまいました。我慢して読んでくださった方、ありがとうございました。私の感動が少しでも伝わってくれたら、とても幸せです。次のLEPPS 来日のときにもお目にかかりましょうね。