SHOH's LIVE REPORTS

Aerosmith (March 9,1998 at Tokyo Dome,Tokyo)


京ドームだし、アリーナのうしろのほうだし、とあまり期待もせずに行った3月9日。席についてみたら、なんとアリーナ中央にある巨大スクリーンのすぐ前。ブロックのいちばん前だったので、視界をさえぎるものもなく、スクリーンに写る巨大スティーブンやジョーを堪能することができた。生のステージのほうは残念ながら上のほうしか見えなかったので、人の姿はほとんど確認できなかったが、セットやライティングは全体像を見ることができて、これはこれでよかったかも。

でもまあ、こういうふうに納得できたのも、要はライブそのものが素晴らしかったからなんだけどね。音が悪いのは覚悟のうえだから、それほど気にならなかった。むしろ、ドームで聴いた中ではましなほうだったかも。あれだけの大音量でもそれぞれの音(特にスティーブンのヴォーカル)がきちんと聞こえたのだから。

それにしてもお客さん、入ってたなあ。8日は休日だったのでソールドアウトだろうと思っていたが、9日は多少空席も目立つのでは、なんて思ってた。ところがどっこい! 途中、会場が一体になって歌ってるときに全体を見渡したのだが、ドームの天井近くまでぎっしりの客が全員立って手を上げている! あれは感動的な光景だった。ドーム2日間を熱心なファンでいっぱいにできるエアロって何者だ〜って思っちゃった。

始まる前に流れたビデオは、未発表もの? あんなハンバーガー屋さんがほんとにあったら、毎日でも通ってしまうのだが(^^;)。

ステージセットは全体に新譜「NINE LIVES」のイメージをふんだんにあしらって、蛇と猫とインド風の装飾が随所に見られる。バックは蛇(というよりコブラか)の柱に囲まれたインドの宮殿のようなイメージ。ステージ両横には猫のトーテムポール。さらにその端のほうに作られたサイドウォークには銀色の蛇が赤い眼を光らせている。

客電が落ちると、ステージのまわりを囲むように3(4?)枚の幕がさーっと落ちてくる。上部に蛇の模様が装飾的に描かれ、アーチのように見える。この布が内側からライティングされるので、ステージに登場するメンバーのシルエットがよく見える仕掛け。ギターを抱えたジョーが登場すると、ひときわ高い歓声が上がる。スティーブンは、マイクスタンドを持ったまま、ゆっくりと体を揺らしていたが、両足を広げてスクワットのようなポーズをとった。ドーム初日でのこのシーン、彼らのオフィシャルサイトにトム・ハミルトンが書いている日記によると、スティーブンの下半身がジョーイの頭をのみこむような位置に決めていて、トムは「こんなものを家の中で見せていいものか」と危惧したそうだが、観客のリアクションがそんな心配を吹き飛ばしたらしい。それを読んでから見た14日の横浜では、私の席の位置によるのかもしれないが、ジョーの頭がのみこまれているように見えた(^^;)。

スティーブンが床にしゃがみこみ、マイクを口に近づけた。「ウーミャ〜オ〜!」という猫の鳴き声。同時に幕が切って落とされ、"NINE LIVES"がはじけた。いかにもオープニングにふさわしい曲だ。新曲とは思えないくらい、昔からなじみの曲みたいに聞こえる。これは、他の曲にも言えたのだが、ふつうコンサートで新譜からの曲をやると、客のノリもいまいちになるし、バンドの演奏もまだタイトになりきってないしで、どうしても浮いてしまうことが多い。ところがエアロスミスの場合、今までそういう印象をもったことが一度もなかった。新譜を発表してから時間がたっているせいもあるだろうが、その間にシングルカットした曲がどれもこれもヒットして、そこからさらに新しい若いファンを獲得してしまう結果なのだろう。これが、新譜が発表されるごとに繰り返されてきたのだから、ほんとうにすごい!

