「付け焼き刃で エンデやゲゼルを考える安さん」 (歯痒末説 ver36.1)

 この頃の 世の中のお金の挙動を見ていると、幼い時から見ていたお金の値打ちや効果と

は どうも性質が変わってきているような気がしてなりません。

 フトしたことから あの「モモ」を書いたミヒャエル・エンデが、「(貨幣を含めて)金融システム

は人間が創り出したものだから 変革もできる筈であり、同時に 過去のさまざまな試みの中

に未来へのヒントがある。」と言っているのを知りました。そして併せて レーテ共和国時代の

バイエルンに居た一人の思想家シルビオ・ゲゼルの名を挙げ、彼の思想は 「お金も あらゆ

る自然界の存在と同じように、年をとり 最後には消えて行くべきである」というもので、実践さ

れもしたし 大きな成果を挙げたと言うのです。

 

 ビックリして書店で 「エンデの遺言:河邑厚徳+グループ現代 著,NHK出版刊」を覗いた

ところ、かの経済学者のケインズまでが、「雇用・利子および貨幣の一般理論」の中で 「シル

ビオ・ゲゼルは 不当にも誤解されている。われわれは将来の人々が マルクスの思想よりは

ゲゼルの思想から、一層多くのものを学ぶだろう と考えている。」と述べている文章にブツカッ

て 目を剥きました。

 早速 この本を買って読んだり、インターネットで 「地域貨幣って何?」「コミュニティに根ざし

た経済・覚え書き」等を読み、安さんのことですから 例の基本投入費原理との関連も考え始

めました。しかし何せ 一人で考えていても埒が開かないので、よくメールを交換をする 顔も

知らないメール友に議論をフッカけ、これから われわれなりに、どこまでデキルか判りません

が この問題への「取り組み方」を絞り込んでみようということになりました。

 

 下記は その第2便です。あとの遣り取りは 控えさせて頂きますが、「素人がサラの頭で 

二三の資料をカジッタだけで感じたこと」なので 間違いもありそうですが、新鮮な問題提起と

思考過程の記録の意味で 取り敢えず末説にアップロードして、大方のご意見などを 伺って

みることにしました。既にご研究済みの方や 始めて見聞きしてご感想のある方の、ご意見・

ご感想を お聞かせ頂ければ幸いです。                   《末説一覧へもどる》


○ ○ ○ ○ 様

 暑中お見舞い 申し上げます。

 ……前便のように 正面から言われても、ハタと困る 安さんなのですが、取り敢えず 感想

めいた処から申し上げて見ます。

 人間というものは 幾つになっても、新鮮に驚く ということが あるものですね。とにかく 「お金」

についての 既成概念も壊れましたし、今は 「何処から 考え直せば良いか」の、基盤と手順

を 探っている処です。

 

 安さんが 「考えたい」あるいは「整理したい」と思うのは、人間が常に 全体を意識することか

らの解放です。日常的には 自分の足元だけを見て、自律的に暮らすことが そのまま自然に

全体の最適化に繋がるような、個人や企業の 行動指標は無いモノだろうか?それが 気にな

るのです。勿論 全体での位置付けも随時の確認が必要ですが、普段は 省きたいのです。

 

 そういう視点で エンデ⇒ゲゼルの考えを知って、新しく見えてきたことは まず次のような点

でした。

(1)お金の交換(価値の 評価と保存)機能と 金利問題は、切り離して考え 取り扱うことが

  デキルのだということ。

(2)(同じことの 別の言い方に過ぎないのかも知れませんが)お金の 実業的機能と虚業

  (投機=バクチ)的機能を分けて考える、可能性がある ということ。……この段階で 金

  利問題を分けて考えるのは、安さんがマダ どこかに「金利の機能を認める(許容する⇒

  活用したい)気(未練)があるからだと思います。

(3)手前味噌ながら 「基本投入費原理は お金がどういう性格になっても成り立つ、投入・

  産出の比率 に関わる法則」であり、前提になっている 時価主義を強調すれば、IPIの分子

  ・分母はインフレ・デフレの影響を 自動的に調整デキルこと。

 

 エンデ⇒ゲゼル提案を知って 安さんが、まだ もう一つ割り切れていないのは、その提案す

る「地域通貨,労働通貨 あるいは LETS,交換リング等」が 「補助(併用)手段なのか 独立

(全体への一斉適用が 可能な)手段なのか」という点です。

 

 安さんには 自分なりのモノゴトの確認方法があって、ベルマンの最適性原理まで 持ち出す

気は無いのですが、「最適政策は 初期の決定の結果に拘わらず、以後の諸決定が 最適政

策に矛盾しない(構成要因になる)」 性質を持っている。そうでない政策は 最適政策では無い、

と 考えています。

 

 従って モノゴトを考える時には、つい 成立条件を、現状⇒半無限大 ないし無限大に、部

分⇒全体に 置き換えて考えるクセがあります。このエンデ⇒ゲゼルの提案にも その手を使

おうとしたのですが、不思議なことに 大きなイメージが出てこないのです。これは どうしたこ

となのでしょうか。

 

