SHOH's LIVE REPORTS

Altan(Kila) (May 24,1998, Asahi Hall, Tokyo)


年、なにげなく行ったライブでALTANの魅力を知り、今年も行ってきました。

今回は「アルタン祭り」(センスのないネーミング!)と称して、いくつかのバンドと組み合わせて、さまざまな形のライブがチョイスできるようになっていたのですが、私は一番正統的で、いちばんALTANのみをたくさん堪能できそうな最終日を選びました。

しかし、ライブが始まり、最初のグループKILAの演奏が始まったとたんに驚愕の嵐。ばらばらな服装をした若者たちが、それぞれの楽器を下げて、ふらっと出てきて、まずフルート、そして他の楽器が加わる形で曲が始まりました。その音色のなんと心地よいこと!

ひとつひとつの楽器の音が、聴く者の全身をやさしくもみほぐしてくれているように、振動を伝えてくるのです。ベースの音はどちらかというとロックに近いリズムですが、でも、ロックのような体の底に響くような振動ではなくて、胸のまわりをするすると通り抜けていくような、そんな軽快さなのです。最初の曲が始まったとたんに、「うわあ、これはただ者じゃない」と驚き、あとはもう音に体をゆだねていました。

バイオリンもブズーキもバウロンもギターもパーカッションも、ひとつひとつの音がきちんと聞こえ、それなのにそれぞれが巧みにからみあってひとつの曲を作り上げていく。もちろん基底を流れているのはアイルランドのトラッド音楽なのですが、そこにロックやラテン、それにアフリカ音楽など、世界中の素晴らしい音楽のさまざまな要素が織り込まれ、見事な調和を見せています。

フルートの人が、ほとんどアカペラのように朗々たる、でもとても哀しげな声音で歌い上げた曲(アイルランドの古い歌なのでしょうか)を除くと、ほとんどがインストルメンタルだったにも関わらず、そのどれにも、聴く者に語り掛けてくるような何かがありました。

まったく予期していなかったところで、これほど素晴らしい音楽に遭遇してしまったため、そのあと出てきたアコーディオンとギターのデュオ(吟遊詩人のように歌うアコーディオンの渋いおじさんに味があった)や、ゲストにドーナル・ラニーが参加した肝心のALTANまでもが、やや色褪せてしまったのが自分でも信じられません。ALTANの素晴らしさは変わってはいなかったのですが、いつも変わらず素晴らしいものより、今まで出会ったことのない新しいもののほうに惹かれてしまう私という人間のサガですね(^^;)。

かえすがえすもKILAの単独公演を見にいかなかったことが悔やまれます。この次こそは!

アンコールの最後は、全部のグループが一緒にステージに並んでのセッションだったのですが、その中になんとレイ・フィン(ドーナル・ラニー・バンドで2回来日している、マーク・ポートノイ似のドラマー)がいたのにびっくり! 別にドラムを叩くわけでもなく、後ろのほうで手拍子をとっていました。一体、なにしに来ていたのでしょう? 一緒にいた友人たちとは、「ドーナルの秘書とかいう形で無理矢理ついてきたのでは(^^;)」なんて言っていたのですが・・・。

ドーナルは、休憩時間にはロビーに出て、知り合いたちと談笑していました。話し掛ける人には誰にもでも気さくに答え、まったく偉ぶったところがないのが素敵でした。


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