スティーブンは、青い長上着に青のサングラスを合わせている。上着の下は黒のTシャツにインド風の華やかな刺繍をあしらった黒のベスト(あとで上着を脱いだとき、このベストの襟ぐりのところにブランドタグらしき白いものが見えたのにちょっと驚いた。こういうステージ衣装って誂えるのだとばかり思ってたもので、「へえ、既製品なんだあ」と妙に感動してしまった)。下は派手なプリントのベルボトム。

ジョーは黒の長上着に黒のシャツ、黒のスリームジーンズという、相変わらずクールなスタイル。トムは派手な星柄のシャツ(プロモ用の写真でも着ていたっけ)、ブラッドは緑色系統の長袖プリントシャツ、ジョーイは黒のタンクトップだったと思う。

次の"LOVE IN AN ELEVATOR"では、ステージ後ろから火花が吹き上げた。おお、惜しげもなく派手な演出! スティーブンがステージ横のサイドウォークに走っていくと、女性ファンの黄色い悲鳴が上がる。最後の部分で、ジョーとスティーブンが1本のマイクに顔を寄せて歌うシーンでは、心の中が「キャアキャア」という絶叫でいっぱいに。←実際に口にも出てたかも(^_^;)ゞ

ライティングは、赤、青、黄、緑、ピンク、紫とカラフルな色をふんだんに、しかも同時に使い、それが悪趣味じゃなくて、とても華やかで印象的で、いかにもエアロスミスのショウ!というイメージになっている。あれって、簡単なようでいて、実はものすごくむずかしいんじゃないだろうか。

「だれか俺のコートをもってきてくれないか」と声をかけると、ガタイのいい外国人スタッフらしき女性がピンクの羽根とサングラス、帽子、ハーモニカの一式をもって登場。スティーブンにひとつずつ渡す。女性はただのTシャツとジーンズの普段着だし、なんのてらいも演出もなく、ただ渡すだけというのがなかなかいい。これがゴージャスな金髪女性がピンヒールで登場したりすると、あまりにも作りものめいてるものね。帽子をかぶり、サングラスをかけ、羽根を首に巻いたスティーブンがハーモニカを弾きだし、"PINK"の始まり。ほのぼのしててとてもよかった。

この日の私にとってのハイライトは"DRAW THE LINE"。なにしろ前回の日本公演では、私が行った日には一度もやってくれなかった因縁の曲だけに、今回もめぐりあえなかったらどうしよう・・・と心配していたのだ。だから、あのイントロのリフが聞こえてきたときには涙が出そうになった。おまけにあの演出。ジョン・ボンジョヴィのようにステージに大の字に倒れるジョー。しかし、はっきり言ってジョンより数倍かっこよかった。なんていうのかなあ、ジョンの場合はかわいい小僧って感じなんだけど(特にあれをやるときは)、ジョーはもう崇高なのよねえ。近づきがたいほどの気品。上を向いて横たわっていると、彫りの深い横顔が強調されて、中世の貴公子が決闘かなにかで倒れて死んでいる姿のよう。

このあたりはジョーのコーナーという感じで、続けて彼が歌う曲が2曲。1曲は新譜に入ってる曲だが、はっきり言ってここでの彼の歌はあんまりかっちょよくない。なんか発音にしまりがなくてピリっとしない。2曲目のほうは、前回TOURでもやってたし、得意のブルーズということで、さすがにきまりまくっていた。ジョーはこのコーナーでは、ここぞとばかりに黒のレスポールに持ち代えている。うう、やっぱりかっこいいわあ。スクリーン用のカメラで追われているのを知っていたせいか、ギターソロのあとでピックを口元に持っていき、「ふっ」という感じに息を吹きかけてから、さりげなく(どこがだ)客席に投げるというポーズを決める。やりすぎだよ〜、ジョー。でも、すてき〜(*^_^*)!

