SHOH's LIVE REPORTS

Backyard Babies (July 22,1998, Sibuya Club Quatro, Tokyo)


きなり出てきて、あっという間に来日が決まっちゃったような感じがする。しかもチケットはソールドアウト。伊藤政則氏がプッシュしてるらしいので、そのへんも関係してるのかも。なんにせよ、ショウケースギグということで値段も安く、小さなクラブで見られるのはいいことだ(^_^)。

それにしても開演30分くらい前に入ったのに、すでに人と人の間を通るのが難しいくらいギュウギュウになっていたのにはびっくり。MARILYN MANSONのときを思い出してちとビビる。が、最終的にはギュウギュウ詰めにはなっていなかったな。詰めすぎて事故でもあったらバンドの将来に響くとレコード会社サイドでも考慮したのかもしれない。

私は一段高くなった所の右寄り、椅子に座ってる人の後ろに位置を決めた。ここからだとステージを正面から見られるし、前の人は座っているので視界をさえぎるものがなくて見やすい。

ステージのバックにはまるで田舎の温泉旅館のバーのような、銀モールの暖簾(?)がかかっている。この安っぽさがたまらないなあ(^^;)。開演前に流される「ご注意」も、きょうはレコード会社の担当さんがやっているのか、いつもとはひと味ちがうユニークなもので、いい味を出していた。だって、いきなり「ライブの前に通りいっぺんのご注意をさせていただきます」なんて言うんだから。「あまり激しく暴れるとショウを中止しなければならない事もありますから・・・ 適当に暴れて下さい」とか(^_^)。いつものプロモーター側の決まりきった挨拶に慣れていたので、とても新鮮で大笑いさせてもらった。

さらに「メンバーからのたっての希望により、公演終了後、全員と握手をします」というアナウンスが。びっくり〜。こんなに人がたくさん入っているのに大丈夫なのかしら。「話したりサインをねだったりはしないでください」とは言ってるけど・・・。

さて開演時間。ローディーと思われる外人が叫ぶイントロに押し出されるようにメンバー登場。いきなり激しい勢いでロックンロールで突っ走る。アルバムで聴いていると、けっこうルーズでだるい雰囲気もあるのだが、ライブとなるとさすがに速くなるし勢いがつく。息つく間もないくらい、あとからあとから曲を繰り出す。客のほうも一気に盛り上がり、前のほうは凄い状態になってるみたい。場内の温度がどんどん上がり、私が立っているうしろのほうでさえ、じっと立っていても汗がだらだら流れてくる感じ。空気も薄くなって息苦しい。クーラーもまったく効かず、みんなの体温が上のほうに上がって天井近くのクーラーの熱気に当たり、水蒸気になって落ちてくる。前のほうの子たち、大丈夫かなあ。酸欠なんかになってないのかしら、などとよけいな心配をしてしまう。

が、それだけ暑いというのにステージのドレゲンは、なんとダチョウの羽根みたいなものを首の回りに巻き付け、ぞろぞろした長いジャケットを着たままだ。ベースの子も革ジャンを着たまま。涼しい北欧から来て、ただでさえ日本の蒸し暑さが堪えているだろうに、プロのミュージシャンってえらいなあ。

始まってみて気がついたのだが、アンプやドラムセットには縁取るように豆電球がとりつけられ、それが暗いステージに浮かび上がっている。ただし、とりつけ方がいい加減なので、ふにゃふにゃと曲がってあんまりかっこよくはない。銀モールとあいまって、田舎の宴会場状態をさらに思わせる、これでミラーボールが回ったりしたら、もう最高なんだけど(^^;)。

MCはヴォーカルとドレゲンがとっているが、ほとんど喋らない。喋っても英語の訛りがきついので何を言ってるのかよくわからない。途中ドレゲンが「スオミ(フィンランド語で”湖の国”を意味し、フィンランドのこと)! フィンランド!」と叫んだので、「あれ?こいつらスウェーデン人じゃなかったっけ」なんて思ったんだけど、どうやらHANOI ROCKSのことをヴォーカルが言ったのを補足したらしい。

でも、でも、演奏自体がビュンビュンとばしてるのに、曲と曲の間があくのがちょっと気になったな。まあ、このへんはこれから何万回もギグを経験すればこなれてくるんだろうけど。なんてったってプロモーション・ギグだものね。

それより私が気になったのはドラムのキレの悪さ。こういう勢いでいくバンドにあのドラマーはちょっと・・・バシッと決めて終わりたいときもいつでも後に残る。全体的にも遅れ気味だったし、聴いててとってもキモチ悪かった。

曲はほとんどが「TOTAL 13」からで、あとそれにメジャーデビュー前の曲とカヴァー。1stアルバムからと紹介してやった曲がとてもかっこよかったなあ。曲名が聞き取れなかったのが残念(あとで聞いたのだが"FILL UP THIS BAD MEDICINE"という曲だったらしい)。「新曲」もやってたようだ。

すごかったのはハノイの"TAXI DRIVER"をやったとき。会場の合唱度がはんぱじゃなくてびっくり。今でもハノイって人気あるんだあ!?

さすがの暑さに途中からドレゲンは上着を脱いで上半身裸になる。ものすごく痩せてて貧弱な体で、西洋人とは思えない(^^;)。それでフラフラとステージを動き回り、水だか酒だかわからないものをガンガン飲んでいる。

ベースの子もとうとう革ジャンを脱いだが、下に着ていたTシャツはRAMONES。そうか、だから革ジャンにこだわってたのね。かわい〜い(^_^)。

予想していたことだが、ショウは約1時間で終了。あっという間だった。もっともバンドも客もすでにヘロヘロだったから、これ以上やったら死人が出てたかも。わーっと暴れて、「あ〜キモチよかった!」って帰るのがぴったりのライブだな。

さて、終了後はお約束通りの握手会。例のとぼけたアナウンスを聞きながらしばらく場内で待つ。立っていたブロックごとに順番が決められ、けっこうきっちりした仕切りで混乱もなく下のフロアに。出口のところに長い机を出して、メンバーがその後ろに座っていた。

左からヴォーカル、ドレゲン、ドラマー、ベースの順。ヴォーカルとドレゲンは汗で流れたメイクを直したらしく、きっちりアイライン入ってたのがさすが(^^;)。ドラマーはストレートな長い金髪で上半身裸で、清潔にしたザック・ワイルドみたい。彼はとても性格がよさそうで、立って一人一人に頭を下げながら挨拶をしている。その隣りの小柄なベーシストも立って挨拶。ドレゲンとヴォーカルがいかにもロックンローラーって感じなのに対して、とても対照的で面白い。

なにしろ「どんどん進んでください」と言われてるので、とりあえず一言ずつ「いいライブだったね」「最高」「ありがとう」「また来てね」程度の声をかけながら握手をして出る。が、私の後ろに並んでた友人がなかなか出てこない。どうしちゃったのかと思ってたら、彼女ベーシストに「私もRAMONESが好きなんです」と言って、いきなり抱きつかれたらしい(^_^)。

こんな感じで最初から最後までフレンドリーで若者らしくて勢いのある内容だった。この調子で向こうでもライブを繰り返してくれれば、次に正式来日するころにはきっととてもタイトなバンドになっているに違いない。よけいなことにハマらず、周囲の誉め殺しにも負けず、がんばってほしいな。


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