「Hpgの景気と失業の質問への 安さんの答え」 (歯痒末説 ver45.1)

 S氏からの質問

 我国は、この10年間、本格的な景気回復はないですがどうしてでしょうか、そして雇用

失業状況の特徴について教えてください。よろしくお願いいたします。

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 S 様

 ホームページを見て頂いて 有難うございました。

 ご質問について 安さんは、次のように 考えています。

 お答えするには まず、「景気」の定義と尺度をハッキリさせる必要がありますが、安さ

んはこれを 肚の中では、「IPI(総合生産性指標)=[期間当たりの産出付加価値/期間

当たりの基本投入費]」の 「期間当たりの回転率」だと思っています。「基本投入費=

[設備費+労務費]」ですから 総合生産性を高めて、その付加価値を 設備投資と給与

増大に還元し続けられれば景気は向上し継続する訳です。

 

 しかし 今の日本の統計類には、これを 適確に表す指標類はありませんから、現在 

入手できる統計類から、上記の内容を類推するよりない」 ことになります。具体的には

例えば 産出付加価値はGDP(以前はGNP)であり、設備費は 在来の「取り付けベー

スの資本ストック」を複利計算(例えば資本回収係数)で期間費用化したものとか、労務

費は 「成果配分」分を含まない平均給与水準に直接労働人口を乗じたものを使うなど

いろいろの方法があり、考え方の筋さえ通せば 景気判断の結論が矛盾することはあり

ません。

 

 そこで この10年間に、本格的な景気回復が起こらなかった理由を考えてみると そ

れにはまず 景気対策の公共投資が、列島改造の勢いで増えた 土建業の「食いツナ

ギ」に使われてしまい、前記の「景気循環」を造りだす局面に 投入されなかったことが

あります。しかし考えられるのは それだけではなく、その他の 土建業外の業種の革

新(改善・改良・改革)遅れで、新製品・新製法なども開発されず 国民は金を持ってい

るのに「買いたくなるようなモノ」がトータルで足りなかったこともあります。逆の証拠では

ゲームソフトや携帯電話、あるいはカメラではAPSから始まってデジタルカメラなど あれ

だけ売れているのですから。携帯を買った若い連中が 非生産的なムダ話に電話料が

かさんで、他の物的消費が減ったなどというのはお笑い草で 別の問題でしょう。

 

 もう一つ決定的に重要なことは 景気創出の主役である企業が、金繰りに懲りて 投資

意欲を失ったことと、意欲はあっても 一時の学者やコンサルタントのミスリードで、無借

金経営至上主義に 陥ってしまっていることがあります。これは 最近の歯痒末説にも書

いたように、自己資本だけで経営をしようという考えでは 「他人資本を借りた金利と利益

率の差で 自己資本利益率を濃くすること(レバレッジ)ができない」情況に陥り、「物理的

な生産性以上に 自己資本利益率を増やせない」アナに堕ち込んでしまっていることで、

考え方を直さなければ 好転は期待できないと考えます。

 

 景気を 安さんのような考えでなく、単に代表株価指数で見るとしても 現在の日本の

株式の上がる可能性(つまり 景気の良くなる可能性)は少ないと言えます。いま日米共

に 株式は大きく下落していますが、下落前の情況でも 世界の1日に金融市場で動く

資金総額は200兆円ほどで、その内 実経済分は5兆円ほどであり、残りの195兆円

はヘッジファンド等の投機資金(バクチのお金)です。もし その買い手がヘッジファンドで

無いとしても、アメリカの個人投資家は 成人の50%の6200万人が株式の売買に参

加しているのに対し、日本では個人投資家は 実数で50万人に満たないと言われます。

つまり どちらにしても、日本の景気(株価)を上げたいのなら 日本人の頭でなく「ヘッジ

ファンドや外国の投資家が 何を期待して株を買うか」を考えて企業の戦略(何をするか)

・戦術(どうやるか)を決めなければならないのです。この辺の考え方は 安さんが改めて

言うよりも、インターネットで ホームページ「増田俊男の時事直言」のバックナンバーをご

覧下さい。

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 次の「雇用失業状況の特徴」については 日本の場合、企業側も就業希望側も 「他国

に比べて アマイ」の一言に尽きます。企業側で言えば 少子老齢化は判っているのに、

何にもしない(言葉の矛盾の)リストラと称して頭数減らしでしかない省人化を行い、単価

安の省力化を行わずに 困ったを連発しているだけなのが現状でしょう。省力・省技能化

ができれば 中高年の安い労働力が余ってホームレスになっている実態を見ても何も考

えないのでしょうか。就職希望と称する側も 手に職を付ける訳でもなく 言葉だけはフリ

ーターなどと格好を付けて、その日の飯が食えれば 気楽に遊び呆けているのは「フザ

ケルナ」と言いたくなります。その証拠には 「仕事が無い」のではなくて、「自分から辞

める」あるいは「失業保険が貰える内は 働いてはソンだ」などと言う事例を見聞きする

と (全部が全部でないことは 判っていますが)「まだ大分 余裕があるな」と感じてしま

うのです。

 

 以上 概略ですが、お答えになっているかどうか またメールして頂ければ幸いです。

その節は あなた様が今、どのようなお仕事をされているのか お洩らし頂ければ、また

もう少し突っ込んだお話ができると思います。取り敢えず これでお返事にさせて頂きま

す。不一                                   《末説一覧へもどる》

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