ジョーのコーナーでも、スティーブンはステージにとどまって、後ろのほうで体を揺らしたりしている。"STOP MESSIN' AROUND"ではハーモニカで参加。これがもう凄いのなんのって! まさにブルース・ハープと言うにふさわしい魂のこもった演奏。しかも、ただ吹くだけじゃなくて、合間に掛け声までかけるものだから、忙しいったらありゃしない。(さすがのスティーブンにも)口はひとつしかないからね。「そ、そ、そんなに無理をしなくても」と思うのだが、こっちのほうがかっこいいと思うと、やらずにはいられないんだろうなあ、性分的に(^^;)。

新譜からの曲でアルバムで聴いてたときより数倍よかったのが"KISS YOUR PAST GOODBYE"。スティーブンの歌が切々と心に響く。

"DREAM ON"は、もう何も言うことはない。最後のほうのリフレインでだんだんとテンションが上がっていき、あの高音部にさしかかると、会場はシーンとして固唾をのむ。そして見事に高い音を出し切ったとたんの大歓声。お約束と言えばお約束なんだけど、これがとにかく「キモチい〜い!」(^_^)。最後の銅鑼がジャ〜ンと鳴るところで、ステージ中央に立ったスティーブンはマイクスタンドを左手で高く掲げ、そこから垂れたリボンを右の頬に流すようにしながら、虚空を見上げ、ぴたっとポーズをとる。そして、間髪を入れずに"CRYIN'"になだれこむ展開はぞくぞくするほどかっこよかった。

アンコールの拍手にこたえて、着替えたメンバーが出てくる。スティーブンはひらひらっと体から浮いた感じの白いブラウスの裾をウエストで結び、まるで王子様みたい。こんなかっこがまだ似合うのねえ。

ジョーは脱いだシャツをジーンズのウエストから垂らして、上半身裸! ギリシャ彫刻のような上半身はまさに芸術。女性ファンはみんな息をのんで見入っていたんじゃないかな。双眼鏡の登場率も高かったのでは(^^;)。

アンコール1曲めの"WHAT IT TAKES"は、元々大好きな曲だったが、かなりアレンジが加えられ、ブルージーなアカペラっぽいスティーブンの歌で始まる今回のヴァージョンは、もうハマリまくり。彼のヴォーカリストとしての力量をまざまざと見せ付けてくれた。

ジョーがビニールホース(?)をくわえて出てくればもうわかる。"SWEET EMOTION"だ。ステージ後ろに花火のナイアガラみたいな光の滝が流れ落ち、会場が大きく湧く。途中でいきなりLED ZEPPELINの"DAZED AND CONFUSED"が始まったのには驚いた。ジョーって元々、ギターを弾く姿がジミー・ペイジに似てるから、こういうことをするとハマリ過ぎ。スティーブンがギターの音に合わせて高音でハモるところなんて、背筋がぞくぞくした。前にもこんなのやってたっけ? そのあとでジョーがフォークソングのようなメロディを何小節か弾いてみせる。どこかで聴いたころのあるメロディで、すぐにでも口ずさめるほどなのだが、なんの歌だかわからない。(あとで知ったのだが、クリスマスギターインストアルバム「MERRY AXEMAS」で彼が弾いている"BLUE CHRISTMAS"という曲だったらしい)

私はこの日が最初だったので知らなかったのだが、それまでは"SWEET EMOTION"で終わっていたそうだ。が、9日は違ってた。最初、混沌とした楽器の音の重なりがあって、「なにをするんだろう?」と思っていたところに、聞き覚えのあるリフが聞こえてきて、きゃあ、おもちゃ箱だあ! やっぱり最後はこういう曲でないと「終わった!」という気がしないものね。

というわけで、終わったあとぐったり座り込んでしまったけれど、ほんとうに大満足の一夜だった。

SET LIST

1.NINE LIVES
2.LOVE IN AN ELEVATOR
3.FALLING IN LOVE
4.HOLE IN MY SOUL
5.LIVIN' ON THE EDGE
6.TASTE OF INDIA
7.JANIE'S GOT A GUN
8.RAG DOLL
9.PINK
10.LAST CHILD
11.DRAW THE LINE
12.FALLING OFF
13.STOP MESSIN' AROUND
14.KISS YOUR PSAT GOOD-BYE
15.SICK AS A DOG
16.WALK THIS WAY
17.NOBODY'S FAULT
18.DREAM ON
19.CRYIN'
20.DUDE(LOOKS LIKE A LADY)
-ENCORE-
21.WHAT IT TAKES
22.SWEET EMOTION
23.TOYS IN THE ATTIC


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