「本当のリストラは 

  2極対応型の経営態勢造り≠セ と思う安さん」 (歯痒末説 ver12.1)

 いろいろと理想は言っても 世の中は不徹底で不完全なものですから、今後の企業の経営

環境は 国としての経済基盤の情勢によって、大きく左右されることが 考えられます。特に

今の時点での問題は 当面の「好況か 不況か」よりも、遠からず来る 避けられないアメリカ

との経済的拮抗の決着が、どういう形になるか についての対応(身構え方)でしょう。

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 最近よく人減らしを 安易に「リストラ」と言っているのを聞きますが、戦後の一時期に言われ

た「合理化」という言葉に似て 虚しさと同時に腹立たしさを感じます。本来リストラは 企業が

その活動の仕組みを(考え方から)変えることであった筈です。言うならば ひところ流行った

方法としてのリエンジニアリングを、仕組みの側から 言っている訳ですが、今はそれをカッコ

イイつもりで 単に「経済的な人減らし効果」の呼び名にしているのはどういうものでしょうか。

 

 しかし此処ではもう それはどうでも良いのです。それより重要なのは近い内に そんな目先

のツジツマ合わせではどうにもならない情況が起こりそうだということです。要因はいろいろあり

ますが 決定論的に働く次の3点に絞って考えてみましょう。[ 「不況は終わった」 : 長谷川

慶太郎・船井幸雄・牧野昇・増田俊男・西川清 共著 : ビジネス社刊 より ]

 

 @ 世界的に動く 1日当たり資金量の200兆円の内、5兆円が実業(実体としての経済活

  動)で 195兆円が虚業(投機的な経済活動)である。資本主義を貫く以上 この195兆円

  の動きは極端には制約できない。結果として両者の均衡のサセ方が これからの企業経営

  の環境として大きく関ってくる。1999年に入って ユーロが発足したが、早晩これが力を付

  けてくれば 虚業資本も動き出すだろうし、ドルの基軸性が脅かされることも 予想される。

 

 A アメリカと日本の貿易収支は これまでの実績から、それぞれ 一人年当たり同じ金額

  の600ドルを相手国から買っている。マクロに考えると アメリカの人口は2億人であり日本

  の人口は1億人だから、今後毎年 アメリカの600億ドルの貿易赤字が継続する。その上

  既に 現在アメリカには100兆円とも200兆円とも言われる日本のお金が滞留している。

  この 動向次第では、アメリカの経済は動きが取れなくなるから 目が離せない。

 

 B アメリカの経済はレーガノミクス以来 脱工業が進展して第3次産業が主体になり、貿易

  収支の赤字を回復しようにも 技術の蓄積が散逸し、今後もし製造業を復活させようとして

  も 資本の投下だけでは実業の再生が困難になってきている。これに対し 日本は、例え

  ばハイテク製品の重要部品について 営々と蓄積した基本技術を抑えており、原価的にも

  アメリカの労働集約型に対し資本集約型で、安全性の面からは 資本市場から魅力的に

  買われる情況にある。

 

  以上だけ考えてみても アメリカは何か手を打ってくる筈です。自分の国の経済を崩壊させ

ないように (例によって 頭を下げるのがキライなアメリカさんですから)イチャモンを付けたり

陰の工作を企むことでしょう。今までアメリカがヤッテきたことから類推しても 何かの方法で、

「金がアメリカに還流する仕組みの補強」と 「為替相場を動かして 日本への債務を減らす」

ことを考えるに違いありません。

 

 これから先の、大局的な対応は、安さんのような 一コンサルタントの力の及ぶ所ではありま

せんが、少なくとも生産系のコンサルタントとしては 個々の企業に対して「今何をなすべきか」

だけは提案して置く責任があります。理屈や思考経緯ヌキで 結論を言えば、今後に想定され

る アメリカの経済的なユサブリに対し、次の3つ(+3)を軸にして 派生する問題を想定し、

準備して置く必要があることを 指摘して置きたいのです。

 

 (1) これからは 生産系の企業と言えども、株価が上昇し 活況を回復した時機を逃さず、

   ファイナンスを行なって極力 自己資本比率を高める。

 

 (2) アメリカの 日本への経済的なユサブリは、目的がハッキリしているので アメリカへの

   資金の還流と 為替相場に絞って変化に留意し、円高・円安の両極について 「2極対

   応型の経営態勢造り」を行なう。

 

  (a) 具体的には 企業の皮膚感覚を敏感にし、販売と購買の態勢を強化する。情勢に応

    じての 戦術の選択を可能にし、評価尺度と基準を明示して 「目的指示の方法自主」

    で現業実務者への権限の委任・委譲を推進する。

  (b) 円高傾向の時は 当然に輸入メリットに重点を置くが、その範囲を素材に限らず例え

    ば 国内工場の超過労働の低減の範囲で、中間部品にまで拡大する等 柔軟化する。 

    また販売力が低い場合には 技術力をバックに円建て契約を目指す。

  (c) 円安傾向の時に 輸出を集中豪雨的に行なうことを避け、基本的に 「自社の売価は

    コストプラスαでなく 競争相手の売価マイナスβで策定」して、相手にダンピングの口

    実を与えず 量版の手間を掛けずに付加価値を確保するようにする。    

 

 (3) 虚業的な資金のイタズラについては 既に株価自体がソノ傾向にあることを自覚し、株

   式による資産の形成は 避ける。キャッシュフローを重視するために 経営指標にIPI(総

   合生産性指標)を導入し、財務的には特に IPIの系である「基本投入(費)率」によって、

   資本の効率を常時チェックし 細かく部分的な個別の非効率を排除する。

 

 こういう必要性から企業の仕組みを再構築することが 本当のリストラなのです。確かに大

変な時期にさし掛かってきていますが これは日本とアメリカだけの情況ではないのです。ア

ジアの他の国々も また欧州連合の各国々も、相当に本気で 国を挙げて革新に取り組んで

いるのが見えてきています。途中でも触れた 欧州連合のユーロの問題なども、安さんは 今

後の日本の経済戦略に、有利に使える条件になると 考えています。

 

 しかしそれも 日本の政治家や実業家が、理性的に モノゴトの本質と連関を直観して、必

要な施策を 迅速に実施に移せるか否かに掛かっています。現在は 日が暮れて道遠しの思

いが強いのですが、言うだけのことは言って置かないと アキラメが付かないので、ここに 安

さんなりの整理をしてみました。せめて 国としての大局的な方針ぐらいは早い時期に確立し

て、各企業を自律的に 自身の問題に専念させたいものです。    《末説一覧へもどる》

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