 理由はどうも エンデ⇒ゲゼルの提案の姿勢が、「金利の増殖が起こす 有限な地球の荒廃

の防止、あるいは 投機マネーの暴力的挙動の排除」という 裏返した言い方になっている点

にある気がします。

 

 事例的には 「実施してみると 経済が活発になり、失業が緩和される外に 個人の人間性

を刺激し可能性を開発して、コミュニティの密度を高め 活性化する」という 肯定的で積極的

な面も出てきています。しかし大勢として どうもそういう面が旗印になりニクイ処に、「エンデ

⇒ゲゼルの提案の 本質と限界」がありそうで、どうにも イヤラシイ気分なのです。

 

 用語的にも 地域だとかコミュニティだとか、あるいは協組だとか労働だとか 唯一「自由」の

名称の外は、「ヒナタに一人で立たせると 萎れるか倒れそうなイメージ」なのです。これはや

はり 「エンデ⇒ゲゼルの提案」に、具体的なポジのイメージよりも 「マイナス要因を否定する」

動機が勝っていることを示しているのではないでしょうか。

 

 まだ 煮詰まっていないのですが、前にメールで申し上げた @競争要因の温存の可能性,

A私有財産の容認による 自律への収斂性の構築法,Bその他 基本投入費原理では、基

本投入費部分と コロガシ資本の「基本投入費の 5(=6−1)倍の部分」を「劣化させる方法」

の使い分け等は、そこへ行くまでにもう一段階、前提の整理が 必要だという気がし始めてい

ます。

 

 これらのモヤモヤをスッキリさせるには どうしても、世の中向き以前に 自分の納得できる

「エンデ⇒ゲゼルの提案」の「前向きの命題」が欲しいのです。例えば 「人間性の 開発貨幣」

「緑の再生産貨幣」「自然との 共存貨幣」と言うような。……この辺は例の 「曼荼羅チェックリ

スト」で言えば、「シンボル・象徴・理念(筋道と姿)」に 当る訳です。

 

 そういう「シンボリックな 貨幣なりシステム」を 設定した上でならば、機能展開に 次の2つ

の機能を並べても、今度は 何とかイメージが展開出来そうです。

   〔新 貨幣機能〕   (a)製品・サービスの 交換機能(劣化,無劣化)

             (b)人間の能力の 開発機能

 人間が欲求は 欠点であると同時に利点であり、それが世代の交番によって 断絶し変質し

フィルターを通して伝承するという複雑な性質があります。優れたシステムは これをカバーし

て、期待する方向・水準に収斂させる 仕組みを持っていますが、それには (根拠は 無いの

ですが)新貨幣機能だけでは不充分な気がします。まず 新旧の併存案から考えるのが妥当

でしょう。

 

 新システムへの 切り替え期間の処理を考えても、新旧の併存期間が必要ですから 併存案

を考えておいても ムダではありません。そうなれば 基本投入費原理が役立ちます。基本投

入費は金利付きで その他の経費は(基本投入費の)2倍までは無金利で調達可能とし、それ

を超え(6−1)倍までは 再び金利付きで調達可能な仕組みを用意します。

 

 (6−1)倍を超えて 運転が資金が必要な場合には、実質的に経営存続の可能性が低くな

りますから 和議にせよ民事再生にせよ更生手続きに入ることが望ましくなります。つまり マ

クロには、経営評価は 基本投入費基準で行い、登録制度を確立して 一方ではIPIによる優

遇税制等の刺激を行い、反面では その基本投入費基準で、無金利の転がし資金を 融資で

きるように取り計らう訳です。

 

 これを国家的に拡大してみると 基本投入費の登録によって、無金利資金の 上限(定額)

を算出でき、(お金を劣化させないシステム ならば)お金に色分けがある訳では無いので 企

業側は「限度まで借りて 速く回転させる」戦術で、金利の掛かる借入れを 節減出来ることに

なります。こういう操作を刺激するためには 無金利の転がし資金の初期貸し出し限度額を、低

めの 85%程度に抑えておき、15%分は IPIの高い企業に褒賞的な融資を行なうこともリク

ツに合うことになります。

 

 こういう態勢が整うと 漸く前記の、@競争要因の温存,A私有財産(金利の付く貯蓄)の容

認,Bコロガシ資本の劣化方法 等を考えることが出来ることになります。

 何か 大きなことを見落としている気もしますが、直列思考で あちらこちらへ連想を飛しせた

ものなので、これは叩き台のつもりで ご意見など伺えれば幸いです。   ではまた 不一。


 数年前に 悪戦苦闘して「レレバンスロスト」を読んだのが、やはり 暑い夏のことでした。あ

れも その後の安さんのものの考え方に大きな影響があり、基本投入費原理の応用展開に 

一つの契機になった内容がありました。

 今回もまた 暑いさなかに、基本投入費原理の 新しい適用局面が開けそうな予感を感じて

います。具体的な拡がりに 手を着ける前に、友人とのメールを交換を通して せめて安さん

自身の思考体系に整合する、前向きのイメージだけでも得られれば と念じています。

                                           《末説一覧へもどる》

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