SHOH's LIVE REPORTS

Def Leppard Live in Japan (June 16-22,1993)


PART 4

が終わるとステージに椅子が運び込まれてきて、正面にギターを抱えたジョーが立っている。昔の大学帽みたいな黒い皮の帽子をかぶっているんだけど、これがすごくよく似合っててかっこいい。左横にはサヴがアコースティック・ギターを抱いて座る。フィルとヴィヴは後ろのほう。

「デフ・レパードのアンプラグドにようこそ」とジョーが挨拶し、「これはエリック・クラプトンみたいなものさ」と説明すると、サヴがクラプトンをちょこっと弾き始める。「ノー!」と首を振るジョー。と、今度はニルヴァーナの曲を。またもやジョーが「ノー!」(^^;)オイオイ。

ようやく弾き始めた美しいギターの調べは「TONIGHT」だった。これはオリジナルヴァージョンに勝るとも劣らない涙ものの出来で、ジョーの声の魅力を思いきり堪能することができた。

いかにもLEPPS らしく、アコースティック・タイムは1曲で終わり、続いては "HAVE YOU EVER NEEDED SOMEONE SO BAD"。ライブでは普通オリジナルより速くなるものだけれど、この曲はむしろゆっくりめかなという感じ。アコースティックのあとだからかしら。でも、このほうが曲の雰囲気をじっくり味わうことができてありがたいのだけれど。

しみじみゆったりした空気が武道館の空気を満たしたところでリズミカルなリックのドラミングが始まる。みんなの手拍子も同時についていく。ジョーがさらにそこにかぶせるように早口言葉みたいな歌を歌い始める。カヴァーらしいが知らない曲だ。観客もみんな知らないらしく、これといった反応はない。(あとで聞いた話では'78年頃にチャートに上がってたRAM JAMの"BLACK BETTY"という曲だそう)

そして始まったのは"ARMAGEDON IT"。この曲って掛け合いが多くて元気に歌うのにぴったりなんだけど、正直言ってこちらは声が涸れてきて喉もつぶれてきて、ジョーの心配をしてるどころではない状態になっている。それでも歌ってしまう哀しいサガ。まだあの曲もあの曲も残っているんだぞっ!

と思ってたら、げげげ、始まっちゃったよぉ"POUR SOME SUGAR ON ME"。こうなったら血を吐いても歌い続けるしかない。ジョーだってあんなに高い声をがんばって出してるじゃないか。しかし、ライブで聴くとなんてかっこいい曲なんだろうね、これ。体が自然に突き上げられるように動いて、拳も振り挙げたくなってしまう。

ハアハア言いながら歌い終わると、ドラム台にスポットが当たる。みんなの歓声に応えてリックが元気にスティックを振り回したかと思うと、マイクに向かって「*******」。

例のハナモゲラ語だ。

そう、お決まり"ROCK OF AGES"。さっきまで「もうダメ、歌えない」なんて弱音をはいてた誰かが、" I WANT ROCK N' ROLL"と叫びまくってる。だって、ここで叫ばないでいつ叫ぶ。ジョーも盛んに客席に呼びかけては煽ってるし、もうこれが本編最後の曲なんだなってことは誰の目にもあきらかだから、ここいちばんの踏ん張りを見せようとみんな大声援を送っている。なんてったってDEF LEPPARD にとっては初めての武道館公演、思い出に残るものにしてあげたいじゃないか。

ジョーはうれしそうに何度も「ドーモアリガトー」を繰り返して去っていった。みんなもちろんすぐにアンコールの拍手に入る。声援も鳴りやまない。足を踏みならす人、叫ぶ人、だれひとりとして座ったりしていない。

そして、ひときわ高い歓声が上がったと思ったらメンバーが出てきてくれた。ジョーは素速く着替えをすませていて、きれいな藤色のタキシード形のシャツになっている。

暗いままのステージでメンバーがそれぞれの位置につくと、リックのシャリシャリッポコッというドラミングが2度繰り返されて、ギターが入る。わあぁ、「LOVE BITES」。

緑色のレーザー光線が武道館を上下に切り裂くように照らし出す。2階から見ていると、緑色の海原の下にメンバーが透けて見えて、リックだけがひとり海の上に浮かび上がっているよう。多分アリーナにいる人からは逆に、自分たちが海の底にいて、リックだけが水面より上にいるように見えるんだろうな。

ギターソロがアルバムで聴くときとはかなり違うように聞こえる。これまではただひたすら哀しげでロマンチックな音色だと思っていたのに、今はとても妖しげでセクシーだ。音と光の魔術で、まるで薬でもやってトリップしているような、現実から遠く離れた世界でふわふわ漂っているような気分。

魔法にかかったように痺れて立ち尽くしていると、ジョーの元気な声が現実によびさましてくれた。「再びPYROMANIA アルバムからだ。マリリン・モンローのことを歌った曲だよ」

え?え?え? ひょっとしてこれが最後の曲? "PHOTOGRAPH"がこのあたりに来るのは意外な気がした。でも、始まってしまったらそんなこと気にしてるヒマはない。最後の最後まで味わいつくさなくちゃ。今回の来日のあと、あと何年会えなくなるかわからないんだから。これは「HAVE YOU〜」とは逆にオリジナルより少し速いヴァージョンだった。思いっきり元気いっぱい、感傷になんて浸ってるんじゃないよ、って肩を叩かれてるような感じ。

そして、とうとう終わってしまった。泣きそうになりながら拍手をしている私たちに、ジョーは「今度は5年も待たせないと約束するよ!」と言ってくれた。

「DON'T FORGET US. WE WON'T FORGET YOU」と叫んで去っていったジョー。後ろ姿を見送りながら、胸がきゅーんとなってしまった。つらいけれど、彼の言葉を信じて待ち続けよう。


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